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コラム

新しい売上を作る「売り方のイノベーション」~買物客の購買行動を、売り場で操作する~

米国成功事例① スーパーで売れた「スターバックスコーヒー」とは?カテゴリーも活性化させた売り方のイノベーション

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万事の基礎はショッパーにあり。

では、ショッパー・ベース・デザインの視点からこのエンド・定番什器がなぜ有効なのかを紐解いていきましょう。

既存の調査結果をもう一度読み解き、ショッパーへのインタビューを行ったところ、コーヒーのショッパーたちからは以下のようなディマンド・インサイトを聞くことができました。

「スターバックスは座り心地のいい椅子とWiFiと素敵な音楽が流れていて、他よりも雰囲気がいい。でもスーパーの通路は、素っ気なくて、招き入れてくれるような温かみや豊かな感じがしない。しょせんいつものスーパーでの買い物なので、そこでコーヒーを買うことは特別な体験でも何でもない」。
カフェでの体験やコーヒーを飲むという行為自体について尋ねると、「特別でご褒美的な感じである」「贅沢な気持ちになる」「楽しみにしている」と答えるのに、コーヒーをスーパーで買うことは、「わくわくするような魅力的な感情は伴わない。とにかくやり遂げなければならないただの雑用の1つで、いつも飲んでいる商品をカゴに入れたら次の(他の)棚に行く」と、予想通りのコモディティ化した購買行動の現状が明らかになりました。
そもそもアメリカにおけるコーヒーは、銘柄を問うよりも、家庭や職場に当たり前に置いてある存在なので、コーヒーをスーパーで買うという行動はごみ袋やカミソリの替刃を買うのと同様に、機械的なものでした。

では、このようなショッパーにどうしたら店頭で「心揺さぶる購買衝動」を感じてもらうことができるのでしょう?マーケターの多くは、コンシューマーのディマンドやインサイトに応じたブランドのメッセージングをPOPやプロモーションで行い、それにショッパーが興味を持ってくれることを黙って待っているというのがほとんどではないでしょうか。一方、ショッパー・ベース・デザインでは、ショッパーのディマンドとインサイトさらに掘り下げて、小売店の経営戦略を視野に入れ、純増利益を生む要因と結びつけて考えていきます。

コーヒーカテゴリーの例で言えば、調査では「コーヒーは買い物の主要な目的要素には成り得ない」「コーヒーは他の食料品と一緒に買い物リストに入れられる類の商品群で、価格競争が激しく、購買行動がコモディティ化しているカテゴリーである」という悲しい状況が明らかになりました。
この結果に対して「コーヒーカテゴリーにはスターバックスがリーダーシップを取る余地がまだある」と視点を切り替え、ショッパーが持っている欲求不満をスターバックスのブランド戦略で解決できないか探っていきました。

そして、調査結果をショッパー・ベース・デザインの視点で読み解いたところ、コーヒーは嗜好性が高いので、うまく感情と結びつけることができれば、温かい飲み物売り場においてショッパーの注意をひきつけ、買い物の目的になりうるかもしれないカテゴリー、となったのです。それに伴い、ショッパーに期待する反応とそれを引き起こす要因の仮説をいくつか立てていきました。

次ページ 「スーパーの売り場にも店舗のような温かさを」へ続く