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時代に合わせた企業・商品の変革(1)サイボウズ――世界中のチームワーク向上に貢献する会社

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第2号(2015年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

<巻頭レポート>
顧客価値から考える企業・商品イノベーション
――自社の資産を生かして、新顧客・市場を開拓する!

テクノロジーの進化によって、それまで生活や経済の中心にあった商品・サービスが、ふと気づけば時代の流れから取り残され、産業自体が衰退してしまう…。企業は常に、そんな危機にさらされています。特にデジタル化が急速に進む現在は、私たちの生活は日々劇的に変わっており、そこで必要とされる商品・サービスも大きく移り変わっていきます。

例えば、コンパクトデジタルカメラの市場がスマートフォンに侵食されてしまったように、競合他社の動きだけを見ていると、時代の変化の中で、その市場自体が衰退してしまうリスクもあるのが、消費者変化の激しい今の時代の課題です。

自社の資産を活かしながらも、時代に合わせた業態変革を実現するには、どうしたらいいのか。その方法論を考えていきます。

世界中のチームワーク向上に貢献する会社

1年半で9社買収 売上が30億から120億へ

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1997年、愛媛県・松山市にあるマンションの一室で始まったサイボウズ。グループウェアの開発・販売・運用を手がけ、現在では同社の利用者は570万人を超え、国内グループウェア市場ではトップシェアを誇る。

しかし、同社では自社を単なるグループウェアメーカーと位置付けず、「世界中のチームワーク向上に貢献する会社」と謳う。

このスローガンは現在、代表取締役社長を務める青野慶久氏が掲げたもの。青野氏は3人の創業メンバーの一人で、2005年に現職に就いた。社長に就任した直後に青野氏が行ったこと、それは1年半で9社にも及ぶ企業の買収だった。

サイボウズは愛媛県・松山市の2DKのマンションの一室から始まった。

サイボウズは愛媛県・松山市の2DKのマンションの一室から始まった。

「社長に就任した当時、すでにグループウェア市場は成熟化していました。他の領域に事業を拡大しければ、という思いからハードウェア会社からコンサルティング会社まで、様々な企業を買収。30億円だった売り上げが2年後には120億円に達していました」。

しかし、この戦略は順調には進まなかった。買収した中に業績不振に陥る企業があり、全体として赤字にはならなかったものの、業績の下方修正を余儀なくされた。

「とても辛い経験で、社長を辞める決意をしました。でも辞めさせてもらえず・・・(笑)、そこで考えたのが、これからも社長を続けるなら、とにかく“真剣”にやろう。真剣にやるとは命を懸けることだ。でも、自分が好きなものでなければ、命までは懸けられない。自分が命を懸けられるくらい、好きなことってなんだろう?と考えた結果、『グループウェアであれば命を懸けられるくらい好きだ』という結論に行きついたんです」。

新しいビジョンを発信するも社員が相次ぎ退職

2014年末にアップした、ワークスタイルムービー「大丈夫」。西田尚美さん演じる、働くママの日常には賛否両論あった。しかし、自社のビジョンを様々な形で発信し続けることが大事と同社では考えている。

2014年末にアップした、ワークスタイルムービー「大丈夫」。西田尚美さん演じる、働くママの日常には賛否両論あった。しかし、自社のビジョンを様々な形で発信し続けることが大事と同社では考えている。

創業してから約10年、グループウェアを導入したことで、チームワークが高まり、社風が大きく変わったお客様を何社も見てきた。グループウェアを提供することで、チームワークに貢献し、それによってお客様に喜んでもらえること。それこそが、青野氏が命を懸けてもいいくらい好きなことだという気付きがあった。

「考えに考えた末、自分は売上や利益といった数字には命を懸けられないと思いました。サイボウズは業態の変革をしているわけではありません。ただ自分たちが指針とする価値観やビジョンを明確にしたことから、会社が変わり始めました」。

「世界で一番使われるグループウェアメーカーになる」「チームあるところにサイボウズあり、サイボウズあるところにチームワークあり」…。社内掲示板を使い、2007年から青野氏はこのビジョンの発信を始める。

しかし「それまでは怒涛の勢いで買収をしていたと思ったら、『今度は何を言い出すんだ!』と社員も最初は皆、ポカンとしていましたね」。「チームワークを高める」なんて発信をされても、競合メーカーと機能の〇×表で戦っているような営業の最前線では、何の支援にもならない・・・。社員からのそんな批判もあった。

しかも買収した9社中、8社を売却し、売上も一時の120億円から40億円にまで落ちた。それでも「会社だけでなく、世界はチームにあふれている。長い目で見たら、きっと大きな付加価値になるという期待感を持っていました」と青野氏は話す。

M&A路線に魅力を感じ、グループウェア事業以外のビジネスを経験できると期待した社員は、方向性が合わず、退職も相次いだ。それでも、青野氏は「会社の価値観は売上や利益だけではない。もっと多様な価値観があってもいいはず」と考えていた。

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