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コラム

朝日新聞10年生記者、ビジネスに挑む

新聞記者、企業の広報担当に取材される

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企業がメディア化する

ツイッターやフェイスブックで、個人が文章を世界に発信できるようになったうねりもすさまじいです。

堀江貴文さんが、クラウドファンディングを使って個人がどこでもネットの生放送ができる機器「バルクライブ」を開発中ですが、一人一人の市民が「放送局」になる時代も、すぐそこに来ていると感じています。

スクー。ベンチャー企業の集まりに行くと、ここのオンライン授業に、既に「先生」として登壇した人とよくお会いする。

来年1月23日、朝日新聞メディアラボのメンバー計3人で、「スクー」という会社のオンラインの無料授業に挑戦します。メディアラボでは動画ビジネスへの参入を研究中なのですが、スクーのウェブページに飛んで、「職員室」をのぞくといつもワクワクします――コンビニアイス評論家や起業家、おもちゃメーカーの社員などスクーに登壇した「先生」たちの顔写真。大御所の先生が出てきてありがたい講義をしているというより、「先輩」や「同僚」のような社会人が個人として次々と画面の前に立ち、視聴者といっしょに考えながら、ウェブの技術や起業の手法などを発信している一つの「メディア」になっています。

個人に限らず、「企業のメディア化」も進みます。

11月下旬、こんなことがありました。私が、経済部からメディアラボに異動したことを、グループウェア大手のサイボウズの広報担当者、椋田亜砂美さんにフェイスブックを通してお伝えしたときのことです。

「メディアラボ、面白そうですね。いつか取材にいきます」と椋田さん。これまでは「取材させてください」とお願いする立場だったので、少し新鮮だったと同時に、企業が「編集部」を持つ時代なんだ、と思いました(本当に今さら気付いて恥ずかしい限りですが・・・)。

サイボウズ式。同編集部は、「奇跡の商品を生んだ このチーム力がすごい!」という本を生み出すなど、多媒体で発信を続ける。

特にサイボウズは、「サイボウズ式」という、職場でのチームの働き方やITに関する情報を載せる雑誌のようなサイトを運営するなど積極的に発信しています。このサイトを読み進めるうちに同社を知って「お客さん」になった人もいるそうです。

すぐにサイボウズを「逆取材」して、同社の「編集部」の責任者である大槻幸夫さんに話を聞きにいきました――今年夏から、同社が編集・企画にかかわる記事を東洋経済オンラインで連載しています。自社の商品を単純にPRしても、読んでくれる読者は少ないので、糸井重里さんの対談や「グーグル式チーム仕事術」など、同社の事業と密接に関係のあるテーマ「働き方」をキーワードに、従来の「記事広告」とは違ったコンテンツ作りを心がけている、とおっしゃっていました。

小林弘人「新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に」(バジリコ)はすでに2009年に次のような指摘をしています。

ネット上においては、八百屋さんもSE(システムエンジニア)屋さんも誰でもメディア企業になり得る、もしくはメディア化してしまうということです。

自動車メーカーの広報部が新車発表会でカメラを回したり、飲料メーカーがフェイスブックで、朝の情報番組のように「(自社製品の)ウィスキーの楽しみ方」などを消費者に提案したりすることも簡単になりました。企業が発信する「経済記事」「生活情報記事」が増えているようなイメージです。

もちろん昔から企業がホームページを持つことはありましたが、発信する場が増えてそのコストが下がり、語り口が巧妙かつ多様になって、より読ませるコンテンツが増えてきたのではないでしょうか。

これは、新聞社やテレビのような「従来のマスメディア」の影響力が相対的に落ちることを意味し、実際、そうなっていると思います。だからこそ私は、新聞社にしかできない報道とは何か。

広告やメディア以外の企業の「編集部」とは違うジャーナリズムをどう発展させられるか、ということを考え続けたいと思います。