メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

『宣伝会議』通巻900号記念特集

62年前の宣伝担当者は何を考えていた?1954年の『宣伝会議』創刊号座談会を公開

share

編成コンナンな水虫ぐすり5月度宣伝予算

久保田:ところで、予算の方だが、各月の金額は、この椎橋案でよろしいですか。よろしければ、決定案にしますよ。

村上:ちよつと待つてください。私は、5月の295万円は多いと思う。4月と同じでいい。なにぶん、まだ大した需要期とはなつとらんのだ。つなぎ程度の広告でいい。

椎橋:5月に、これだけとつたのは、例年の例によると、敵社が、この時期にやるからだ。A社、B社、その他、たくさんある。そこへ割りこむには、一応、これくらいないと、役に立たん。こちらは、まだ、名の売れていない会社なんだから、どうしても、ここで割りこんでおかなければ、ケシ飛んでしまう。

吉田:それには反対だ。大会社同士の戦争は見送つておこうじやないか。こちらは、そのようなメンツはいらん。需要期とにらみ合して、もつと効率的に宣伝費を使おうじやないか。

椎橋:だが、大衆宣伝だけが能ではない。販売期に対して、あおりがきかん。

吉田:水虫の薬で、敵が300万円も組むかどうか。

椎橋:組むよ。一応、プランとしては組んでいるんだ。

吉田:他の出かたで、使わずにすめばそれに越したことはないといつた性質のものだろう。ほんとうは、6、7月に使いたい予算なのだろう。こつちは、5月は、なるべく、へらして、需要期に使いたいねえ。

若林:そうすると、結局、ボクの案と同じことになるんだ。見込客が困つているときに、大きくやるべきなのだ。はじめのころの売込みや販売店操作は、販売部でやればよい。

椎橋:ことしは、そうはいかんよ。なにしろ、販売だつて、宣伝だつて、決戦の年だ。

奥田:事前宣伝のきいているものは、小売屋が売ろうとするわけだから、5月だつて、ある程度、いると思うな。

椎橋:5月までに大いに押しこんでしまうんだ。小売店は抱いたものは売らなければいけなくなる。

吉田:あとの宣伝が協力に続かないとガイセンのおそれがあるぞ。(ここらあたりから、非常に、議論ふつとう。速記の方も混乱して、だれが何を言つたかわからない部分もできた。が、結局、椎橋氏が改正案を出した。)

久保田:椎橋改正案を確認しよう。

椎橋:4月が160万、5月270万に改め、6月350万、7月450万、8月270万、こんどは、スペヤーがとれず、以上合計で1500万円です。

吉田:それでも、やはり、6月が少くて、5月が多いな。

奥田:各月の金額割りは、椎橋改正案にしておこう。そのかわり、各月の媒体を検討するんだ。原案では、6月にポスターまたはディスプレイをやることになつているが、これを5月にやるんだ。そうすれば、5月は椎橋改正案の金額でいいのじやないか。

吉田:なるほど。

植田:6月は、ポスター、ディスプレイの分が浮くわけだしな。

村上:それでゆくんら、話は、わかるよ。

吉田:金額だけでなく、内容を、もつと検討する必要があるよ。原案では、業界紙を休んでいるが、これこそ、販売店アッピールのために、いるだろう。約10万円。最低、東京2紙、大阪2紙は必要だろう。

椎橋:チラシがいるぞ。薬局用の。

久保田:それは、原案プリントの備考のところをみてもらえればわかる。発売当初の特売セットの中に、リーフレット、小型入荷ポスターは組みこまれているのだ。

土居川:ポスターは何枚つくるの。

奥田:薬局の数は、大体、1万8000軒でしよう。2万は、いらない。

久保田:大都市中心なら1万でよい。1枚50円で、ちようど、予算通り50万円です。

奥田:1枚50円も、いらんだろう。

久保田:ポスターなら、50円以下のものでもよい。が、ディスプレイをやるとなると、これは高くつくんだ。

土屋:このへん、少し、ゼイタクな予算のように思えるな。

椎橋:ゼイタクではない。ポスターだつて、必ず店においてもらえるもの、また必ず来客が注意するもの、そういうものを作るとなると、50円でも足りないこともある。

久保田:ボクはね、ポスターと業界紙とで50万円とふんで、これを5月にやることにしたらどうかと思うんだがね。

ラジオスポットは大いにやりたい

椎橋:しかし、消化のための広告効率からいって、5月は、もつと下げて、6月を強くしたい。5月は、200万でもいけるのではないか。ボクは、こういう案に変えたいと思うんだ。4月160万、5月200万、6月400万、7月450万、8月270万、あと20万を予備費。

久保田:皆さん、どうです。そうとうディスカッションしたげくの数字なんですが、大いに妥当性のあるものとして認めては、どうですかね。(多少の欠点はあるが、これを決定案として認める、とうことに意見一致する。)

