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電通、オンライン動画の専門チーム立ち上げ

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日本のオンライン動画はまだ「広告的」

――最近の海外の傾向で注目していることは。

鹿間 米国で開かれた動画広告枠販売の見本市「デジタルコンテンツ・ニューフロント」に先日参加してきました。もともと、テレビ業界ではシーズンの前に各局が新番組や編成方針を発表して広告枠を販売する「アップフロント」というものがありますが、そのデジタル版と言えるものです。

そこでプレゼンを行うのはデジタルの媒体社だけでなく、コンデナストなどの雑誌社や、ディスカバリーチャンネルのようなテレビ系の媒体社なども含まれています。アナログやデジタルといった既存の枠を越えて、視聴者の限られた時間を各媒体社が奪い合っているように感じました。日本はまだそこまでは行っていませんが、放送局の見逃し配信の取り組みなどを見ても、確実にそこに向かっています。日本でもデジタルのみで閉じていた時代は終わりを迎えつつあると感じました。

佐々木 国外のクリエイティブを見ていると、日本の動画はまだ「広告的」だと感じます。「買わせたい」「いいところを見せたい」といった色が強いのです。必ずしも海外が進んでいるということではないでしょうが、優れた海外事例を見ると、ユーザーとブランドの距離感をよくわかっていて、「これは気持ちが揺さぶられるから見たい」とか「自分の意見を言いたいから見ておきたい」とユーザー側からアプローチするようなところに配置されていると感心させられます。

例えば昨年、「FIRST KISS」という動画が話題になりました。初めて会う男女がキスするまでの様子を10組分延々と撮影したものです。見る側も、初めて会った人とキスするなんて……と自分に置き換えたりしてドキドキしながら見てしまうわけです。これはアメリカのファッションブランドの「広告」でしたが、1億回以上も再生されています。

この事例からは、決してお金をかければいいというわけではないことに気づかされます。そこにユーザーが見る理由や、見た後に誰かに言いたくなるかといったことがしっかり考えられているのです。オンラインメディアに国境はないので、そうした動画は何千万ビュー、何億ビューと広がっていきます。日本発の動画でそうしたケースはまだ少ないですよね。そのあたりはこれからの課題だと思います。

動画を取り巻く環境に危機感も

――このチームの当面の目標をお聞かせください。

佐々木 もちろん、動画についての相談が集まるようにして多くの案件を実施していくといったビジネス上の成功も重要ですが、それだけでなくオンライン動画の質やメディアの価値を高めるところから取り組みたいと考えています。

この領域は期待が高まっている一方で、「お騒がせムービー」のようなものや、品質の良くないまとめ動画、ユーザーをだまして広告を踏ませるような手法などが横行し、一部では荒れ始めていることも事実です。こうした状況が続くと、成長途上にあるオンラインメディアの価値を下げてしまうことにもなりかねないという危機感があります。目指していきたいのは、見て面白く、クライアントさんにも価値を感じていただき、クリエイティブもチャレンジができる場所にしていくことです。昔の人がテレビCMを広告の手法として確立させたように、オンライン動画を効果的に使う場を改めて発明したい、という気構えで取り組んでいきたいと思います。

――チーム名「鬼ムービー」のネーミングの由来は。

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佐々木 若手の感性によるネーミングです(笑)。電通には「鬼十則」があるので鬼は神聖な存在でもありますが、面白い動画はCMと違い、「鬼やばい!」みたいなノリで広がっていきますよね。その、明文化できない強さを探っていきたいと思い、名づけています。

鹿間 見る人の気持ちに寄り添う動画を作るチームとして、見る人たちの言葉で語られるような、「鬼やばい」と言われる動画をつくっていきたいという思いを込めました。