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〈広く告げる〉をやめた「広告」の新しい形とは?(後編)——東浩紀×須田和博(博報堂)×廣田周作(電通)

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東浩紀氏がプロデュースする東京・五反田の「ゲンロンカフェ」にて、2015年5月29日、広告をテーマにしたトークイベント「〈広く告げる〉をやめた「広告」の新しい形 #2 ──変わるテクノロジーと変わらない人間の間で」が開催された。昨年10月に続いての登壇となる東浩紀氏と電通の廣田周作氏に加え、今回のゲスト、博報堂の須田和博氏による4時間におよんだトークの一部をレポートする。

【前回の記事】「〈広く告げる〉をやめた「広告」の新しい形とは?(前編)——東浩紀×須田和博(博報堂)×廣田周作(電通)」はこちら

廣田:最近は広告も結果を出せという風潮がすごく強くなっていて、KPIがかなり厳しく求められています。そうなると、確実に人が動くものばかりをつくらざるを得ないという側面もあります。目先の結果ばかりが優先され、中長期的な視点がなくなっています。

哲学者・作家 東浩紀 氏

東:僕は、このゲンロンカフェをもう2年やっているんですね。その経験から、どういうイベントや登壇者だとどのくらい人が入るかというのがわかります。そこで思うのは、一定のコンテクストが共有されている空間をつくると、そこでポルノみたいな、わかりやすい身体性で動かすようなことをやれば、かえってみんな引いてしまうんです。一方で、グローバルマーケットのようなコンテクストの共有概念がない空間であれば、ポルノが勝ちます。つまり、市場の性質はスケールに規定されていて、スケール次第で勝つものが決まると思うんですね。だから、これは僕の持論ですが、出版市場なんかも、100万部売れるものと1万部が売れるものとのスケールで、マーケットを分断するべきだと思うんです。これまでは、マーケットの切り分けをあまり考えなくても、何となくそうした調和があった。でも今は、それがなくなっているからこそ、意図的にスケールを規定するというのが、すごく大事だと思うんです。

廣田:スケールを先に決めてしまうということですか。

東:逆に言えば、スケールを決めることによって共有されるコンテクストが決められる。先に共有できるコンテクストを決めるのではなく、まずはスケールを決めるのが大事だと思うんです。スケールを決めれば、あとから100人とか、1000人単位で共有されるコンテクストが決まってくる。スケールを規定しないと、表現がある種のポルノみたいになっていくのは仕方ないと思うんです。これはあくまで予想ですが、昔の伝説的な広告の仕事、例えば、糸井重里さんのコピー「おいしい生活。」なんかも、マーケットをある程度限定して書かれたものだと思います。「○万人」というのが頭にあり、その数も1980年代においては、何からのリアリティがあったんじゃないでしょうか。

博報堂 iディレクション局 シニアクリエイティブディレクター 須田和博 氏

須田:人数を区切るというのは、“誰もがわかるもの”である必要はない、ということですよね。確かに普段、僕らは、「ターゲットはどんな人?」というのは考えますが、テレビCMなどのマス広告で人数を区切るということは考えないですし、Web広告でも結果のアクセス数は問われますが、「何人まででOK」という発想はなかったですね。いやぁ、ポルノという指摘も含めて、今日は来てよかったです。

廣田:広告会社もプランニングの際、市場規模を図るシミュレーションをしたりしますけど、結局、それは、クリエイティブのアイデアを思いつく原理とは全く違うんですよね。クリエイターと、営業やマーケターは発想のよりどころが違う。どこにどんなファンがいるのかって案外読めないもので、そういう計算ができない要素を踏まえた市場のシミュレーションがある一方で、クリエイティビティは全然、違うところから発想される。

次ページ 「マーケットのスケールを限定することで共有コンテクストが決められる」へ続く

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