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コラム

良いコピーをどうやって書くか、ということより先に知っておかないといけない話。

iPS細胞を初めて実用化した髙橋政代がコピーライターに依頼したこと。

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髙橋政代先生から小霜さんへのお手紙

小霜さんへ

小霜さんとの出会いは、長年開発してきた網膜の再生医療が「世界初のiPS細胞治療」という一つの言葉で語られるようになった頃でした。我々は、再生医療だけではなくiPS細胞の力を違う形で利用してもっともっとみんなの役に立つようにしたい、その気持ちをどう社会に伝えたらよいのか、と悩んでいる時にヘリオス社の石川さんから紹介されたのでした。最初から真のプロにお会いできたのは本当に幸せでした。

数回想いをお伝えしただけで、もやもやと形のない理念に、これは「運動体ですね」と言って、「isee!運動」という素敵な言葉を与えてくれました。そう言われて初めて自分のやりたいことが形として現れてくる魔法のようでした。

小霜さんは、いわゆる広告代理店的な発想にとらわれない柔軟な思考でいろいろ提案してくれました。そのお仕事のやり取りの中で、この一つの言葉の裏に膨大な調査や作業や時間が投入されていることを知りました。それは我々の20年の研究の積み重ねが、「世界初のiPS細胞治療」という言葉になって現れたように。

この本を読んでその感は強まりました。小霜さんの長年の努力と経験とから得られる視点、何のためにコピーを書くのかという根幹とも言えるノウハウを惜しげもなく表したのがこの本だと思います。私も常に、何を何のためにするのかを最初に考えて最大限の効果が得られるものに着手し、方向性を決めることを目指しています。その姿勢は共通することがあるようにも思えて、小霜さんが次々ヒットを飛ばされている理由がわかるような気がします。そして、それはすべてのプロフェッショナルな仕事に共通する考え方のようにも感じました。

医療が社会に開かれていく時代、その発展のためにますます社会との合意形成が必要な時代となって来ています。iPS細胞という全く新しい治療についても合意を形成しながら慎重に進める事が必要です。また、医療と社会がうまくコミュニケーションをとることで、例えば再生医療に対する期待感、希望を単に治療への期待だけでなく、障害者の方の意識や社会の障害に対するイメージの変革という力に変えていけるのではないかという期待を持ってisee!運動を進めています。

今後も小霜さんには大変お世話になる事と思います。どうぞこれからも人々の抱く良き理念、想い、熱意に形と力を与える言葉を宜しくお願い致します。

理化学研究所/NEXT VISION 髙橋政代


髙橋政代(たかはし・まさよ)
公益社団法人ネクストビジョン理事 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター網膜再⽣医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー 先端医療センター病院 眼科部⻑(網膜再⽣担当) 神⼾市⽴医療センター中央市⺠病院眼科 ⾮常勤医師 京都⼤学⼤学院医学研究科連携⼤学院講座 客員教授 京都⼤学iPS細胞研究所 アドバイザー


小霜和也(こしも・かずや)
1962年兵庫県西宮市生まれ。1986年東京大学法学部卒業、同年博報堂入社。1998年退社。2016年現在(株)小霜オフィス/no problem LLC.代表 。クリエイティブディレクター/コピーライターとしてマス・デジタルを横断する広告キャンペーンに携わる一方、幅広い企業のコンサルティングや研修などにも従事。広告賞受賞多数。 近著「ここらで広告コピーの本当の話をします。(宣伝会議)」、他著作「欲しいほしいホシイ(インプレスジャパン)」