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大臣経験もある政治家から本音を引き出したファシリテーションとは

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【前回記事】「コピーライターを感動させた4年2組「俳句の授業」から考えるファシリテーターの役割」はこちら

新しいアイデアを考えるための企画会議や情報共有の会議など、広告クリエイティブやマーケティングに関する仕事に会議は付きもの。その会議の質が、その後のアウトプットの質を左右するといっても過言ではありません。そこで、こうした会議をコーディネートするファシリテーターの役割と進行のポイントについて、宣伝会議「ファシリテーション力養成講座(3月13日開講)」の開講を記念して、講師である博報堂 コンサルティング局 ファシリテーター 岡田庄生氏に聞いた。

画像提供 Shutterstock

博報堂 コンサルティング局 ファシリテーター 岡田庄生

これまでにいくつもの研修や講演会の講師をしてきましたが、なかでも忘れられない仕事が一つあります。それは、数年前に行った「国会議員へのファシリテーション研修」です。

対象となるのは、大臣経験者も含めた4名の政治家たち。テレビで良く見る著名な方々に対して恐れ多くもファシリテーションを教えることになった私は当時まだ20代で、正直言って、かなりビビっておりました。

そもそも、なぜ百戦錬磨の国会議員に対して、いち広告会社の社員がファシリテーション研修をすることになったのか。理由はいろいろとあるのですが、簡単に言うと「もっと国民の声を引き出す政治家を育てたい」という理由からでした。

政治家たちは、一方的に話すのは大得意だが、例えば地元での市民集会などで、もっと一人ひとりの本音を引き出せるような力を身に付けたい。そこで、民間企業でよくファシリテーションをしている人を呼んで、ちょっと話を聞いてみようかということになったのです。

ちなみに、忙しい議員を4人も長時間拘束できるはずもありません。私に与えられた時間はたったの1時間。この限られた時間のなかで何にポイントを絞って伝えるべきか…。そもそも、変なことを言って会社をクビにならないだろうか…。いろいろな思いが頭をよぎるなか、こんな研修を組み立てました。

まず、私がファシリテーターとなり、議員たちや秘書などの関係者が参加者となる形で、実際にミニ市民集会を模擬開催してみることにしました。

テーマは、「日本のあいさつ活性化を考える」。
私から簡単に、テーマを説明します。「最近日本では、若い人を中心にあいさつをする人が少なくなった、と言われています。そこで、『日本のあいさつは、どうあるべきか』について、話してください」。
すると、瞬く間にさまざまな発言が飛び交います。

「最近の若者はあいさつしない」
「いやいや、最近の中高年もあいさつしない」
「あいさつをしないことが、犯罪増加にもつながっている」
「もっと学校教育であいさつの重要さを体験すべきだ」
「学校も大事だが、家庭での教育の方がもっと大事なのでは」

このように意見はたくさん出てくるのですが、あまりにも広がりすぎてしまいます。仮にこの場が市民集会だったとしたら、これらすべての意見を引き受けて、「分かりました、犯罪防止から家庭教育まで、私がなんとかしましょう!」と言いきるのはなかなか難しそうです。

このような「べき論」を聞いてみても、どれも評論家的な話しばかり。市民一人ひとりの本音を引き出しているとは言えません。そもそも人はそんな簡単に本音なんて話しません。そこで私は、あらかじめ準備していた別の質問を投げかけることにしました。

「そもそも、あなたは普段、どんな時にあいさつしますか?」
「実はこんなとき、ついついあいさつしちゃうよね、という、あいさつの意外なシーンは?」
「あなたがされて嬉しいあいさつはなんですか?」
「実は、あまりあいさつされたくないなぁと思うのはどんなときですか?」

このように問いかけると、こんな意見が出てきました。

「山登りの時は、必ずあいさつするよね」
「私は、小さい子を見ると、思わずあいさつしちゃうわ」
「ケンカした次の日に夫があいさつしてくれたのが嬉しかった」
「逆に、外ですっぴんで歩いている時はあいさつされたくないよね」
「男子トイレで隣に並んだ時には、ちょっとあいさつしにくいな」

このように、質問の内容を具体的に「あなたが何をしているか」に変えることで、テーマが自分ごと化され、独自の体験談として意見がたくさん出てきました。

次ページ 「さらに、これらのエピソードをもとに」へ続く


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