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[特別レポート]米国選挙の広告費は約1兆円!——選挙の年は広告屋が忙しい!(津山恵子)

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今年11月4日に中間選挙が予定されている米国。選挙の際にテレビ、ラジオの電波媒体を使った宣伝活動が許されている米国では、選挙の年は広告業界も盛り上がる。そんな米国現地の様子をNY在住のジャーナリスト、津山恵子氏がレポートする。

選挙の年になると、広告会社が忙しくなる…というのは日本ではあまり聞かれない。私が過去に日本で取材した選挙では、投開票日が決まると、選挙事務所が一斉に3点セットを揃える。拡声器、選挙カー、カバン(=現金)だ。そこには広告会社など、姿かたちもない。

大統領選への立候補が噂されるヒラリー・クリントン陣営の資金集めのためのサイト。この写真を使用したポスターをサイトで販売し、資金源の一つとしている。

米国は今年11月、中間選挙を実施する。4年ごとに行われる大統領選挙の中間の年に、連邦議員、州知事から地方自治体の司法長官までが大幅に入れ替わる、日本で言えば総選挙だ。米国は選挙の際、ラジオ・テレビといった電波を使って、候補者や政党を自由に宣伝できる数少ない国だ。このため、選挙の年は広告売上高が増加する。一方、日本や欧州では、規制が非常に強い。「金権政治」、つまり資金力がある候補だけが、広告を使った影響力を使って、当選につなげるというリスクを避けるためだ。

しかし、米国ではそんな懸念はどこ吹く風。オバマ大統領が2008年、2012年に勝利した選挙では、ともに選挙資金の額で過去最大を更新。支出先で大きな部分を占めるのが広告で、テレビコマーシャルは、高画質のドラマ仕立てで、投票日まで何度も差し替えられた。「バラク・オバマです。私はこのメッセージが本物であることを確認します」という決まり文句で始まるCMは、公約を知らせるためのものだ。

一方、「ネガティブ広告」と呼ばれるものは、対立候補の失策や失言を取り上げ、無党派層を取り込み、対立候補の支持者を引きはがすために使われる。広告会社は、ネガティブ広告のために、リサーチチームを作り、対立候補の過去や選挙戦中の行動を徹底的に調査する。

このほか、ウェブサイトやソーシャルメディアを使っていなかった候補者であれば、デザインや立ち上げに広告会社がかかわる。どうやったら公約が分かりやすく伝わるか、好感をもたれる写真をソーシャルメディアで定期的に発信できるか、広告会社のノウハウの蓄積がものを言う。

当然、広告会社だけでなく、派生するビジネスも恩恵をこうむる。例えば、「スタジオ・センター」社は、選挙候補者のコマーシャルのためにスタジオや技術者を提供。全米5都市6カ所に展開し、テレビでもラジオでも、24時間オープンで対応している。選挙は、連邦議員や地方議員だけではなく、シェリフ(保安官)から地方自治体の司法長官など、選挙で選ばれる役職はみな熾烈な選挙戦を繰り広げる。スタジオは、情勢によっていつでもコマーシャルを差し替えられるようにスタンバイしているわけだ。

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