【前回の記事「プロダクトマネージャー制度の功罪」はこちら】
2013年3月の「アドエイジ」誌に下記のような記事が載った。
Package-Goods Marketers Build Private Trading Desks to Hoars Data.
Kellogg,Unilever and Kimberly-Clark Wary of Handing Valuable Data Over to Agencies.
「コンシューマパッケージグッズの大手企業が、データの囲い込みのためにプライベート・トレーディングデスクを設置しはじめた。エージェンシーを中抜きに。」とある。
ケロッグ、ユニリーバ、キンバリー・クラークなどがこうした動きを始めたことが大きく報道された。
プライベート・トレーディングデスクとは、いわゆる入札運用型広告のバイイングオペレーションを企業内で行い、代理店を通さず直接DSP事業者から買い付けるための機能である。メディアの買い付けまで自社内組織で行う例は、極めて進んだ企業であるが、多くの企業がインハウスにマーケティング組織を持つ傾向は顕著だ。
下記はANA(米国広告主協会)の調査で、インハウスエージェンシーを設置しているかを訊いたものだ。2008年から2013年までの5年間で、設置済みの企業は16%増えている。
出所:Association of National Advertisers
社内にエージェンシー機能をつくる
ここで言う「インハウスエージェンシー」とは、どのようなものか。
「インハウス」つまり事業主企業の内部にあるエージェンシー機能ということだが、「インハウスマーケティングラボ」と呼ぶ場合もある。ラボというと研究、R&Dだけかと思うが、実際はマーケティング活動の企画と実施を行う部隊である。社内に組織する場合もあるし、PL(損益計算書)を分離して(つまり別会社として)機能させる場合もある。
日本で言うとアスクルのような業態の企業であるステープルズには、ステープルズ・ラボがあり、ウォルマートには®ウォルマートラボ、ノードストロームもノードストローム・イノベーションラボを持つ。また父親も知らなかった娘の妊娠をデータから予測し、妊婦向け商品のクーポンを送ったことで日本でも有名になった小売りのTARGETも、ターゲット・シリコンバレーラボを持つ。
P&Gやユニリーバのようなグローバルで最先端のマーケティング活動を行い、自社内にトレーディングデスクまで持つ企業でなくても、インハウスラボをつくり、インハウスでエージェンシー機能を果たしている。
また、メガエージェンシーが傘下のエージェンシーの総力を結集して、クライアントのインハウスエージェンシーを組織化する試みも進んでいる。
フォードには、「チームデトロイト」というWPPがJWT、O&M、Y&R、ワンダーマン、マインドシェアから人材を結集してつくったチームがある。同じようにNissanには、TBWA、OMD、Interbrand、emanate、博報堂から集まったUNITEDがある。こうした有力なエージェンシーからベストな機能を集めた体制とつくることを「ベストインクラスエージェンシー」または「ビスポーク・エージェンシー」と呼ぶ。この形式は多くの自動車メーカーが採用している。
「宣伝部の変革と復権-次世代マーケティング部への機能再編-」バックナンバー
- 「送り手」のタイミングから「受け手」のタイミングへ——マーケティングコストのシフト(2015/3/16)
- 3rdパーティデータとしてのTV視聴データが流通する—業界人間ベム「2015年広告業界7つの予測」から(2015/3/02)
- SIer主導の本格的プライベートDMPと「シナリオ設計」人材開発が始まる——業界人間ベム「2015年広告業界7つの予測」から(2015/2/16)
- オンラインビデオマーケティングの本格化と日本版MCNの登場--—業界人間ベム「2015年広告業界7つの予測」から(2015/2/02)
- データプロバイダーによるエージェンシー設立・買収が始まる——業界人間ベム「2015年広告業界7つの予測」から(2015/1/19)
- データ分析から「シナリオ設計」をするということ——“アナログ広告人材”が活躍できる可能性(2014/12/22)
- 宣伝部員が「企業マーケター」になるために~まずは自社の広告活動の「評価」(ROI分析)は自社でやろう~(2014/6/20)
- データドリブンマーケティングを実践する宣伝部になろう—全員にプッシュするマーケティングダッシュボードのデーター(2014/6/06)
新着CM
-
販売促進
鎮痛剤EVEが「お守り」ピールオフ広告 はがすと応援メッセージがずらり
-
販売促進
ルミネ、タイパ重視のグルメ施設 通勤客や訪日客をターゲット
-
販売促進
60代で初めて飛び込んだ販売の世界 Bshop 二子玉川・中村さんの接客観
-
マーケティング
アダストリア、雑貨事業を買収 「TODAY’S SPECIAL」と「...
-
AD
販売促進
レッドブル、日本限定商品をクイズに 解けた人20%未満の難問企画
-
クリエイティブ
替え歌・名曲が席巻 2023年度のCM好感度ランキング上位の共通点
-
人事・人物
【人事】電通(2024年5月1日付)
-
クリエイティブ
「これも広告?」21世紀初頭の広告を紹介する企画展、27日から開催
-
AD
特集
OOHと生活者の交差点を考える