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「PRは、広告への劣等感を捨てるべき」——PRWeek編集長が語る「PESO」とは?

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PRに求められるスキルに変化「広告への劣等感は捨てるべき」

日本のPRパーソンは、伝統的なメディアリレーションズ業務に最も重きを置いている。月刊『広報会議』の調査(2014年11月実施)でも「2015年に最も注力したい広報活動」を110社の企業に聞いたところ、1位は圧倒的に「メディアリレーションズ」という結果が出ているのが現状だ。

バレット氏によれば、日本の大手PR会社が新聞、雑誌、テレビなどメディア別にリレーション強化のため組織を置いているのは非常にオールドなスタイルだという。米国ではPRに求められるスキルは大きく変化しており、メディアに売り込むだけでなく、メディアの機能を理解するマーケティング発想が必要とされている。

「同時に、企業にはCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)といった役割が必要。企業のレピュテーション管理、リスクマネジメント、インターナルコミュニケーションなども重要だが、マーケティング部門の人にはコーポレートコミュニケーションのスキルは備わっておらず、誰もやりたがらない」という状況にある。

先日発覚したフォルクスワーゲンの排出ガス試験不正問題からも、レピュテーション管理、CCOの役割の重要性を挙げる。

「企業の情報が一気にグローバルに駆け巡る時代にあって、ソーシャルメディアは非常に危険な場所。スキャンダルに陥った企業を立て直し、レピュテーションを獲得するには何年も時間がかかります。先手を打ってプロアクティブに、マーケティングもコーポレートコミュニケーションもスマートさが今ほど重要な時期はありません」。

すべてのコミュニケーションは統合的なものになり、集約されるなかで日本でもエージェンシー側の構造変化が起きつつある。最近のアドタイでも、「広告会社やPR会社という業務区分はない」あるいは「PR専業じゃなくても面白いPRができる」といった論調が巻き起こったばかりだ。

バレット氏が最後に主張したのは、「PRは広告に対する劣等感を捨てよ」というメッセージだった。

「コミュニケーションはアイデアを持ってこそ勝ち組になれる。PRに従事する人々は、広告に対して劣等感を持って仕事をしてきたのではないか。今こそ自らの仕事が企業にとって最高の解決策であると自信を持ってほしい。今こそPESOという考え方のもと、PRのプロフェッショナルが先陣を切っていける環境が整っている」と述べ、締めくくった。

「バイラルなものをつくってくれ」というクライアントのオーダーには約束するな

このほか、聴講したPRエージェンシーの参加者からは、日本でも問題視されているステルスマーケティング、ネイティブアドに関する質問も飛び出した。

バレット氏は「すべての仕事はAuthenticなものであるべきだし、透明性を欠いたコミュニケーションは確実に見つかってしまいグローバル規模で暴かれてしまう」としたうえで、米国の場合、PRコンテンツは2種類あると説明した。

岡本純子氏、スティーブ・バレット氏、本田哲也氏。

一つは、ブランドから生まれたネイティブコンテンツ。もう一つがメディアオーナーと協業してチームで制作したコンテンツだ。日本と同様のスキームだが、米国では一般に、ネイティブコンテンツとノンネイティブの両方に同じジャーナリストが関わらないことが重要とされている、とのこと。

バイラルコンテンツについては、クライアントから要請が増えているのは日米共通の課題である。そのとき重要であるのが、「バイラルが起きるかどうかは保証できないし、予測しえない。あくまで口コミはオーガニックなものであり、必ずバイラルさせますよ、とPRプロフェッショナルは約束してはいけないと思います」と話した。


Haymarket Media「PR WEEK」編集長
スティーブ・バレット

デジタルメディア代理店である Brand New Mediaの営業・マーケティング担当として、HJHeinz and Barr Soft Drinksなどのクライアントを担当。その後、ヘイマーケット(Haymarket)社のインターネット・ビジネス誌Revolutionのオンラインエディターから同誌アソシエート・エディターを経て、ヘイマーケット・プロフェッショナル・グループ(Haymarket Professional group)発行の若者向けメディアYoung People Nowを担当。2006年10月から2010年3月まで、英国で、ヘイマーケット・メディア・グループ(Haymarket Media Group)のMedia Weekで15人の編集チームを率いる。2010年4月より現職、12名のジャーナリストを率いる。