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#SXSW2017 マーケターも知っておきたい6つのトレンド②

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【前回】「#SXSW2017 アドパーソン&マーケターが知っておきたい6つのトレンド①」はこちら

(執筆者)
北村久美子 Kumiko Kitamura
AOI Pro. JAPAN FACTORY Co-Founder

Cannes Lions、D&AD等国内外の受賞多数。TIAA、ADFEST等の審査員を歴任。2005年にスタートした若手ディレクターの登竜門Fabulous Four(当時Remarkable Five)の創設メンバー。2015年、SXSWにてOfficial Event「JAPAN FACTORY」(当時JAPAN DAY)を設立、現在に至る。

 

4. 健康と薬を再定義する(REDEFINING HEALTH AND MEDICINE)

<要点>※SXSW公式サイト 本文引用
「自己モニターデバイスから人工的に組み替えられたDNAまで、人間の体は破壊と革命の新たな出発点にある。医療規範の枠組みにおいて「AIや遠隔医療」についての問題が立ちはだかる一方で、人工器具によって体の一部を補う技術やインプラント技術の発展は、遺伝子組み替えの期待と肩を並べるほど目を見張るものとなっている」

「医療」については、ここ数年SXSWで最も注目される分野となっている。2016年6月に、テキサス大学オースティン校・デルメディカルスクールが開校したこともあり、今年もハーバード大学医学大学院のRobert Green氏らによる「Sequence Me: Taking Personal Genomics Mainstream(私を配列して:パーソナル遺伝子科学をメインストリームへ)」、スタンフォード大学のWalter Greenleaf氏らによる「Mind the Machines: Neurotech and AI for Brain Health(機械には用心せよ:脳の健康に対する神経工学と人工知能)」、オックスフォード大学のGina Neff氏らによる「Self-Tracking: Hacks to Make Wearables Work for You(セルフトラッキング:ウェアラブルをハックしてあなたのために働かせる)」など、多くの意義深いセッションが行われた。

健康の再定義という意味では”Tech Industry”のトラックで「JAPAN FACTORY」がオーガナイズした、石川善樹博士による「You Are What AI Cooks: Personalization of Taste(あなたは、AIが調理したものでできている:味覚のパーソナライゼーション)」においても、味覚の世界を”Galaxy of Food”で表現し、AIが食べたいものをナビゲートする新システムを発表した。

石川善樹博士(写真右)が、AIが食べたいものをナビゲートする新システムを発表。

しかしながら「医療」分野で最も注目を集めたのは、何と言ってもInteractive Keynoteを務めたJennifer Doudna博士によるKeynoteと、Speaker of the EventおよびMeme of the Yearに選ばれた、Joe Biden前副大統領によるFeatured Session「The Urgency of Now: Launching the Biden Cancer Initiative(今緊急なこと:バイデン・ガン・イニシアティブの設立)」だ。

Jennifer Doudna博士は、UCバークレーにおいて、生物医学・保健学研究所の所長、分子生物学・細胞生物学・化学の教授を務め、ゲノム編集技術「CRISPERテクノロジー」の共同開発者として知られている。博士はセッションの中で、ゲノム編集CRISPERの内容と進化、医療規範に対する考え方について、次のように述べた。

ゲノム編集技術「CRISPERテクノロジー」の共同開発者として知られるJennifer Doudna博士。テクノロジーの活用に関する議論は、そこで起こり得る倫理的な問題に関する議論と両輪で進めていく必要があると述べた。

「CRISPERテクノロジーは、開発されてから5年しか経っておらず、まだ発展途上の技術だが、その成長が期待されている。例えば、蚊は伝染病を運ぶことで知られているが、CRISPERテクノロジーを活用すれば、この伝染病を食い止めるための遺伝子を蚊に運ばせることによって、拡大を防ぐこともできる。また、動物の臓器を人間の臓器に移植することもできるようになる。遺伝子操作には生殖細胞編集と体細胞編集の2種類がある。体細胞編集は現在医療の現場で使われているもので、後世にはその編集操作が受け継がれないものだ。一方、生殖細胞編集は未来の世代に受け継がれていくものだ。ガンなどの病気を治すための遺伝子操作技術に留まらず、さらに人間を改良するための技術としてこれから活用されていくだろう。我々はこれから、人間の進化さえ、自分たちで未来の世代をコントロールできるようになるかもしれないが、倫理的な問題に関する議論をメディアが適切に報じ続け、人々の意識を高め、議論を活発化させることが重要である」。

次ページ 「5. スタートアップの治世(STARTUPS REIGN)」へ続く