時代ごとに変わっていった「ブランド」の定義
お客さんの頭の中に、そのブランドらしさの連想構造をつくり、記憶に残す戦略。お客さんの気持ちに着目すれば「好意」、お客さんと商品との関係に着目すれば「約束」であるとも言える。
ブランド論は、コミュニケーション戦略の中心に位置する重要な理論ですが、人によって違う意味で使われることが実に多い。原因のひとつは「ブランド」の意味合いや役割が時代とともに大きく変化・拡大してきたから。言い換えると、いつの時代にブランド論を学んだかで、理解が違うということ。ここでは、ブランド論の変遷に焦点をあてて簡単に紹介しましょう。
1950年代〜 ブランドイメージ論
ニューヨークのマジソン・アベニューで広告文化が花開き、「クリエイティブ革命」が起きた時代に、デイヴィッド・オグルヴィがはじめて「ブランド」という言葉を広告で使い始めました。この時代のブランドは、広告で伝えるイメージ・印象のことでした。
1980年代〜 ブランドエクイティ論
M&Aブームの中、無形資産としての「ブランド」を評価しようという流れが生まれ誕生したのがブランドエクイティ論。ブランドをコミュニケーションで伝える対象物ではなく、価値をストックしていく無形資産の「器」と捉え直したところに新しさがありました。これによってブランドは一気に経営マターのトピックに格上げされました。
1990年代〜 ブランドアイデンティティ論
ブランドにどんな意味を込めたいか、ブランドの提供価値や存在意義とは何かを考え、それらを論理的に規定しようとする考え方で、現在のブランドプランニングの中心的なアプローチです。
2000年代〜 ブランドエクスペリエンス論
ブランドは機能でなく体験であるという考え方。お客さんのブランド体験に関わるすべての接点を設計していくべきという視点によってブランド論の視界が一気に広がっていきます。
そして、2010年くらいから、「ソーシャルグッド」という新しい潮流も生まれています。ブランドが社会に対してどういう種類の「良きこと」を提供できるのか、その存在理由や目的を中心に据える考え方です。
どうですか?こう眺めてみると、随分変わってきていますよね。ブランド論はコミュニケーション戦略の中心にある魅力的な理論ですが、このように拡大進化しているので、議論する際はその意味合いに注意したいところですね。
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