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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

福里真一×木村健太郎×小西利行「商品と人生の間と書いて、広告と読む」

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「コアアイデア」と「面白いCM企画」の位置関係とは?

木村:以前、福里さんはブランドの真ん中に広告を置いて時代・社会・空気とどう接着するか、というお話をされていましたが、毎回、時代の捉え方がシャープ、というかナチュラルですよね。

小西:商品とかサービスをあっち側に、こっち側に「人生」と書いて“間を考える”ということは、僕も商品と世の中という三角形をよく書くので同じだなと。同時に、その間の答えの見つけ方がクリアで澱みないことが、世の中に伝わっていると思いますね。人生や世の中と商品の間を探していくことって、本当にちゃんと世の中に届くものを作り、ヒットさせる“唯一の答え”じゃないかと思っていたんですが、前回のトークでそれを確信しました。

福里:うまく「人生」と商品が「関係ある」ものとして描ければ、地味なCMが意外と評判良かったりして、「そんなに肩に力を入れて考えなくてもCMっていいのかも」とは思いましたね。そのきっかけはジョージアの「明日があるさ」です。「明日があるさ」の替え歌をバックに吉本の豪華メンバーがごく普通の人生を生きている、というものをオンエアしてすごく反応があったから、「あ、CMってこれでもいいんだ」と。

木村:福里さんは、一貫して時代のトピックを見つけてくるじゃないですか。時には揶揄したり、共感したり…。それはどうやって切り取ってくるんですか? すごいブレーンがいるとか?

福里:いないですね。むしろかなりひとりぼっちな状態です(笑)。しいて言うと、家を出るときに朝日新聞を持って出て、企画に疲れると読みますね。逆にお2人にお聞きしてみたいんですが、前回「コアアイデアから作る」という話が出ていて、そこが博報堂系と電通系の一番の違いということでしたが、CMプランナーの方はそのときはどういう風にされているんですか? 同じくコアアイデアづくりに参加するんでしょうか。

小西:タイプによりますね。CMプランナーの人がCD的なこともやる場合はコアアイデアもつくろうとします。プランニングをメインにやっているときは、企画をこうやったらもっと面白く、さらに話題になるのではないか、というところから入っていきますね。

福里:電通系から見て一番不思議なのは、具体的なCMの企画が面白くならないと、そのコアアイデアでいいかどうかというのが分からないと思うんです。でも、まずコアアイデアから決めるんですか?これがいいかどうか分からない、みたいにはなりませんか?

木村:同時並行ですね。常に“企画”と“具体”というのがあって、こういうアイデアだったら人が動くのではないかと。キービジュアルもあれば、コンテやコピーだったりもするのですが、いけそうだなと思ったら、ここで「突破しようぜ」となります。具体化して検証するということの繰り返しですよね。それは一緒だと思います。

小西:コアアイデアとして決めたものを本当に実践するまでに不安は何度も訪れるので、
企画化されたときに違うなと戻ることはもちろんあります。

福里:僕は頭が良くないと博報堂では生きていけないのではないかと思っていて。それで辛い思いをしている人がいるんじゃないかって、思ってしまうんです。たぶん電通だと、わけ分かんないけど面白い、ということも許されると思うんですよ。それなら賢くなくてもできる。で、そこにあとから賢い人が理屈をつけていく。まあ、電通をやめてる私が、電通を代表してる感じでしゃべってるのはおかしいんですが(笑)。

木村:博報堂も以前は東ビルと神田に分かれていて、東ビルには安藤輝彦さんや小沢正光さんといったコンセプト型の人たちがいて、かたや神田には宮崎晋さんなど面白いものから発想していく人たちがいました。その両極があって、その中で自分の生きる道を探すことができましたよね。

福里:その話と通じるか分かりませんが、僕の中の博報堂さんのイメージって、すごく斬新な新しいものをつくるか、ものすごく真っ当なものをつくるかで二極化するイメージがあって。でも、「そんなに斬新じゃなくてもそこそこ面白い」という領域が実はあると思っています。僕なんかは、極端に面白いCMが少しだけあるより、24時間それなりに面白いものがずっと流れていた方が、CMそのものにとってもいいんじゃないかと思うわけです。だから今日博報堂の皆さんに言いたいことがあるとしたら、「中間もあるんじゃない」ということなんです。斬新な企画を出しているのに通らなくて、じゃあもう面白くなくていいや、とやさぐれている若き才能にあふれた博報堂のクリエイターがもしいたら、そう言いたいです。「中間を捨てるな!」と(笑)。まあ、私がどちらかというと“中間系”なので、正当化するために言っているところもあるのですが。

小西:テレビって、ドラマも面白いし、NHKのドキュメンタリーも面白いし、つまり色々なタイプがあっていい。だから、斬新じゃなくてもいいですけど、○○系に強い、みたいな各クリエイターの個性が出てくると、もっと面白くなると思いますね。今日のトークを終えて、企画は無理しちゃいけないなと改めて思いました。商品と人生の間に答えはあるから、本当に「商品」や「人生」と書いて考えてみると楽ですよ。よければ実践してみてください。

木村:さっきの福里さんの話、つくづくそうだなと思うんですが、クリエイティブには色々な軸があってしかるべきですよね。4つのマス媒体だった時代から、今や100個くらい処方箋がある時代です。どれが“正しい”“正しくない”というのはないから、自分のやり方を見つけて、自分がついていける先輩が見つけてほしい、と若い人たちには言いたいですね。

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福里 真一
ワンスカイ CMプランナー/コピーライター

木村 健太郎
博報堂ケトル エグゼクティブクリエーティブディレクター/アカウントプランナー

小西 利行
POOL クリエーティブ・ディレクター/コピーライター