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コラム

『宣伝会議』通巻900号記念特集

62年前の宣伝担当者は何を考えていた?1954年の『宣伝会議』創刊号座談会を公開

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新聞とそのスペースの採りあげかた

土屋:日刊紙をやろう。

久保田:都市中心なら、夕刊を主用していいな。夕刊はフロあがりに読む。水虫薬のアッピール・チャンスとしては、申しぶんない。湯あがりに、水虫が一番かゆいということを、みんな、知つてますかね。

一同:知つてる、知つてる。(笑声)

椎橋:そこでだな、6月、7月には、フロ屋での広告をやりたい。これは、実にきくよ。経験から言うんだ。

土屋:なるほど。フロ屋へポスターを出すんだな。ポスターはあるし、これは大した金額じやない。

村上:東京、大阪でやるとして、10万円もあればいいだろう。

土屋:ところで、新聞は、朝、毎、読と、皆、同じように使わねばいかんかね。

椎橋:4月は、この予算では、朝、毎全国版でやつて、北海道、中日、西日をやめる。

吉田:スペースは、全三か半五。

土居川:半五がいい。全三は、朝刊では下積みのおそれが多い。

奥田:西日本をやめるのはいかん。九州の4月は、こちらの5、6月なみだ。

椎橋:そうだ。これは、まちがつていた。西日は、使う。使う。
(このあたりから、また議論ふつとうする。2、3人の人はソロバンをパチパチやつて計算しながら、新聞の採りあげかたとスペースの決めかたについて、激論していた。)

椎橋:結局、皆さんの意見を統合しての結論は、こういうことになる。4月は朝日(4社・全国版)半五で90万4750円、西日本が全二段13万900円、毎日の大阪および西部が全二段で45万4300円で、トータルすると、148万9950円、ほかに、業界紙が10万円、紙型代6万円、総計164万9950円以上を4月の決定案としよう。

久保田:よろしい。5月にいこう。5月分200万円から、業界紙10万円、ポスター50万円、合計60万円を、まず引くと、あと140万円となる。

吉田:ポスターは30万円でいこう。1枚30円ならいいだろう。大判ものはいらない。

久保田:そうすると、あとに残つた広告費は4月分と同じになる。

椎橋:スペース割りは4月とは変えなければならない。4月は、すべて説得広告のつもりだつたが、5月は、全一などの印象広告もまぜたい。

土屋:半二だつて説得はできるぜ。

土居川:できますね。

久保田:論議が白熱したため、予定より時間がのびてしまいました。数字の計算は、もういいですから、大体の方針だけを決めて下さい。

椎橋:よろしい。5月は、印象、説得併用。6、7月は説得で半五段を主力とする。読売も使う。

土屋:私は、東京新聞を加えたい。

椎橋:それをやるなら、内外タイムスもやりたい。安くて、わりどくなんだ。

匿名:だが併読紙までやる余裕はないな。主読紙の方が、まだ十分じやないのだ。

久保田:この予算では、6月から、朝、毎、読と三紙を使うのが常道だろう。

吉田:6月は、ラジオ、雑誌、業界紙を引いても、あと300万円からある。それに、北海道もやめるんだから、そうとう大きなスペースのものがやれる。

椎橋:回数も、ふやせる。10日おき、つまり1紙3回でゆきたい。

土居川:そう、3回はいる。説得が1回、あと2回は印象。

吉田:次に7月だが、7月も同じ方針だろう。50万円のアップ分は東京に使おう。

匿名:シーズン途中で、1ヵ月ぐらい媒体を増やしたつて、大したことはないと思う。6月通りの、朝、毎、読を押す方がいいのじやないか。

若林:この月あたりに、空箱懸賞でもつけて、消化促進をやる手もある。むろん、その宣伝は新聞が主体だ。

大手筋向きプラン300万円の使いかたいろいろ

椎橋:フロ屋の広告は大丈夫かな。あれは、東京、大阪だけでなく、名古屋も福岡もやりたい。

久保田:ポスターも、フロ屋でアッピールするにふさわしいものを、別に、作るべきだ。薬局につりさげるために作つたものを流用するということはアマいやりかただ。イージーゴーイングすぎる。

村上:そうなると50万円くらいはいるだろうな。

久保田:7月の50万円のアップ分をこのフロ屋へまわすかね。

椎橋:ちょつと待つた。その50万は残しておきたい。去年あたりの例では、9月が非常に暑かつた。だから、天候のぐあいによつては、9月を、全然、無視するわけには、ほんとうは、いかないわけだつた。50万は天候変化に応ずるための予備費ということにしておくのは、どうだろう。

