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コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

バスキュール朴正義さんに聞いてみた「デジタルの人から見た、テレビの面白さって何ですか?」

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気鋭のクリエイターたちは、今とこれからの広告やメディアについてどう考えているの? ACCならではの視点で、これからの広告のカタチについてお聞きしていくシリーズ企画「ACCプレミアムトーク」。今回は、デジタルを軸に新しいクリエイティブに挑戦し続けるインタラクティブ・クリエイティブ・カンパニー、バスキュールの代表である朴正義氏に話を伺いました。(聞き手・文:博報堂ケトル 原利彦)

——本日はACCプロデュースの企画ということで、デジタルクリエイティブのトップランナーであるバスキュール朴さんに、あえて、テレビというメディア、そして映像クリエイティブは今後どのような動きが考えられるのか、を伺いたいと思います。

まず今年7月、バスキュールは日本テレビと合弁で、ネットとテレビの融合をメイン事業にする合弁会社「HAROiD」を立ち上げられましたよね。

僕はそもそも、朴さんは元来“コンテンツ”で勝負していきたい人だと勝手にイメージしていたので、HAROiDのような‟サービス”側のビジネスにバスキュールが参画したことが、まず意外な驚きだったのですが…。

朴:いや、自分でもコンテンツ作りは決して諦めてはないし、今後も勝負していきたいと思ってるのですが、ここ最近のネットの波があまりに凄すぎて…。「これは、いよいよ大変なことになってきたぞ。どのレイヤーで勝負するのかを見極めないと、時代に飲み込まれるぞ。」って思い始めちゃったんです。

簡単にいうと、僕らプロフェッショナルが長い時間とエネルギーで作ったコンテンツが素人が作ったあるコンテンツに拡散で負ける、なんてことは、ざらにありますよね。そんな時代に、勝ち続けるコンテンツって、そもそも何なんだろう。素人にはできない勝負って何なんだろう…って考えはじめちゃって。

——確かに、プロのクリエイターが必死で作り込んだWebムービーよりも、素人のアカペラダンス動画のほうがバズっている、なんてことは普通にありますね。しかも、その勝負相手である素人さんは、とてつもない数と暇さで待ち構えている(笑)。

朴:そう。もしかしたら、コンテンツって言葉自体が、コンテンツを作れる人が限定されていた旧来の枠組みでしか通用しない言葉なんじゃないかな、とも感じてるんです。

皆が発信者になりうる状況になってしまった今、皆が発信したいと思う機会や器を作ることこそ、手をつけるべき新しいチャレンジなのかもと。それが「HAROiD」を始めた一つの理由でもあります。

例えば、何百年も続く「お祭り」って凄いですよね。「お祭り」っていう器にコンテンツという言葉がふさわしいのかわかりませんが、そういうレイヤーでものづくりを考えないともったいない時代なのかなと感じてます。

——いや、何百年も続いてるってだけで「お祭り」、半端ないコンテンツですよ。

朴:もちろん、誰がみてもカッコいいコンテンツや、唸らせるコンテンツを作りたい気持ちは当然、今もあるんです。ただ、誰もが発信者になりうるという人類が初めて遭遇した状況が起きた今、従来のコンテンツづくりとは違う、「お祭り」のような行事や習慣を作ることが、今は面白いのかな、と。

で、これは特別新しい考えではないと思ってます。何百年も続く「お祭り」を自らの手で生み出せるかは神のみぞ知るですが、「カラオケ」「バレンタイン」「ハロウィン」って人工的に作られた習慣ですよね。このネット時代に、どんな新しい行事や習慣をつくれるだろうかという野望の炎がメラメラと。

あ、もちろんコンテンツ制作の仕事も絶賛やりますので(笑)、引き続き何卒よろしくお願いします。

——はい(笑)。それで朴さんは日本テレビとHAROiDを立ち上げるなど、この「お祭り」づくりの場をテレビに求めたわけですが、なぜ、テレビを主戦場に選んだのでしょう?

僕にとってかつてのバスキュールのイメージは、「テレビやCMでやれないことを、ネットでガンガン仕掛けてやる。マスメディア上等!」っていうゲリラ戦士みたいなイメージだったのですが。

朴:気分は、今でもそうですよ(笑)。でも、現実がそんな青臭い思いを追い抜いていった感じです。

無数の素人とどんな勝負をするのかと考えた時に、テレビの「一斉に大勢の人々と情報を共有できる」っていう力は、改めて凄いな、と。そして、何よりも、スマートテレビとは何だろうかを考える機会があったことが、自分には大きかったです。

ここ数年で一気に普及し、国民の大半が持つようになったスマートフォンですが、音声コミュニケーションという従来のフォン(電話)の機能で語られることはもはやないですよね。スマートフォンはさらなる高性能コミュニケーション端末に進化した結果、主要SNSやソーシャルゲーム、UberやAirbnbに代表される従来のビジネスの枠組みを破壊するような新たなコミュニケーションサービスを生みだすまでになった…。

スマートテレビといえる端末が各世帯に普及したとき、これと同じような現象が、起きうるんじゃないかなと。もはや、テレビ=映像を受像するだけの端末ではない。

——面白いですね。もう少し具体的に伺ってもいいでしょうか?

朴:スマートテレビと言われる時代のテレビは24時間つけっぱなしになると思うのです。正確には、映像が映ってなくても24時間なんらかの情報とやりとりできる状態。

現在、デバイスとしてスマートフォンが最強な理由は、個々人を常時ネットにコネクトする状態をつくりあげていることにあると思っています。これからのテレビが、各世帯を常時コネクトさせる役割を担うようになったら、どんな現象が起きるんだろうってことに興味がありますね。

これまでのテレビは、ある意味余暇時間をターゲットにしていましたが、常時コネクトしている状態になれば、起床・炊事・食事・入浴・睡眠など、生活のタイムラインに寄り添った新たな役割も担えるようになるかもしれない。自分が朝起きて、リビングに出入りすることで勝手に画面のモードが切り替わり、繋がっている親のテレビとまるで一つの窓でつながっているように挨拶できたり、みんなで一斉にご飯を食べたり。いろいろ、考えられますよね。

次ページ 「番組やCMといったコンテンツの送り手側の意識は、どうあるべきだと思いますか?」へ続く

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