コラム

朝日新聞10年生記者、ビジネスに挑む

新聞記者、企業の広報担当に取材される

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「おい、抜かれたぞ」が怖い

記者にとっての「恐怖の時間帯」ってご存じですか。

深夜の午前2時から午前3時です。ライバルの新聞社(たとえば日経新聞)が、数時間後に配る朝刊に書いてある記事の情報が入ってくるのです。朝日新聞が知らないニュース(「A社とB社が合併へ」)が1面などに載っていると、上司から電話でたたき起こされます。

「おい、抜かれたぞ」。

情報が本当かどうかを調べる「追っかけ」取材に入ります。重要なニュースであればあるほど、朝日新聞としても早く記事にしないといけないからです。眠さと、悔しさと、締め切りに記事が間に合うかどうかの不安が交錯します。

ジップロックに入れた携帯電話やメモ帳を久しぶりに再現した。宮崎県に赴任していた新人記者の頃、携帯が鳴り続けるのが嫌で、ほかの新聞社の記者と、「ケイタイを大淀川に投げよう!」と酔った勢いで叫んだことがある。

恐怖の時間帯以外も、夕方や夜のテレビニュースで自社の知らない情報が流れると、本社からすぐ携帯がかかってきます。

私は記者時代、風呂に入るときは、ジップロックに携帯電話とメモ帳を入れて、湯船につかっていました。

記者の仕事はこうした「ライバル」との熾烈な戦いなのですが、「あれ?」と思った読者もいらっしゃるのではないでしょうか――ライバルは新聞やテレビだけなの?

その通りです。競争相手といえば日経新聞や読売新聞、NHKなど既存の大手メディアばかり意識していました。

しかしながら、当たり前のことですが、読者が接するニュースは新聞紙やテレビ画面を通してだけではなく、まとめサイト、LINE、フェイスブック、グノシーなど多岐にわたっています。

もちろん「窓口」は違っても、元となった記事は旧来の大手メディアが書いた物もあるのですが、「どこの記者/会社が書いた」ことより、「どんな風に読めるか」(スマホでさくさく読めるのか等)が少しずつ大事になってきています――スマートニュースやLINEニュースは、生活の流れにスッと入り込んでくるので、私も、いつも思わず読んでしまいます。

弁護士ドットコム。牛丼にマヨネーズをかけたらどうなるのかという記事など面白くて法律の勉強になるコンテンツが載る。

会計士や科学者など専門家が書いたブログやツイッターも「ニュース」として流通します。無料のウェブ上の法律相談サービス「弁護士ドットコム」。

6千人以上の弁護士が登録しています。このサイトでは全国の様々な専門分野を持つ弁護士と一緒にニュース記事を作り、ネットで配信しています。

ある日のサイトに載っていた、見出しはこんな具合です。

 《始業時刻前の「朝礼」は残業?》
 《スマホのオプション加入強制は違法?》
 《「一票の格差」判決 どう見る?》

――日常にある疑問から全国ニュースまでを題材に、「法律」という切り口で1カ月100本、記事にしているのです。いくら記者が法律を勉強しても、弁護士にはかないません。それとも、「プロと素人の中間」の存在である記者にこそ、価値があるのでしょうか。

もちろん、新聞記者も多くの専門家に話を聞き、確認取材をしまくるという点では、様々なプロのご協力を得ながら記事を書きます。

しかし弁護士ドットコムは、弁護士が条文を深く掘り下げて解説したり、あるテーマに関して弁護士数十人に対する即席アンケートをおこなったりするなど、より専門家が前面に出るコンテンツになっています。

次ページ 「企業がメディア化する」に続く

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