コラム

広告でいちばん面白いのは表現じゃない。戦略だ!

磯部光毅×寄藤文平「戦略プランナーとアートディレクターによる“戦略史”トーク」

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戦略とは、フレームワークでは解けないものを解決する“自由な視点”である

磯部:もう2時間も経ったので、そろそろ口の悪い話もし始めますけど(笑)、実はこの中には特定のフレームワークですべてを解決しようとする人へのアンチテーゼを少し込めているんです。フレームワークにはめる作業って、基本的に渦巻きの内側に入っていくということなので。そこで出せる答って、高くても85点くらいじゃないかと僕は思う。僕自身は、それを超えていきたいと思っています。

寄藤:コンサルの方々だけじゃないと思いますけど、会話のどこかで自分を規定するような話し方をする人っていますよね。「僕はデザイナーなので」とか「私はそういうキャラではないので」というふうに、自分のポジションをズバッと決めちゃうんですよ。それをテコにしてロジックを積み上げていくから話は整理されるし明快なんですけど、それって対話というよりマウンティングゲームみたいな感じがします。何かをゼロから立ち上げなきゃいけないっていう場にそういう明快さが持ち込まれるとすごく白けますね。

磯部:そういったスタイルの方々は、ひとつの崩れない論理体系を持っています。でも今は、そういったフレームワークの外から見ていかないと難しい問題は解けないと思います。

寄藤:この本は「マーケティングのプロが教える」っていう感じがないですよね。変な言い方ですけど、すごくあったかい感じがします。マーケティングってなんだろうっていう根本的な問いかけについて考え抜いた全体像が、そのまま本になっているように感じました。「僕はデザイナーなんで」って宣言して話すのは楽ですし、「書体にこだわるデザイナーなんで」っていうふうに領域を狭めれば、なんでも書体に引き寄せて話せばいいから話もまとめやすい。でも、そういう楽なやりかたをしないで、自分と同じところに立ってお話してくださっている感じがしました。

磯部:ありがとうございます。とにかく最近は新しいキーワードが次々と出てきて、これからはそれを用いればOKみたいな感じになったりして。でも、実際のマーケティングの現場で向き合う課題はそんなに簡単じゃないんです。これだけ複雑になってきているわけだし、自分の得意分野のことはいったん忘れて、もう一段視点を上げて、全体を見たほうがいい。そこで「こういう答えがあるんじゃないか」というふうに議論をしたい。部分最適を超えて全体最適で考えようよと。その共通言語として使って欲しい。それがこの本の隠れたメッセージです。

寄藤:自分のマーケティングを考える解像度がすごく上がった気がします。

磯部:今日はどうもありがとうございました。

右)磯部光毅(いそべ・こおき)
磯部光毅事務所 アカウントプラナー・コピーライター。

1972年生まれ。博報堂にてストラテジックプランニング局、制作局を経て2007年独立。戦略とクリエイティブの境界を超える横断的なプランニングが得意。著書に『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』(共著、宣伝会議刊)。


左)寄藤文平(よりふじ・ぶんぺい)

1973年長野県生まれ。1998年ヨリフジデザイン事務所、2000年有限会社文平銀座設立。広告やプロジェクトのアートディレクションとブックデザインを中心に活動。作家として著作も行う。

 

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