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[R30メディアパーソン座談会]いま私たちが向き合う課題と挑戦(前編)

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メディアの環境が大きく変化する時代に、大手マスメディア企業で働く若手は今、何を考えどんな取り組みをしているのか。 マスメディア企業の中で、新しい挑戦を始めている若手3名に、 メディアの現在と未来の可能性について語ってもらった。

*本記事は9月1日発売、月刊『宣伝会議』10月号の巻頭特集「激変するメディア環境とテレビの未来」内の記事を先出し、公開したものです

左から、テレビ東京コミュニケーションズ 段野祐一郎 氏 朝日新聞社 林 亜季 氏 、TBSテレビ 中島啓介 氏

コンテンツ価値を向上させたい

中島:僕は2009年にTBSに入社して以来、制作部でバラエティ番組のADをしていました。2012年に、次世代ビジネス企画室に異動。ネットとテレビを融合させて、若い人に参加してもらえる番組づくりに挑戦しています。取り組みの一つとして2013年1月より不定期の特別番組として放送しているのが『リアル脱出ゲームTV』です。主人公が謎解きするのと同じタイミングで、視聴者もネットの特設サイトから解答できるという、新感覚のドラマです。そうしたドラマ制作と並行して、スポンサーと連携をとりながら、新しいテレビCMのあり方や、テレビの価値創出に対してチャレンジを続けています。

林:私が朝日新聞に入社したのも2009年です。記者として入社してから現場取材を積んできました。2013年に社内で、新聞社の既成概念にとらわれない新しい商品やビジネスを生み出す実験室として「メディアラボ」を開設することになり、ラボの公募に手を挙げました。配属後は、コンテンツの力で実際にお金を集める新しいメディアの試みとしてクラウドファンディングサイト「A-port(エーポート)」を立ち上げたり、「朝日自分史」という自分史制作支援サービスなどを開始。他にも、色々な新規事業の模索、研究に取り組んでいます。

段野:僕の経歴はちょっと変わっているかもしれません。テレビ東京には2007年に入社、情報システム部門に配属され放送システム構築に従事。その後2012年に制作技術部に配属となりカメラマンとして色々な現場を経験した後、今年1月からテレビ東京コミュニケーションズで「見逃し配信サービス」の立ち上げや経済番組に特化したVODサービスであるビジネスオンデマンドに参画しました。主な担当は動画・広告配信のシステム構築や技術検証ですが、人員が少ないためプロモーション企画や効果測定まで幅広く携わっています。

テレビのコンテンツはニーズが高いことを実感する反面、今後動画コンテンツはますます増加し、今以上に熾烈な競争が始まるだろうと危機感を抱いています。コンテンツが飽和している中で、どうすれば自局のコンテンツをユーザーに届けられ、見てもらえるのか。中長期的なスパンでその戦略を検討しているところです。

中島:僕の関心は、どちらかというとソフトの面で、やはり気になるのは制作費ですね(笑)。制作費はテレビの広告費シェアの減少に合わせて減るものです。2020年の東京オリンピックまでは広告の需要は増加傾向にあると思われるので今はあまり心配していませんが、オリンピック後、景気が下がった時にテレビCMの出稿量、さらに制作費がどうなるのかが気になります。

いま宣伝予算の決裁をしている人たちは、皆テレビ好きで、テレビCMに高い価値を認めている方が多いのですが、2023年くらいになると、デジタル視聴に親しんだ世代が決裁者に加わっていく。すると一気に主要媒体がテレビからネットに移っていくかもしれない。だからこそ、コンテンツ自体の価値がインターネットに比べてずっと高いのだということをスポンサーに説得していかなければ、広告費シェアの低減は留まらないと考えています。

林:マスメディア全般に言えると思うのですが、同じコンテンツを皆で同時に共有するスタイルはもう成り立たない時代になっているのではないでしょうか。皆が新聞の1面トップ記事を一番重要なニュースと思う時代は過去のものになっていて、それは、ある意味で仕方のないことと思っています。しかし、お2人がテレビのコンテンツについて話されましたが、テレビ同様、新聞コンテンツもクオリティの高さも自負するものがありまして、その価値がネット社会であまりに低く見られすぎているのではないかと感じています。

中島:分かります。制作に携わっているので言いづらくはあるのですが、僕も国内に出ている動画の中で、テレビ局が制作したものは群を抜いてクオリティが高いと思っています。SVOD事業者でフジテレビさんの月9のような作品をつくられたら大変ですが、いまの段階では無理でしょうし。

段野:同感です。ただ、実感として今、どのメディアもコンテンツの力を100 %出し切れていないのではと思うことがあります。人々に触れてもらうという点が弱いと思うのです。今の若者はテレビも新聞も見ない人が多い。能動的に番組情報を知ろうとしない人たちにどうPRしていくかが重要です。

例えば、若者に番組の訴求を行うためにユーチューバーと共同でコンテンツを制作して認知拡大を図ったのですが、一定の成果を得ることができたので、こういった取り組みを増やしていこうと考えています。また、スポーツ中継は事前取材など大量に映像を撮影しますが、ほぼオンエアで使われません。そうした素材もネットだと全部見せることができるので、流通させることでファンを形成し、視聴者獲得につなげられればと思っています。

<後編へつづく>


中島 啓介
TBSテレビ 次世代ビジネス企画室 兼 情報制作局 情報三部 プロデューサー

番組プロデューサー。2009年の入局後、バラエティ制作局を経て2012年に次世代ビジネス企画室へ異動。以降「リアル脱出ゲームTV」「マッチング・ラブ」などを企画・プロデュース。セカンドスクリーンとテレビとを連動させた新たなテレビ体験・ビジネスモデルの開発を目指す。

 

林 亜季
朝日新聞社 記者

朝日新聞社メディアラボ員。1985年生まれ。東京大学法学部卒、同情報学環教育部修了。2009年、朝日新聞社入社。記者として高松総局、阪神支局(宝塚支局長)を経て、13年から現職。記者経験を生かし、新規事業の立ち上げに携わっている。

 

段野 祐一郎
テレビ東京コミュニケーションズ システム・マーケティング本部

2007年テレビ東京入社。情報システム局システム部を経て12年より技術局制作技術部でカメラマンとして様々な現場を経験。14年1月より現職で動画配信のシステム構築、マーケティング業務に従事。「ネットもテレ東キャンペーン」や、「テレ東プレイ」、「テレビ東京ビジネスオンデマンド」を担当。