椎橋:もし、9月が暑かつたら、この50万は、ラジオ・スポットに、つぎこむことだ。もつとも20日すぎればいらない。

吉田:50万円の使途は、いくらもある。保健指導版、ウィンドウバックに、月10万円ばかりかけたい。これは、店先で、客を引きこむ広告だ。

土屋:そのほかの細かいことは、このメーカーの広告部長に任すこととしよう。

久保田:以上は、はじめ、言つたように、新興商社むきプランというわけですが、これから、少し、大手筋むきプランを考えていただきたい。大体、大手筋が以上のことをやれば、新聞広告で、3、400万くらい浮くと思うが、それを300万円と仮定して、進めよう。

椎橋:5、6、7月に、新聞を強くしたい。1ヵ月100万として、中央紙に7割、3割は販売とにらみあわして、有望地区の地方紙を使う。

土屋:ボクは、ラジオを強くしたい。5、6、7月、全部ラジオに入れる。

村上:東京、大阪の夕刊紙を採りあげたい。

植田:私には2つのプランがある。その一つは、清水の昆ちゃんにでも頼んでマンガ広告の続きものを2ヵ月くらいにわたつて主力新聞に毎日のせたい。夕刊の小説直下などに。

久保田:キスミーやピカソのようなもの?

植田:あれは、同じものを、何回も使つているが、あんなのではなく、もつと大きく、そして、長期連載して、一般の評判となるもの、そういうねらいなんです。あと一つのプランは、販売奨励の意味で、販売店の人々を、海水浴に招待する。

久保田:それは純粋宣伝ではない。営業の方の費用でやつてもらいたいな。

植田:もう一つプランがある。200万円を6、7月に、さつきの方法でやり、100万円残して、これで、日本中へ行くアド・トーキーを作りたい。

奥田:映画は誰も言わないと思つていたが、実は、ボクも映画をやりたい。あとは地方紙に使う。あまり、中央紙偏重ということは、地方問屋などへの工作として、いけないことがある。いささか余れば、薬局へのPRをしたい。

村上:海水浴場に広告塔をたてたい。4市ぐらいにやりたい。あまつたら、東京、大阪の夕刊と、地方紙。それに、ウィンドウバック。

若林:これは、このメーカーの、うちわの話になるんだが、このメーカーは、東京が本社、大阪が支店、九州が出張所といつたぐあいに、なつているのか、どうか知らないが、とにかく、それら販売部隊の最も優秀なところへ、この300万円をぶつける。新聞なら新聞で、その地方の新聞をやるんだ。これも有効な使いかたではないかと思う。

土屋:意見が、みんな出つくして、特に、私の意見はない。まあ、やるとすれば、地方紙へ100万円、200万円は東京、大阪の薬局サービスと、店頭宣伝というところ。

久保田:地方紙の銘柄は?

土居川:温暖地方の有力紙、静新、名古屋タイムス、ギフ、神戸、山陽、中国に、その他、四国、九州の有力紙を、なるべく、たくさん採りあげる。

土屋:水虫になる人は、どういう種類の人?

久保田:クツを履く種類の人です。

奥田:そういう意味で、都市中心主義の宣伝ということは、まことに適切であると思う。

久保田:これを機に、この会議も、お開きといたしましよう。

なお、次号の会議は、皆さんに、もう一度、お集まり願いまして、この水虫薬の広告原稿について検討してもらいたいと思つております。ポスター、広告塔。ラジオ・スポット、新聞広告の半五、全三、全二、全一などの原稿、これらを、久保田宣伝研究所で用意いたしておきますから、その作品会議をやつていただきたいわけです。では、もう一度、お集まり下さることをお願いいたしまして、きようは、これで、終りといたします。

長い間、どうも、ありがとうございました。

本記事は、月刊『宣伝会議』2016年10月号 900号特集「マーケティングはメタ(俯瞰)で動かす。」を記念した特別企画です。創刊号から900号経った2016年10月号の詳細はこちらからご覧ください

※記事内には具体広告媒体名や金額なども出てきますが、62年前の創刊記事をそのまま使用しています。当時の広告業界の価格帯、媒体事情を基にした議論、数値である旨、ご理解ください。