日本のスポーツ界と戦略広報の未来
最終回ということで、最後にこのテーマについても触れておきたい。先頃、さまざまな競技団体関係者と話をする機会があったのだが、戦略広報の重要性については認識が広まっているという実感を得た。
4年に1度しか競技やアスリートに大きな注目が集まらないスポーツが多い中で、Visibility(人の目に触れる露出量)を高め、注目選手を増やし、ファンを増加、スポンサー利益を持続的に拡大していく。そんなポジティブスパイラルの構築のほか、イシュー管理・危機管理の専門家を抱えて、スポーツのReputation(レピュテーション/評判・信用)を守る。そういったことに戦略広報が役立つという認識が少なからず浸透しているようだ。
一方、国内競技団体の多くの台所事情は戦略広報専任のスタッフを抱えられるほど余裕がない。多くの業務を兼務しながら広報やメディア対応にあたっているケースがほとんどだ。スポーツに情熱を持っているPRパーソンの関与度がもっと高まる時代になって、スポーツ界の発展に戦略広報が一層貢献していければ良いと思っている。
前職の国際トライアスロン連合(ITU)は、コミュニケーションに非常に力を入れている国際競技団体(IF)であり、常勤職員20人弱のうち、6人ものスタッフが広報部門(Media, Television and Communications)で働いている。スポーツとアスリートのVisibilityの向上に努め、大会ハイライト映像は著作権フリーでレース後数時間のうちに世界中の放送局に提供、AP通信とも提携してレース写真の配信も行う。かつては、選手説明会でサングラスを外して笑顔でゴールすることも奨励していた。最も報道される瞬間をどのように世界に伝えるか、その視点での選手へのディレクションである。
トライアスロンというスポーツがIF設立(1989年)後、1994年にオリンピック正式競技に採用され、2000年シドニー大会でデビューするまで、その間わずか11年。戦略広報の視点がこの競技の発展に貢献してきた部分は決して小さくないと思う。
2020年オリンピック・パラリンピック大会の開催に向け、スポーツ界の仕事も増えていくだろう。この仕事に従事する身としても、スポーツ界における戦略広報の重要性を広く認識してもらうことに、さらに寄与していきたいと思っている。
【「2020東京五輪 戦略広報が明かす勝利の方程式」バックナンバー】
- (3)スポーツ界に戦略広報は必要か?
- (2)マドリッド、イスタンブールとの国際コミュニケーションバトル
- (1)オールジャパン!!
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