久保田:それでは、この数字によって、媒体を採りあげてください。4月から検討して下さい。4月は半ばすぎから開始します。

植田:ラジオ・スポットがほしい。

土屋:私も、ラジオは可能な限り、徹底的に使いたい。

植田:北海道に使う100万円をスポットにあてるという考えでいけばよい。

土屋:そう、その考えかたはよい。そして毎日やるんだな。

村上:幾局やるのか知らないが、東京大阪だけでも、100万円では、毎日は、やれない。それに、毎日やる必要はないですよ。大体、週4回でいいです。

植田:原案になかつたものを、今、突如として、大々的にやるとなると、予算は、全然、組みかえになるよ。

久保田:必要不可欠の媒体ということであれば、いくら組みかえになつたつてかまわないですよ。

土屋:特に、新発売品の場合、スポットは、きくね。地域は、どうする。

土居川:東京、大阪、名古屋、福岡というところでしょう。この予算スケールでは。

椎橋:平均して、1社、1回、1万円ということになろう。そうすると、4社で1回、4万円だ。

村上:いや、KRだけで、週4回で18万円かかるよ。

匿名:そんなに高ければ、文化にしよう。都市中心であれば、あんまり広いサービスエリヤはいらん。

土居川:そうすると、東京は文化、大阪はどちらか一社、あと、名古屋と福岡というわけですね。

椎橋:ざつと平均すれば、その4社で1回が4万円だ。週4回で16万円。4週、つまり1ヵ月に64万円いるぞ。

植田:よかろう。期間は?

土居川:6、7、8月でしような。

椎橋:少し極端か知らんが、6、7月でいい。

吉田:8月も、あつた方がいいと思うがな。

村上:8月は回数を減らしてやることにしたらよかろう。週3回ぐらいにな。

椎橋:では、6、7月は、週4回、4社、64万円ずつ。8月は、週3回だから48万円ということになる。よろしいかな。

村上:よろしいですがね。スポットばかりが能ではなく、案内もまたいいということを、考慮にいれておいてもらいたいですな。案内なら、KRでも、うんと安くなる。1回1万円でもいけるんじやないかな。

久保田:スポットがとれない場合も、そうとう、あろうから、いや、大ありだろうから、案内も考慮にいれておく必要があるでしよう。

業界紙と一般雑誌はどう使う?

久保田:4月の媒体を決めよう。

植田:4月は、業界紙をもつとやりたいと思う。

吉田:倍として14万円の予算をとるかな。

久保田:そうすると、回数、紙数はどうなる?

村上:東京では、トキホウ(時報)も使いたいな。

椎橋:大阪はあと1紙、薬事新聞だな。都合、4紙。予定の全三段を全二段にして・・・

植田:10万円でいけますか。

吉田:4月も10万円、5月も10万円で行きたいな。

植田:6月は、うすくていい。一般紙で、じやんじやんやつているから。

村上:6月は半二でよかろうな。

植田:6、7月は5万円ずつでやってもらえると、いいですがな。

久保田:だがね、これは7万ぐらいとつておいた方がいいでしよう。

吉田:うん。では、7万として、次は日刊紙だ。

植田:雑誌を、さきにやろう。

吉田:4、5月の週刊誌はいらない。それを、6、7月にもつていつて、なお文春を使いたいな。

久保田:まず、妥当な意見だな。文春のスペースは?

椎橋:縦三(縦三ッ割)で10万円ぐらいだろう。

植田:それなら、4、5月の雑誌をやめて、6、7月に文春をやれるわけだ。

村上:週刊誌の方は、4分の1ページにして、月2回つかいたい。

吉田:4分の1はダメ。2分の1でないと、こたえない。2分の1で3回つかいたいな。また、この予算で、それは、やれないことはないんだ。

土居川:8月はいらないですな。その分を5月にまわしたいな。1回でも。

吉田:そうすると、4月なし、5月一回、6、7月2回ずつ、8月なし、ということになります。ところが、このままでは、文春がシーズンを通じて1回しかできない。シーズンを通じて1回なんていうのは、ヘンだよ。

椎橋:週刊朝日、問答無用下の8分の1にするか。

吉田:それはダメだ。

久保田:雑誌の場合は、全紙、説得広告でいくのが賢明だ。

村上:7月は、4分の1で2回やればいいじやないか。

奥田:さつきから聞いていると、どうも8月をママコにしている。それでいいかね。ラジオは、8月も、やつているんだぞ。

村上:全然、ママコにするのは、よくない。最初の週に1回やるか。

久保田:文春の予算が、いよいよ、なくなるね。

植田:しかたがない。新聞の方から流用だ。新聞は根幹的な媒体なんだから、流用はしたくないが、やはり、文春は使いたいね。

次ページ 「新聞とそのスペースの採りあげかた」へ続く

※記事内には具体的な広告媒体名や金額なども出てきますが、62年前の創刊記事をそのまま使用しています。当時の広告業界の価格帯、媒体事情を基にした議論、数値である旨、ご理解ください。