メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

広告は、ナメられているのか!?

share

モテない男子「広告くん」が受ける誤解

読者ちゃんと記事くんの楽しい時間についてくる、モテない男子「広告くん」(イメージ)。

我らが広告に「モテない男子」を重ね合わせてみる。

読者ちゃんが記事くんに会いたいと思った。そしたら呼んでないヤツがついてきた。「広告くん、なんでいっしょなの?」。読者ちゃんは、記事くんのためにお金を払ったのだ。読者ちゃんは(まあいいか、どうせ目に入らないし)と思っている。

視聴者ちゃんがドラマくんに会いたいと思った。そしたら誘ってもいないヤツが来た。「広告くん、なんでそこにいるのよ!」。視聴者ちゃんは、ドラマくんに会いたくて貴重な時間を割いているのだ。しかも何分かおきに何度もドラマくんとの時間をさえぎるなんて、と怒り心頭だ。視聴者ちゃんとドラマくんの楽しい時間の代金は、広告くんが払っているのにもかかわらず、である。

しかも広告くんは、余計なことをするヤツだとも思われている。あいつはいつも(呼んでもいないのに)、何かを携えて来る。しかも(頼んでもいないのに)、その何かのことを語り始める。

そういうヤツが実在すれば、確かにウザイわ。
ところがですね、それは誤解だ。

①「広告はいらないものまで買わせる」

まずクライアントである企業は、消費者に受け入れられないものはつくらない。事前に周到な調査を行い、実効性のあるマーケティング戦略を立てる。魚のいない池に釣り餌を垂らす余裕など、経済的にも時間的にもない。つまり広告は、必要とする人が存在するモノやサービスしか扱い得ない。

ところが、マスコミュニケーションにおいては細かいターゲティングができないので、大半の広告は自分には関係のないものということも常態化しがちだ。だから一人の個人としては、自分に関係のない「いらないもの」が広告の世界にはあふれていて、あわよくば、それを自分に売りつけようとするようにも思えるが、単に自分がターゲットではないからだ。

受け手には、それらのメッセージを無視したり拒絶したりする自由も権利もある。

②「広告は世の中のためにならない」

先に述べたように、越後屋の手先である(と思われている)広告には、「もっと使わせろ、もっと捨てさせろ、無駄使いさせろ」などと、かつて喧伝していた時代もあった。その頃ならば「ワルよの~」と言われても致し方なかったが、今やそんなことが通じるわけもない。不穏当な表現はメディアの考査ではねられ、不当なものは処罰の対象となる。売らんかなの見え方は反発を招き、「ステマ」がバレれば大炎上だ。

それどころか、広告には、根源的な善意がある。企業は、消費者の現状をよりよくするものを提案する。現状以下のものなど、買うわけがない。

つまり、消費電力を抑えた電化製品は消費電力の少ない生活をつくり、その生活の総体は社会を消費電力の小さな社会へと改善する。オシャレなスーツは個人をオシャレに変え、そんな個人の総体は「最近は男もオシャレに気を使うようになったね」という世の中をつくる。

それらをプロモートするのが広告だ。広告は「これいいですよ」と薦める。いいものが増えれば、世の中はもっとよくなる。

「時代/社会/人間」において合意を得た広告という存在は、まさしく「その人/その場/その時」を描き出す。そして「ほんとうのこと」しか語っていない。『宣伝会議』の連載で、およそ2年間にわたって、ぼくはそれを書き続けて来た。毎月の締め切りはキツかったが、私事ながら素晴らしい経験だった。それをまとめた書籍が、9月1日に出版されます。

この記事自体が「広告くん」だったとは、なんてサプライズ!

※本記事は、『宣伝会議』9月号に掲載されている記事に一部編集を加えたものです。

 

『広告をナメたらアカンよ。』、9月1日に発売!Amazonで予約受付中!

『宣伝会議』でおよそ2年間にわたって掲載してきた人気連載「広告を『読む』。」が大幅な加筆修正をし、待望の書籍化。

「男は黙ってサッポロビール」「そうだ 京都、行こう。」「おじいちゃんにも、セックスを。」「恋は、遠い日の花火ではない。」「ピッカピカの一年生」「おいしいものは、脂肪と糖でできている。」「ウイスキーが、お好きでしょ」「愛だろ、愛っ。」「想像力と数百円」「あなたが気づけばマナーは変わる。」「みんながみんな英雄。」・・・など

広告を読み解けば、そのたった一行の文章に、わずか15秒の時間に、おいそれとは測り知ることのできないほどの、喜び、哀しみ、希望、人間の営み、社会情勢、経済状況、国際問題、男女関係、流行、気分、情念、記憶などなどが溢れ出てくる――。

山本高史氏(クリエーティブディレクター/コピーライター/関西大学社会学部教授)が語る、渾身の広告・コミュニケーション論!

『広告をナメたらアカンよ。』刊行イベント開催決定!

9月3日(土)19:00-20:30 @宣伝会議セミナールーム(100名収容)
http://www.sendenkaigi.com/class/detail/post_10.php

商品やサービス、企業のコミュニケーションにおいて、「広告」はどんな役割を果たすのか、そして何をもたらすのか。広告、マーケティング・コミュニケーションに関わる方、必見の内容です。