電通は27日、過重労働問題の解決に向けた「労働環境改革基本計画」の概要を発表した。1人あたりの総労働時間を2014年比で80%に減らすなどの目標を掲げ、具体策として人材採用のほか、サテライトオフィスの設置や在宅勤務制度の導入などの施策を盛り込んだ。
中途入社の正社員を50人、契約・派遣社員を224人すでに採用済み。今年度は新卒採用を含め、前期の1.5倍となる250人の正社員採用を予定している。不要な業務を棚卸しし改善する取り組みを全社で進めるほか、PCでの作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、12月末までに300工程の自動化を行う。サテライトオフィスの導入に向け9月から全国18カ所で効果検証を行うほか、在宅勤務制度の導入を進める。
電通は新入社員の過労自殺による問題を受け、22時から午前5時までの業務を原則禁止としている。各局にはHRM(人材マネジメント)担当局長補を置き、局員の時間管理や健康管理、ハラスメント防止などを担う。新入社員のケアや不調者、休職者の見守り体制も強化し、三六協定違反やハラスメント、過重労働が起きないようにする。
労働時間の短縮で生まれた時間を有効に使うため、連続休暇日数の大幅拡大や週休3日制移行を検討する。多様な働き方を容認し、勤務時間の長さで評価されないよう給与体系の見直しにも着手する。
同社はこれらの計画を2018年末までに成し遂げ、19年末には社員の労働時間を年間1800時間にすると掲げた。従業員の緊急増員やデジタル投資、オフィス改善など一連の施策で、今年度は70億円を投じる。
山本敏博社長は同日開いた会見で、これまで過重労働問題が是正されなかった要因について「労働時間を減らすことは、業務品質を落とすことだという意識が社員にあった。品質を上げたり、顧客の期待以上のものをつくろうというときに、自分やチームの時間を際限なく注入するという考え方は間違っていた」と振り返った。社員が良いコンディションで仕事に取り組む環境を整備することで、成果量を変えることなく労働時間の削減を成し遂げると強調した。
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