コラム

良いコピーをどうやって書くか、ということより先に知っておかないといけない話。

iPS細胞を初めて実用化した髙橋政代がコピーライターに依頼したこと。

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「今日はセンセを笑わせに東京から来ました」

いざ、僕は神戸アイセンターのスローガンをプレゼンしに神戸の理研まで行きました。

「皆さんは日本の最高知性だと思いますが、マーケティングに関しては幼稚園児レベルと想定されますので、基本の基からお話しするかんじでいいですか?」。
「いいですよ!」。
そこで提案したことは2つ。1つはご依頼のスローガン。

「眼の医療を進歩させる。社会を変えるまで。」

医療の進歩というと、多くの人は技術のことを連想しますよね。でも少なくとも眼科の領域においてはそうとも言えない、リハビリ・ケア、社会復帰、それらの仕組みを整え、社会制度を変えるぐらいまで行って初めて進歩したと言えるのだ。そういう意ですが、技術だけが医学の進歩じゃないぞ、というのを再生医療の最先端チームが提唱するのはかなりカッコイイんじゃね?と。

もう1つは自主提案として、「運動体」をつくろうと。神戸アイセンターは「施設」としては普通に眼科病院でもありますから、「なんか目ヤニがたまってかなわんのですわ~」といった患者さんが利用したって構わないわけです。逆にそういった方々も受け容れないと病院経営が成り立たない。でも、発起人の先生方の強い想いは視覚障害者の社会復帰にある。
それを神戸アイセンター「構想」といった呼び方をしていたのですが、ややこんがらがっていたんですね。ならばその、想いの部分を切り出して運動体にすればシンプル化するんじゃないだろうかと考えたわけです。それで生まれたのが、「視覚障害者のホントを見ようisee!運動」。

じつは僕は先生を「また泣かせてやろう」とタクラんでたんですね。もし泣いたら「今日はまたセンセを泣かせようと思って東京から来ましてねえ…」とカッコつけようとしてたところ、プレゼン終わったとたん笑い始めて。「午前中に重い会議があったんやけど、気分晴れたわ~」とニコニコおっしゃったんで、「今日はセンセを笑わせようと思って東京から来ましてねえ…」にサクッと切り替えました。

isee!運動のロゴマーク

皆さんは「今まで自分たちでは整理できなかったことが、スッキリ整理された」ととても喜んでました。そのプレゼンで、世界中の医療・福祉機関がどういうスローガンを持っているかをマトリックスにしたんですが、先生は「これ面白いわ~。海外出張に持っていこ」と。そこに食いつくか!やはりそういうとこが研究者なんだなあと。
僕のことも研究しようと思いつかれたのか、次の打合せで突然先生が僕の本を取り出して「これ、読ませてもらいました」とおっしゃったんですね。本の話とか一言もしてなかったんですが。
「いやー、エラい方に手伝ってもらってるんやなーってことがわかりまして、ホントありがとうございますー」。
「あのーセンセ、今まで僕のこと何だと思ってたんですか」。
「イヤイヤイヤイヤ、今までもエラい方やなーとは思ってたんですけどこれ読んでますます、何て言ったらええんやろか、イヤイヤイヤイヤ、困ったわー」。
最近僕は世界の髙橋政代をイジる楽しみを見つけ始めてます。

視覚障害者のホントを見よう

ここで、その「isee!運動」について少し説明を。僕的にはこれが今回お聞きいただきたい本題なんで、もう少しお付き合いくださいね。

いわゆる視覚障害者の中で、全盲の方は1割に満たないと言われています。網膜はその全てがいきなり機能不全に陥るわけではなくて、端の方だけ見えないとか、真ん中だけ見えないとか、視覚障害と言ってもいろいろなんです。

たとえば周囲が見えない人は歩く時に白杖が必要です。でも目の前のものは見えたりするので普通にスマホを使ったりできます。そうすると周囲の人は「詐病だ」と誤解していじめたりするんですね。するとその人は街に出るのが怖くなって引きこもったりする。

働くために、たいていの人は「通勤」します。街に出られないということは、通勤できない、すなわち働けないということ。視覚障害者の多くは普通に事務とかできますし、特定の作業について晴眼者より能力の高い方はたくさんいます。たとえ全盲の方でも同時通訳のスーパーマンとかいらっしゃいます。でもそういった方々に社会で活躍してもらうためには、世の人たちの、視覚障害者への誤解を解くのが先決なんです。「isee!運動」の目的はそこ、まず「知ってもらうこと」にあります。

僕は視覚障害者の話を先生から聞いて、何だか恥ずかしい感覚に陥りました。自分も3年前に悪性腫瘍の大きな手術以来、下肢障害4級ですから、カテゴリーは違えどハンディキャッパーとして染みるところがあったのかもしれません。でも僕は杖をついて歩いていると親切にされることが多いです。悲しいことに視覚障害者の方々は邪魔者扱いされることが多いそうなのですが、その原因の主なるものは単なる誤解です。知るだけで解決される部分は多いので、これをお読みになっている方々はぜひisee!運動サイトの文章もご一読ください。ただそれだけで、運動に参加したことになるのです。

運動サイトはドリームデザインさんに制作してもらい、PRをサニーサイドアップさんにお手伝いいただいています。また、意を同じくしてくれるいろんな企業さまにサポーターとしてご参画いただいてます。たとえば僕の周辺ですとAOI Pro.さんやDLEさんにムービーを作ってもらおうとか、いろいろ巻き込みながら成長しているところです。

次ページ 「社会を変えるのは現場の「人」」へ続く

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