コラム

コピーライター養成講座 講師・卒業生が語る ある若手広告人の日常

「コピーライター」を未来に残したい!(2)

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木村吉貴(鎌倉 木村文章店代表。コピーライター/宣伝会議コピーライター養成講座総合コース(現 基礎コース)2004年修了生)

【前回のコラム「「コピーライター」を未来に残したい!(1)」はこちら】

このコラムのタイトルは「ある若手広告人の日常」ということなので、今回は、あるボンクラ広告人(僕)の日常からお伝えさせていただければと思います。

朝6時:原稿納品。就寝。

朝8時:起床。始業。コピー制作。

9時:とあるお寺に取材交渉の電話。「コピーライターねえ。なんだかねえ」といぶかしがられた挙げ句、取材を断られる。

10時:クライアントAから電話で呼び出し。他の予定(企画書づくり)をすっ飛ばして、急遽打合せへ。事務所兼自宅のある鎌倉から都内に移動。

12時:空腹。でも、打合せ続行。

14時:打合せ終了。今日初めての食事へ。と思いきや、クライアントBからコピー修正依頼。急ぎとのこと。適当なカフェなどが見当たらないため、その辺の公園のベンチでパソコンを広げ、コピー修正。空腹のためかストレスからか、胃痛を覚える。

15時:午前中にすっ飛ばした企画書づくり。この企画書を今夜までにほしいとクライアントCからメールが来る。締切は明日のはずでしたが…。引き続き、公園のベンチで企画書づくり。空腹は消え、大いなる胃痛と疲労を感じ始める。

16時半:鎌倉へ電車移動。車中、クライアントBからコピー再修正の依頼がメールで入る。正直、意味不明な再修正内容。この修正で、より良いコピーになるとは思えない旨、返信。抵抗。
すると、即座に先方からの電話が鳴り、途中下車して対応。先方「ウチの部長の希望なので、直してください」 僕「でも、この修正だと、消費者には届かなくなりますよ」 先方「部長が言っているから、とりあえず直して」

17時半:駅のベンチでしぶしぶコピー修正。クライアントBに送り、グッタリと電車に乗って鎌倉へ。

19時:帰宅。夕食中の妻子に混じり、僕も今日初の食事。妻の手料理はとても美味しく、幼き我が子らはかわいく、癒される。

20時:子どもたちと入浴。歯を磨き、子どもたちにおやすみを告げて、仕事場へ。メールチェック。クライアントDから本日18時にメールあり。「明日午前11時から取材に入ってほしい」とのこと。明日!? 急すぎるっ!! と嘆きつつ、明日の午前に打合せを予定していたクライアントEにリスケ相談の電話を掛ける。
その矢先、クライアントDから新着メール。曰く、「お返事をいただけなかったので、明日の取材は別の方にお願いしました」とのこと。間違いなくストレスによる、胃痛。心が折れそうになる。

仕事をしながら寝落ちし、朝を迎えることもしばしばです。(妻撮影)

…でもな。
僕みたいな名も無きコピーライターに仕事を依頼してくれるクライアントがいるんだ。彼らの要望に応じて、コピーを書く。僕は、コピーライターだから。それが、コピーライターだと思うから。

6時:歯を食いしばって原稿納品。寝ます。

…と、概ねこんな日々を僕は送っています。

クライアントに「頼りにされている」という感覚もあります。けど、どちらかというと、「振り回されている」場合が多いかもしれません。僕の都合や予定など知ったこっちゃない、という対応をされることもしばしば。理解不能な修正依頼もあります。

「良い広告をつくる」ためではなく、「自社の上司・経営陣の顔色を窺う」ための指示だろうと思わざるを得ないこともあります。結果、僕が書いたコピーは跡形も無くなり、「クライアントが書いたコピー」が世に出回ることもあります。しかも、そのコピーの評判が思わしくなかったりすると、僕のせいにされたりも…。

これらすべて、僕の実力不足が原因であることはわかっているんです。けど、クライアントに理不尽に振り回される度、思ってしまいます、「彼らにとって、コピーライターの存在って何なのだろう」と。

そして、「コピーライター・木村吉貴なんて、どうでも良い存在なのでは」と…。

そんな日々を送る中、僕のコピーに救われたと言ってくれる人がいたんです。プライベートの知人ですが、その人が落ち込んでいるとき、慰めと励ましのつもりで送った「言葉」を、僕がコピーライターであると知っているその人は「コピー」と呼びました。

僕のコピーが、一般の人のためになることもあるのか。

いや、よくよく考えてみると、コピーとはクライアントのためのものである以前に、消費者=一般人のためのものではないのか。

僕の事務所の屋号「木村文章店」は、街のお店を利用するような感覚で、気軽にコピーのご依頼・ご相談をいただけたら、との思いで名付けたものでした。それなら、街のお店と同じように、一般の人たちにもコピーを楽しんでもらえるお店にできないだろうか。

一般の人たちにコピーのチカラやおもしろさを伝えていくことで、コピーライターのことをもっと世の中に知ってもらえるのではないか。そして、コピーライターの存在価値を高めていくことにつながるのではないか。

そう考えた僕は、自宅の一室を利用して、一般向けの「木村文章店」を開店したのでした。それは、コピーライターを世の中に必要な存在として未来まで残していきたいと願う、僕なりの第一歩になりました。

次回は、この “「コピーライター」を未来に残すために ” いま僕なりに行っている様々な活動をご紹介させていただければと思います。

木村さん
木村吉貴(きむらよしたか)
鎌倉 木村文章店代表。コピーライター。
1977年生まれ。宣伝会議コピーライター養成講座総合コース(現 基礎コース)2004年修了。デザイン事務所等でコピーライターとしての実務経験を積んだ後、2011年、神奈川県鎌倉市にて「木村文章店」を設立。

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