コラム

朝日新聞10年生記者、ビジネスに挑む

「ネットは荒れるでしょ?」と言われても、外の声を聞きたかった

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【前回のコラム「赤い髪の女子から教わった、「発信しながら次の稼ぎを考えるのが新聞社」」

変わりたいけど方法が分からなかった

メディアラボは、新規事業のアイデアを募集するコンテストを開始した。

朝日新聞メディアラボは、「世界を変えてしまいましょう」というメッセージが書かれたポスターを会社のあちこちにベタベタと貼りました。社員みんなから、新規事業のアイデアを募集したのです。期間は2カ月間。予想の2倍近くの180件のアイデアが舞い込みました。

仕事が終わったあと、β版のサイトを作って新サービスのアイデアを練ったり、ひそかにベンチャー企業と接触したりする社員もいたそうです。1次審査で10件のアイデアを残しました。

2月中に最終選考をして、その後、事業化します。応募したある男性社員は、1次審査で落ちたものの、私にこう伝えてきました。

「新規事業のアイデアが採用されなくても、途中でつぶされず、受け止めてくれる部署があるだけで、今後の仕事のモチベーションが違う」

朝日新聞社には社員が4600人います。新聞の部数が減り、ネットニュースに押され、広告収入が下がっている現状に対して、指をくわえて見ているわけではありません。

難しいんです。私もそうでしたが、記者なら新規ビジネスを考えるより明日の朝刊を埋めるために1行でも多く書かないといけないし、時間を削って取材現場を走り回っています。風呂に入っていて面白いアイデアが浮かんでいても、電話で呼び出されて記者会見に出ている間に、「私の仕事は書くこと」と、心の中でつぶしてしまう。

給料をもらう本業の仕事に、思考の中心を置く必要があるし、変わりたいと思っているけど、変わる方法と変わるための「場」がわからなかった。

上司を納得させるアイデアは「普通」になる

昨年9月にメディアラボが本格スタートして以来、たくさんのベンチャー企業の社長と酒を酌み交わしてきました。楽しく飲んでいることが多かったのですが、シメのラーメンを食べているときや帰り道の電車の中で、こんな言葉をかけられることがありました。

「大企業は、片手間で新規事業をやっているイメージがあるので、付き合いにくい」
「どうせ、下請け扱いするんでしょ?」
「技術を盗もうとしていると、疑ってしまう…」。

メディアラボはだからこそ、オフィスを新しく構え、20~30代中心のメンバーを集めたのです。既存部署の単なる一部の「新規事業チーム」が、空いた時間に動くのではなく、部署全体で新しいビジネスをやっていこうと若さと気合い、十分です。

ベンチャー企業のスピード感に比べたら遅いこともあると思います。しかしそれは「サボっている」とか「やる気がない」とか「偉そうにしている」のではなく、大きな組織を動かすための「手続き」と「スタイル」が違うだけで、心意気はそのまま。スピードは速くしていきます。

Blabo!などが考案した人型のゴミ箱。人間がゴミ箱を「かぶる」とゴミをきちんと捨てたくなる。

ベンチャー的な実験を「外だし」するのも手だと思っています。たとえばアイデア募集サイト「Blabo!」。企業の企画会議をネット上で開放しているサービスです。

ロッテはここと組んでガムのポイ捨てをなくす方法の意見を募りました。道ばたに捨てられるガムのネガティブなイメージを払拭したいという思いがあったからです。包み紙に地球のイラストを描けば、ガムを包んで丸めたときに小さな地球儀のような形になり、道ばたに捨てる気分をなくさせるという案や、ユニークな人型のゴミ箱をつくって、嚙んだあとのガムを捨てることを楽しくする案などがでました。

その様子は動画でまとめられています。

Blabo!の坂田直樹社長は「大企業の中にも常識にとらわれないアイデアを持っている社員がいて、新しいことにチャレンジしようとしている」と言います。でも、それを上司や役員に説明しようとすると、無理やり数字をこしらえ、もっともらしいストーリーを作らざるを得ないのが現状かもしれません。

「みんなが分かる」にはどんどんアイデアを「普通」にしないといけないですし、ヒラ社員は、誰に言えば何がどう決まるかも、分からない。

Blabo!は、どういう提案が消費者の支持を集められるのかを直接、聞くことができるので、大企業の社員も「消費者や生活者が『良い』と言っているアイデアだ」という根拠を持って、企画を社内で通せるようになる。朝日新聞メディアラボもBlabo!を活用したいです。

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