前回のコラム「スマホとソーシャルが、すべてのメディアを映像に導く」はこちら
連載「ビデオコミュニケーションの21世紀」。ここではテレビもネット動画も含めて、映像全般の話をしていきます。中でも、テレビが今後どうなるのかは、多くの人が気になるし、経済への影響も大きいでしょう。今回はテレビを中心に書き進めます。
テレビについて話していると、時々話がかみ合わなくなることがあります。テレビという言葉に、私たちは乱暴にたくさんの意味を負わせてしまっているからです。テレビ局がつくるテレビ番組を、テレビ放送システムを通してテレビ受像機で視聴する。これらすべてをいっしょくたに「テレビ」と呼んでしまっています。それは、番組と伝送路と受像機がこれまで一体となっていたので気にならなかったせいでしょう。
でも、例えばスマートフォンで昨日見逃したドラマを視聴するとき、それはテレビなのでしょうか。テレビではないデバイスで、テレビ放送を介さずに、見ているのはテレビ番組。「スマホでテレビを見る」という、不思議な状態です。テレビで見ていなくてもテレビって言うのかよ、とツッコミたくなる。
でもこの「スマホでテレビを見る」行為は、これから当たり前になっていきそうです。AdverTimesの読者ならご存知と思いますが、日本テレビが1月から見逃し無料配信サービスをはじめました。10月にはTBSも同様のサービスを開始し、フジテレビも2015年1月からスタートすることを発表しています。
日本テレビ「いつでもどこでもキャンペーン」
TBSオンデマンド「見逃し無料キャンペーン」
産経ニュース「フジテレビ、見逃し無料配信へ 来年1月開始」
これらは大まかに言うと、放送後一週間は無料で視聴できる、というものです。そうすれば有料のVODサービスと両立できるし、気に入ってくれれば放送で見てくれるかもしれないなど、さまざまな効用があります。
ところで、この「スマホでテレビを見る」行為は上記のような公式の見逃し無料サービスができる前から、ごく普通に行われてきました。これについては、最近発表された電通総研の調査結果が面白かったですね。
これによると、通勤・通学時に動画を見る時、8〜9割は動画共有サービス、つまりYouTubeやニコ動、DailyMotionで見ている。でも見ているコンテンツの半分くらいがテレビ番組なのです。ネットでも結局、テレビ番組が多く見られているわけです。みんな勝手に「スマホでテレビを」見ている。
だったらテレビ局がちゃんとした環境を整え、権利もクリアにした上で見せた方がいい。見る側にとっても、粗い映像を怪しい状態で見るより、きれいな映像を安心して見る方がいいでしょう。
そしてテレビ局にとっても海賊的に視聴されるくらいなら、自分たちのサイトで見てもらった方がいい。下の図を見てください。これは電通が毎年発表する日本の広告費のデータを、テレビ広告費と新聞広告費、インターネット広告費だけ抜きだしてグラフにしたものです。
2000年代前半まではテレビと新聞広告がセットだった。2対1のパートナーでした。でもいまや、テレビとネットが2対1。新聞のみなさんには申し訳ないですが、いま広告を打つ場合、テレビとネットでどうしよう、と考えた方がいい。また、テレビ広告費はもはや伸びそうにないですが、ネット広告費はどう見てもまだまだ伸びる。だったらネット広告費の領域にテレビ局が参入したっていいわけです。だってテレビはテレビだけで見られるのではなく、スマホで、つまりネットで見るのもありなんですから。テレビをスマホで見るときに広告収入が生まれるなら、ネット広告費だけどテレビ局がそれを得たっていいわけですね。テレビ受像機で見るからテレビだったはずが、ネットで見ても、スマホで見ても、テレビ局が収入にする。そんなややこしい時代がいま始まっています。
テレビの見方はそんな複雑なことになっているのに、視聴率ってのはどうなの?そんなデリケートな話題にも踏み込みたくなります。11月に開催されたInterBEEというテレビ業界のイベントで、USニールセン社のシニア・バイス・プレジデント、エリック・ソロモン氏が講演をしました。この時、彼が見せてくれたスライドに私は衝撃を受けました。
「ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜」バックナンバー
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