――月1回、行われている定例会では、どんな話をしているのですか。
内山 シーズン毎の新商品の計画や、各種デザインの確認といった実務的なことから、 店内POPや接客方法を含め、「ヒトツブカンロ」としてあるべき姿を常に刷り合わせています。
関本 普段から店頭にできるだけ多く足を運び、打ち合わせの場では、そのときに気になったことを何でもお伝えするようにしています。例えば、「店内にPOPが多すぎるのでは?」という気づきから入って、「POPで全部説明しようとせずに、わからないことがあったらスタッフに気軽に尋ねてもらえるような店舗の雰囲気はつくれないか?」という提案をしたこともありま す。
内山 SNSの使い方にも指摘が入ることがありますね。関本さんは、ヒトツブカ ンロのお母さんのような存在。アートディレクションというよりは、ブランドマネジメントをしていただいていると思っています。
――内山さんが関本さんとご一緒してよかったと思うのはどんなときですか。
内山 厳しく怒られるときです。私たちは、 発売日に間に合わせることを優先して、つい細かい部分で妥協してしまいそうになるのですが、関本さんはそれを許してくれない(笑)。でも、妥協の末に生まれた商品は、お客さまの心に刺さらない、ありきたりなものが多いのは確かです。最初にイメージした完成形に向けて、どれだけまっすぐに突き進んでいけるかということは、ブランドの存在を確固たるものにしていく上で重要なことだと思います。
関本 ダメなものをダメと言ったり、カンロの社内の人が誰も気にしないような細かい部分に気を配ったりすることは、社外にいる私だからこそ担える役割なのかなと思います。嫌われてしまっては困りますが、ヒトツブカンロのことを真剣に考えて、ブランドを形づくる一つひとつの要素を、デザインの視点を起点に細やかに考えていくことが必要だと考えています。
――カンロの次の100年に向けて、デザインやクリエイティブが貢献できることとは。
関本 ヒトツブカンロでも、これまでにたくさんの種類のお菓子をつくってきましたが、美味しくなかったことが一度もない。カンロは間違いなく、お菓子づくりのプロフェッショナルです。しかし、どんなに中身が良くても、人の目に最初に触れるのは店舗やパッケージ。カンロの技術やクリエイティビティが凝縮されたヒトツブカンロを、デザインの力で多くの方に伝えていくことには、大きな責任も感じています。企業本来の姿を今までにない方法で多くの方に伝えていく上で、デザインやデザイナーをうまく活用することは、有効な方法の一つだと思います。
内山 ヒトツブカンロの運営を通じて、「飴はギフトになる」という気づきを得られたことは、当社にとって大きな意義がありました。チョコレートや和菓子と異なり、飴は、それをとりまく「文化」がきちんと語られてこなかったと思います。歴史や製法、創業以来カンロが続けてきた糖質に関する研究成果などを発信することで、より多くの方に飴への興味・関心を持っていただきたい。それが、ひいてはカンロの企業ブランドの向上にもつながるのではないかと思います。
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