Q. データ・サイエンティストに対するディレクションの「正解」は?
A. 「提案要望書」をきちんと用意することです。
原田氏:「成功か/不成功か」明確にわかる発注かどうかが、そのまま「正解/不正解」につながります。「成功か/不成功か」を明らかにするためには、「提案要望書」がカギとなります。
「提案要望書」は、「リクエスト・フォー・プロポーザル(RFP)」と称することもあります。「RFP」は、システム開発などでは珍しくないものなのですが、データ・サイエンティスト相手だとちょっとタガがゆるくなり、用意されない傾向があるようです。
しかし、「RFP」があれば、単なる分析だけして、「こんな傾向が出ました」「で、何に使えるの?」というやり取りを避けられます。
—「提案要望書」は、どんなものを用意すればいいですか。
「提案要望書(RFP)」には、次のような項目があるとよいでしょう。
- データ分析を経て達成したい目的
- 目標とする成果(具体的にどうなれば目的が達成されたことになるか)
- 予算規模
- スケジュール、必要な期間
- 取り扱うデータ種類、数、分析を依頼したい範囲
- 納品物(分析だけでよいか、改善方法の提案か)
具体的に例を書き込むとこうなります。
- データ分析を経て達成したい目的=ECサイトの売上を伸ばしたい
- 目標とする成果(具体的にどうなば目的が達成されたことになるか)=売上を伸ばすための効果的な特典施策が判明する
- 予算規模=15万円〜3000万円
- スケジュール、必要な期間=3カ月
- 取り扱うデータ種類、数、分析を依頼したい範囲=サイト訪問者の行動履歴、会員属性、購買履歴
- 納品物(分析だけでよいか、改善方法の提案か)=具体的な特典施策の提案とその根拠まで
こうした提案要望書をきちんと用意するのはメンドウだと感じることもあるかもしれません。しかし、お互いにあとから「ああでもない」「こうでもない」というムダなやりとりが発生せず、結果的に、効率がよくなります。
もちろん用意するだけでなく、データ・サイエンティスト側に、「達成のためにはこのデータがあるとなおよい」「こんなこともできるはず」とアイデアを求めるべきです。
—専門用語が多くて、うまく会話になるか心配です。事前に調べておいたほうがいいでしょうか。
原田氏:用いる言葉を、発注主側がデータ・サイエンティストに合わせる必要はないと、私は思います。むしろ、その逆であるべきです。なので、話しはじめは、「なんとなくおかしいんだ」「なんとなく困っているんだ」からのスタートでもよいのです。
「まずは、社内にデータ分析を行う土壌をつくりたい」ということであれば、導入時の手ほどきを依頼するのも一手です。1カ月〜2カ月ていどの期間契約で、その企業の事業のサイズに応じて、適切なオープンツールを選び、どういうふうに使えばよいのかレクチャーまで含めてコンサルティングしてくれるはずです。
こうした、提案要望書のやりとりを通じて、「話が通じる人に発注する」というのが、発注の成否を分ける最もカンタンなルールかもしれません。
「話が通じる」というのが実際有効なのは、課題はおうおうにして、あいまいなものだからです。そのとき、一緒に考えられるか、自分の範囲はここまでと線を引くか。あいまいだからこそ、越境して、問題を見つけ、解決しようとしてくれるデータ・サイエンティストのほうが当然望ましい。社内人材以上に、ウェットで熱っぽく、課題解決に向かってくれる人がよいと思います。
—逆に、発注主には、どんな人にディレクションを務めてもらいたいですか?
原田氏:こちらからお願いしたいのは、僭越な言いかたですが、責任感の強い方にディレクションされたいものです。担当者を選定できるクラスの方は、ぜひ、当事者意識を持ってあたれる方を選んでいただきたい。そうすれば、専門知識が不足していても、きちんとデータ・サイエンティストとわたり合い、きちんと事業に貢献するよう、引っ張っていけると思います。
発注元が、何万人もいる大企業でも、何十人かの少数精鋭でも、仕事を請けるデータ・サイエンティストにとってのレポートラインは、担当となるその方1人だけですからね。
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