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いまの時代のコミュニケーションに必要なのは「複眼思考」。——原田朋さん

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——「俺、すごい」と「話しましょうよ?」という関係をつくるのも、どちらもカンヌで発信されているクリエイティブの本質だということですよね。

そうだと思います。ただ、その違いが、マスメディアだけだった時代とは少し変わってきていて、よりリレーションが大事になっているということは、みんななんとなく感じているし、実際そうだと思います。

マスメディアの広告しかなかった時は、いろんなブランドがマスメディアを通して「俺、すごい!」と言っている、そのメッセージを受け取るだけでした。

もう少し、僕らの方からブランドにエンゲージするというか、色んなアクションを取れるし、参加することもできるし、ソーシャルメディアでブランドについて発信することもできる。

一方通行の時代から、双方向、つまりリレーションの時代になった。そういう意味で、20世紀と比べて、PRはより全部の仕事、全部のブランドが前提とする考え方になったのかもしれません。

——2014年のカンヌからみる今後の潮流について、どのように考えられますか。

すごいキャンペーンが部門を総取りする現象は続いているので、そういう潮流は引き続きあると言えるでしょう。

少し前まで、もう少し部門ごとで別れていた気がするんですけどね。きっとそれは、カンヌのお陰もあって、いろんなことを世界の人が勉強していった結果、「本当の王様はどの国でも王様」みたいなことになっているのでしょうね。そういう仕事に何か名前をつけたいですね。「マルチカテゴリーウイナー」とか。

結局、Dumbs Ways to Dieも、フィルムコンテンツとしてすごいけれど、やっぱり歌ってしまうところで広がっていく凄さがある。そして、その歌の中にメッセージがちゃんと入っているから、事故が減少したという結果まであるんだと思います。

——PR視点でのマルチカテゴリーウィナーは?

さきほどとも重複しますが、僕はChipotleのキャンペーンが素晴らしいと思っています。企業のブランディングの仕事でありながら、常に議論を喚起している。

PRの仕事には、いわゆるソーシャル・グッドと呼ばれるものが多いですけれど、あのキャンペーンは、ソーシャル・グッドか企業の仕事かというわけではなくて、企業のブランディングでありながら、いつもソーシャル・グッドに「食」に対する提言をしているわけです。だからとてもすごいと思います。

——考えさせられますね。

まさにそこがPRの力で、考えさせられた結果、コンバセーションを生み出す。日本はちょっと難しいのかなと思うのは、人前で「俺たちの食生活ってどう思う?」と真面目に議論するのが恥かしいような土壌であるということです。

日本のPRにも人が何かの議題について議論をしたり、話合ったりするようなことが生れてくるといいなと思っています。

今、日本のPRはバズがこれだけ広がりましたというようなことがなんとなくPRの力だと思われています。けれど、社会の認識が変わったり、皆の新しい議論が生れたりするPRキャンペーンが生れてくるといいかなと思っています。

——カンヌに来て体感した人たちが日々の仕事に落とし込みをしていくということで、おそらく日本のPRが変わっていくのでしょうね。

まさにそうですね。僕も帰ってからいろんなところで話をすると思いますが、PRはニュースがたくさん出たということではない。結果的に人がそれを議論するようになったり、社会の認識が変わったりする、そこまで行ってPRなのだと。

そういう仕事を日本でみんながやっていけば、結果的にカンヌで賞が取れるようになるのではないかと思います。

——よい仕事の結果、カンヌで賞を獲れるようにならないと意味もないですね。

ケースビデオのテクニックでは、本当は何にも意味がないんです。こういうインパクトを社会に与えたということで、皆が注目するわけです。たとえば、ヤフーさんの『さわれる検索』が銀を取りましたが、あれは単に露出が出ただけではなくて、「文部科学省が取り組みを評価して視覚障害者の学校への導入を検討した」というプロセスがすごいリザルトだと審査員が評価したのです。

そういう量としてのリザルトだけでなく、質としてのリザルトを生み出すような仕事が、これからどんどんできるといいなと思います。

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原田朋
TBWA\HAKUHODO クリエイティブディレクター
1972年生まれ。博報堂入社後コピーライターとして配属され、2010年からTBWA\HAKUHODOクリエイティブディレクター。主な仕事に、講談社スティーブ・ジョブズ自伝「みんなのしおり.jp」、日産自動車ジューク「世界一退屈なバナー広告」、日産自動車ノート「海上発表会」、キリンビバレッジ「出た!生茶パンダ先生」など。カンヌサイバー部門ブロンズ、TIAAシルバーなど受賞多数。2012年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリスト。
2013年4月からロサンゼルスのTBWA\CHIAT\DAYに赴任し、2014年5月に帰国。同年6月には、カンヌライオンズ「PR LIONS」審査員を務める。

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