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データ・サイエンティストの使いかたを知っていますか?

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米ハーバード・ビジネス・レビュー誌が2012年、「21世紀で最も魅惑的な職業」として表現した「データ・サイエンティスト」。日本でもマーケティングやプロモーションで、業務におけるデータの重要性は増すばかりだ。では「データ・サイエンティスト」の協力をどのように得れば、成果を高めることができるだろうか。どんな人に発注、どうディレクションすれば力を発揮できるかを、グラフの原田博植社長が解説する。

Q. 「データ・サイエンティスト」が「誤解されている」ことは?
A. 「データ分析屋さん」ではない、ということです。

グラフ 代表取締役社長 原田博植氏
シンクタンク、外資ITベンチャー、リクルートにて、アナリストとして、データ分析を基軸とした事業推進に従事。データ・サイエンス組織を立ち上げ多事業のマネタイズに貢献。

原田博植氏:これは発注される企業にも、仕事を請ける側にも言えると思いますが、データ・サイエンティストは、「データ分析屋さん」ではありません。私は、「データ分析を事業戦略に活かしビジネス課題を解決する専門家」が真のデータ・サイエンティストだと考えています。

仮に、データ・サイエンティストに発注した際、分析結果しかもらえなかったり、事業に対する質問が浅かったり、組織間の業務をどうつなぐかに興味を示さないような印象を持たれたようでしたら、その時点で発注を再考されるのが良いかと思います。私はクライアントから、「依頼内容がズレているかも」とためらわれるより、「これデータで解決できないか?」と言っていただけるほうが嬉しいです。

つまりデータ・サイエンティストは、クライアントのまだ不明瞭な課題も、抽象度を上げて包括的に論点整理し、データ活用業務の要件定義に落とし込める能力が必要だと考えています。そのようにクライアントの課題に体ごと入っていく中で、仮に提示されたKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)でデータを分析するうちに、そもそもの設定が不適切だったということもありえます。

そうした場合、出過ぎたことかもしれませんが、「方向が間違っていませんか」と言えるのがいい仕事。少なくともクライアントにとっても、自分にとっても、ムダにならない仕事だと思います。

—つい、難しそうな数式やグラフを相手にする仕事かと思っていました。

原田氏:そういうイメージはあると思います。実際、そうしている時間も少なくはありません。

ただコンソール(管理端末)の画面をにらみながら「自分の仕事は分析だけ」と割り切りすぎてしまえるほど、データ・サイエンティストの仕事は画一的なものではありません。

映画『ソーシャル・ネットワーク』(2011年)で、(米フェイスブック創業者の)マーク・ザッカーバーグが、別れたガールフレンドの「エリカ」に、「ビデオゲームがんばって」と投げかけられるシーンがあります。ザッカーバーグがどれだけ成功しても、エリカの価値観にはなんの影響も及ばさなかったことを示すシーンです。

同じように、データ・サイエンティストが高級な分析に執着して画面に張りついていても、クライアントのニーズとズレていれば自己満足の遊びでしかありません。まさしくビデオゲーム。本人は一所懸命「分析」しているかもしれませんが、周りにはゲームに興じているようにしか見えないのです。そのことを、私たちデータ・サイエンティストは肝に銘じないといけません。できるだけ依頼主の話を吸収し、事業に貢献するため、データから解決策を探る人が、本来のデータ・サイエンティストだと思います。

それに、プロモーション分野に限ってみても、データは、消費者の嗜好のみに限らず、クライアント企業の社会的な印象のコンディション、景気や政治や天候などのマクロ環境の変数化など、解決のためのデータのかけ算は多岐にわたります。またデータというとオンライン広告がすぐ浮かびますが、マスメディアを用いた広告だって、データ分析の適用範囲になります。

つまり、まだまだデータ・サイエンティストが力を発揮できる土壌は多く残されているはずなのです。にもかかわらず、自分の業務領域を狭くみてしまうのは、つまらないな、と私は思います。

次ページ 「Q. 「データ・サイエンティスト」は今後も残る職業ですか?」へ続く