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僕らはまだ、階段の途中。ーーコピーライターインタビュー vol.2 阿部広太郎

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《2章》
手に入れたのは、ニトログリセリン。

—思いが叶って、コピーライターになれた阿部さんが、谷山クラスに通うことになったきっかけは何ですか?

クリエイティブ試験の面談で、これを伝えてダメなら仕方がないと思って話したことがありました。「3年で成果が出なければクリエイティブから出してもらって構いません」。そして、「3年だけ時間をください。絶対に何か残してみせます」と。

—阿部さんらしいですね。その本気が、転局につながったんですね。

でも、現実は甘くないですよね。最初の1年はまったく何も残せませんでした。当然コピーもボロボロ、思うように書くことさえできなくて。
一方で、同期の誰々のCM企画が通ったとか、プレゼンに成功したとか、ラジオCMでうまくいったとか、すごく耳に入ってくるんです。
焦りました。このままじゃまずい。何かやり方を変えなきゃって。
まず、自分には書く経験が圧倒的に足りていない、仕事以外にも書く機会をつくろうと思い、講座の受講を考えたんです。

—そこで見つけたのが谷山クラスということですね。

はい。ちょうどその1年前から谷山クラスが始まって、優秀な成績を残せば、自分が書いたコピーをもとに、実際にポスターを掲出してもらえるという話を聞いていて。谷山さん、井村さん、吉岡さん、照井さんという名だたる方たちから学べることも魅力的でした。ここでなら、何か起こせるかもしれない、変われるかもしれないなと。

—講座での手応えはどうでしたか?

いやぁ、意気込んで参加したものの、本当に、不甲斐ない結果でした。谷山クラスは、毎週課題に取り組んで、その成績が順位になって出るんですが、僕は最終的には36人中12番目でした。

僕は、電通のクリエーティブ局にいてコピーライターをしていました。そのことは他の受講生の方からすれば恵まれた環境です。その位置に行きたい人、座りたい人、そこで働きたい人がたくさんいるのに、そんな自分が成果を出せていないのは、すごくしんどかったです。書けないもどかしさや苦しさ。あの経験は他では得難いものでした。

—谷山クラスで得たもの。一言で言うと何ですか?

谷山クラスで得たもの・・・。いろいろ考えたんですが、僕はスキルとかじゃなくて、「ニトログリセリン」だと思いました。起爆剤ですね。

自分を動かす爆薬を手に入れたんだなと思っていて、自分への怒りとか、「電通だけどたいしたことないね」と言われた悔しさとか、自分の中で燃料になるものをたくさん手に入れることができた気がします。

いま、あの時教わったスキルを具体的に思い出すことは少ないんですけど、あの時に感じた感情は、間違いなくその先の1年、自分を突き動かしました。面談で約束した3年目の2012年にTCC新人賞を受賞できたのも、あの時の経験があったからだと思います。

次ページ 《3章》共闘関係をつくる仕事を。へ続く