コピーにおける時代性とは?
今野:谷山さんのご著書『広告コピーってこう書くんだ!読本』の中で、1980年代が「納得の時代」、90年代以降が「空気の時代」だったと定義しています。では現在、2010年代はどういった時代なのでしょうか?
話を理解しやすくするため、一部谷山さんの著作から引用させていただきます。
1980年代
〈受け手にまず「いいことを言ってるな」「うん、なるほど」とうなづかせること、それが広告コミュニケーションの〝主流″を占めていました(p.198)〉
参考例:TOTOウォシュレット「おしりだって、洗ってほしい」西武「不思議、大好き。」サントリーリザーブ「僕は誰にも似ていない。」
1990年代
〈「なんとなくそうですよね」「いまの世の中って、そういう感じなんですよね」という大きな空気やムードをつくろうとしていたように思います(p.200)〉
参考例:サントリーモルツ「モルツ、モルツ……」と商品名を連呼するCM、ぺプシコーラ「ペプシマン」、JR東海「そうだ 京都、行こう。」
※詳しくは谷山さんの著作を読んで下さい。
谷山:世の中の時代ではなくて、あくまで広告コミュニケーションの手法の変遷における意味で「時代」と言ったわけで…実を言うと、広告を作る時にあんまり時代性を意識しないんですよ。
常に考え続けるのは、目の前にあるモノ(今野 註:ここで谷山さんは目の前のペットボトルの水を手に取りました)が世の中の人間に、どう幸せに受け入れられてもらえるんだろうかということですね。今の世の中で、あるモノには必ず作った人の意志が入り、どこかに現代性というものが練り込まれている。そうするとあるモノのことを一生懸命、人に幸せに届けたいと思っていると、自然に時代性というものは反映されてくるんですね。
しかも、今僕が持っているのはペットボトルの水だけれど、水における時代性と、ラーメンにおける時代性と、シャンプーにおける時代性は違うんですよね。
今野:それはモノがそれぞれ別の変遷をたどっているからですかね?
谷山:うん。モノは同じ時代にあっても、そのジャンルの中での小さな時代性というものがあって…きっと世の中の大きな時代性って、そういうモノや人の小さな時代性が集まってできると思います。
逆に「今こういう時代だからこういう表現をしよう」とすると、モノに合ってない変な服を着せちゃう時があるんです。例えば、流行っている言葉を使うのがコピーライティングで一番危険です。なぜなら流行ったものは必ず廃れるから、コピーにした時にはもう腐っちゃっている、ということがよくあります。おそらく世の中の名コピーと呼ばれているものを調べたら、その時の流行語を使ったものはほとんどないと思います。逆に流行語になったコピーの例はあるかもしれませんけど。
今回はここまでです。1回に収まりきらなかったのです!
次回の、後編では「広告の教育」や変化した「宣伝会議賞」についてお聞きします!
宣伝会議賞といえば、いよいよ締切が迫っていますね。山田孝之さん出演の『PS4』や大泉洋さん出演の『リクナビNEXT』、「トントントントンヒノノニトン」でお馴染み『ヒノノニトン』のCMを手掛け、今年の最終審査員を務める横澤宏一郎(BORDER)さんをゲストに迎えた〈広告×お笑い〉のライブを10/21に行うことになりました。内容は芸人たちが事前に出題されて書き上げたキャッチコピーとラジオCMを、横澤さんが評価をしてランキングを発表するというものです。
出演は僕と人力舎の芸人3名、ラジオCMでTCC新人賞を受賞したグランジの五明さんと遠山さんです。
只今僕の内面は、好きな広告関係のライブをやる楽しみと順位低くて恥をかくんじゃないかという不安で覆いつくされています。
ただ、1人でも多くのお笑いや広告が好きな方々に、芸人が全力で書いたコピーが舞台上で罵倒/称賛されるところを観てほしいです。
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