62年前の宣伝担当者は何を考えていた?1954年の『宣伝会議』創刊号座談会を公開

『宣伝会議』創刊号

雑誌『宣伝会議』は2016年10月号(9月1日発売)で、創刊から900号を迎えました。この記念号では、特集「マーケティングはメタ(俯瞰)で動かす。」と題して、マーケティングの未来を占っています。AdverTimesでは、900号を記念して1954年に発行された『宣伝会議』創刊号の中に収録された、当時の宣伝部員たちによる座談会<新「水虫薬」宣伝計画>を特別公開します。デジタルはもちろん、テレビCMでさえ一般的ではなかった時代の宣伝部員たちによる“宣伝会議”から何がみえるでしょうか。

1シーズン1500万円の予算は妥当か


出席者<発言順・敬称略>

  • (ナガ製薬専務取締役) 土屋健 氏
  • (鳥居薬品広告課長)  椎橋勇 氏
  • (第一製薬広告委員)  奥田晃久 氏
  • (帝国臓器学術課長)  吉田勝三 氏
  • (山之内製薬営業課長) 植田弘法 氏
  • (藤沢薬品宣伝課長)  村上榮一 氏
  • (中村滝製薬取締役)  若林惟一 紙
  • (三共宣伝課次長)   土居川修一 氏
  • 司会(本誌) 久保田孝

日本宣伝クラブ会館において
久保田:

皆さんが、皆さんの会社でおやりになる宣伝会議は、一杯やりながらというわけにはいかないでしようが、ここでは、雑誌『宣伝会議』のスタートを祝福させていただきまして、ビールなど適当に飲みながら、大いに論議していただきたいのです。

ただし、会議は既定のテーマによって、あくまでも具体的に、リアルに、進めてゆきたいと思いますので、一杯やったからといつて気が大きくなつたり、数字を見るのがメンドウ臭くなつたりしてもらつては困ります。(笑声) 

きようのテーマは、先日、プリントで申上げておきましたように、効果の強大な水虫の薬が発見されて、ある新興の製薬会社が、それを製品化した。A価(小売価格)150円。外観もなかなかスマートな製品ということになっております。これを、ことし、4月、5月、6月、7月、8月の5ヶ月間に、1500万円の予算で宣伝する、という想定なんです。

<テーマ>

  • 新発見の強力「水虫薬」を新発売する。
  • 小売価格(A価) 1コ150円
  • 販売地域 全国
  • 販売目標 50万コ
  • 宣伝期間 本年4月から8月までの5ヵ月間
  • 宣伝予算右5ヵ月間で1500万円(1ヵ月平均300万円)
  • 右の想定で各月へのウエイトのおきかた。媒体の採り上げかたなどにつき、具体的で、精密な宣伝計画を立てる。

5ヶ月間1500万円ですから1ヶ月平均は300万円。こんにち、宣伝されている商品の中では、この300万円程度の予算のものが、一番、多いのじやないかと思うんです。ところが、この、1商品、300万円ぐらいというのが、一番、やりにくい予算なんです。オビに短し、タスキに長し、というやつでね。そこで、それだけに、また、参考になる読者も多いだろうと思って、編集部では採り上げたわけなんですが、しかし、水虫薬宣伝の実際の場合と、少しでも隔たりのあるものであつてはいけないとおもつて、水虫薬では大経験者である椎橋さんに相談してみたところ、これで妥当であるということだつたのです。

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宣伝会議 編集部 (900号企画)
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