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コラム

AdverTimes DAYS 2015

カスタマージャーニーにおけるコンタクトポイントの効果を最大化させるには? 資生堂×セゾン自動車火災保険

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複数のブランドが複雑に組織を形成していた老舗化粧品メーカー「資生堂」。ダイレクト自動車保険最後発の「おとなの自動車保険」。業種も顧客ターゲットも違う両社ではあるが、それぞれの「顧客との接点」における効果を最大化させ、ロイヤル顧客へと導くための取り組みを伺った。

<パネラー>

  • セゾン自動車火災保険 マーケット企画部部長 袴田 法明 氏
  • 資生堂 日本事業本部 デジタル事業部 企画室長 徳丸 健太郎 氏

<モデレーター>

  • 宣伝会議 マーケティング研究室主任研究員 上条 慎

——デジタルツールの発達により、「できること」は増えてもどこから手を付けていいか分からないという声もよく聞きます。最初に、顧客との接点での取り組みについて聞かせてください。

資生堂 日本事業本部 デジタル事業部 企画室長 徳丸 健太郎 氏

徳丸:資生堂の化粧品ビジネスは、基本的にクローズドな運営でした。販売は契約店舗での店頭販売、お客さまとの関係性づくりも契約店舗が行うようになっていました。企業サイトでは、ブランドを基点に展開していましたが、詳細な顧客情報が充実しておらず、分析指標はPV・UUなど「量の把握」にとどまっており、「誰が」「どのようなプロセスで」「何を購入したか」といった、ユーザーを基点とした運用がされていませんでした。

そこで2012年にWEBサイト「ワタシプラス」を立ち上げました。これは、WEBとリアルの両方から、お客さまとの絆を深めることを目標とした、マーケティングプラットフォームという位置づけです。それまでの資生堂の企業サイトにe-コマース機能と、店舗に誘導するO2O機能を追加するとともに、別々になっていたWebとリアル店舗の会員データベースを統合しました。

これによって、リアルとWEBの両方における顧客の動線が分かるようになりました。店舗とWEB、両方でお客さまの声を直接聞き、それぞれの動きをデータで可視化することができるようになってきています。

セゾン自動車火災保険 マーケット企画部部長 袴田 法明 氏

袴田:セゾン自動車火災は、香川照之さんのCMでおなじみの「おとなの自動車保険」をダイレクト通販で販売しています。自動車保険のマーケットは、93%が代理店による販売で、残りの7%が我々のようなダイレクト販売です。当然、ダイレクトのほうが代理店への手数料がありませんから、保険料が割安です。

それゆえ代理店系保険からの移行を検討される方は、「こんなに安くて事故対応は大丈夫か」と疑問を抱きやすい。また、年齢や運転頻度など個人の属性により疑問を持ちやすい点を解決するための訴求ポイントを現在、追究しています。

——本日のテーマである「カスタマージャーニーの最適化」という点では、顧客をどのように分析されていますか?

袴田:我々は「保険ジャーニー」と呼んでいますが、顧客一人ひとりに合わせたOne to Oneマーケティングを追求しています。自動車は、通勤・通学の手段として毎日運転する人もいれば、月に数度しか運転しない人、家族で共有している人など、その乗り方も走行距離・頻度もさまざまです。

そのため、保険ジャーニーを描くうえで三つの点を意識しています。一つ目は、データに基づく「定量的な数字の把握」です。例えば、当社の保険に加入する人は、どの年代なのか。走行距離はどれぐらいか、免許を取って何年目かなど、契約された方のデータを可視化します。

二つ目が、「定性的な事実の把握」です。定量的なデータの裏付けとなる声を集めます。これは集めるタイミングにもポイントがあり、契約を頂いた直後の画面に、簡単なテキストリンクでアンケートを用意しています。なぜ当社を選んでくださったのか、サイトで使いづらい箇所はなかったかなど、記憶が鮮明なうちに回答を頂いています。

三つ目は、「行動観察」です。例えば保険料をシミュレートするとき、入力に手間取っている箇所はないか、通説で「保険の移行は満期日の60日前から考え出す」と言われていますが、実際はどうなのかなど、実際にお客さまの行動を観察します。

この三つを元に、特に2点目の定性的な事実で得られるお客さまの不安・不満がシミュレーションサイトで解消できるように、一人ひとりの状況にマッチしたレコメンド情報をサイト上で出したり、フォローメールを送ったりするようにしています。

今後の課題としては、契約更新時における他社への移行リスクをいかに低くするか、という点のさらなる追求でしょうか。

次ページ 「「ロイヤル顧客」にするために」へ続く