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安藤美冬さんに聞きに行く「展開型のキャリアで道を切り拓く人の仕事術」(前編)

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弱さを見せる、等身大の「個」を見せることが価値につながる

廣田:今いる環境から踏み出したり、新しいチャレンジに手を挙げてみることはすごく大事だと思います。最近は、簡単には答えがないような悩みを持ったクライアントも多くなっています。成熟社会に突入したのだからそれは当然ですよね。既存の方法論だけでは立ち行かなくなってきている。

今の状況をレストランの注文に例えると、クライアントがエージェンシーに仕事を頼もうと思った時、エージェンシーが提示するソリューションのメニューには、表示されているメニューと書かれていない「裏メニュー」があるわけです。

これまでは、メニューに書いてあるものを頼んでいただければひと通りの仕事は回っていたんですね。「広告枠と、クリエーティブに関しては、これこれがあって、今、オススメの品はこちらです。お安くしておきますよ」とメニューを差し出せばクライアントも満足してくれていた。しかし、ビジネス環境が複雑化して、規定のメニューの中では収まりきらない課題がたくさん出てきた、という感じです。

昔であれば、お品書きにあるメニューしか注文されなかったわけですけど、今は書いていない部分にこそ、何か重要な課題解決のヒントがある。だから、今までのメニューはメニューで大事にしながらも、新しいメニューを作ろうと思って、そこへ勇気をもって踏み出していくことが大事なんじゃないかと思います。

踏み出してみたら、意外と良いものや新しいことができたりします。その最初に踏み出す勇気を持つのはすごく大変で、不安だと思います。自信がない状態のときにも頑張れたのはどうしてですか。

安藤:最初は仕事がないことを人になかなか言えなくて、かっこつけたりしていました。そのうち、開き直って、悩んでいることや仕事がなくて困っているということを、少しずつ周りに言いはじめました。そうやって弱さを見せることができたときに、強さをアピールするだけではなくなって、すごく楽になりました。そのときそのときに、嘘をつかず、素の自分を出して人間臭くやったら「これでいいんだ」という気持ちになれました。

廣田:ソーシャルメディアは人柄が出るので、かっこつけようとしてもそれ自体が伝わる、振る舞い自体が見えるようになっていると感じます。企業からの発信も、昔は何をどう出すかという「情報」が大事でした。今は企業もひとりの人として振る舞い、人間っぽさというか等身大であることが大事になってきていて、そういう企業の方がファンも増えるということもあります。

安藤さんも著書に「事業、安藤美冬」と書かれていて、人柄自体がブランドになるんだなと感じました。僕は組織で働いていますが、マーケターも一人一人個性が問われてくるようになってきたと思います。「ノマド」と言うと、会社を辞めるかどうかという二元論になりがちですが、実はノマドって、手段でしかなくて、組織に属していても、フリーで働くにしても、最終的には「個」としてどういう価値が出せるか、「個」がつながってどう価値につなげられるかが大事だなと思います。

安藤:私は「プロフェッショナルな素人になる」と言う視点を大事にしています。日々、いろいろな業界の方と話をすると、専門性に感心するとともに、話が難し過ぎると感じることも多くあります。今、大学生に授業をしていく中で、自分が当たり前と思って話している内容が学生にまったく通じないことがあるので、相手の想像が追いつかないものをいかにうまく伝えるか、ということの難しさも同時に感じています。世の中を見ても「素人の目線」でいることで役に立てることもたくさんあります。

※本対談記事のダイジェスト版を「ウェブ電通報」でも掲載。


(株)スプリー代表 安藤美冬
1980年生まれ、東京育ち。慶應義塾大学卒業後、集英社を経て現職。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、肩書や専門領域にとらわれずに多種多様な仕事を手がける独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者。『自分をつくる学校』学長、講談社『ミスiD(アイドル)2014』選考委員、雑誌『DRESS』の「女の内閣」働き方担当相などを務めるほか、商品企画、コラム執筆、イベント出演など幅広く活動中。4月より多摩大学経営情報学部専任講師に就任。著書に7万部突破の『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のほか、共著に『シェアをデザインする』(学芸出版社)、『僕たちはこうして仕事を面白くする』(NHK出版)がある。
公式サイトはこちら

【「電通 廣田さんの対談」連載バックナンバー】
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