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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

「バズ狙い動画を卒業した後の進路は、質の高いドラマではないか」 — 資生堂・宣伝デザイン部 植木彩さんに聞いて考えた

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ターゲット像をかなり明確に設定している

まず商品のことを簡単に説明しましょう。このサイトを見るのが早いですね。

「スノービューティー2017」です。9月21日、限定発売の美白スキンケアパウダーです。パッケージもキラキラしていて素敵ですね。お値段は、うお!税込み7,020円(編集部調べ)です。けっこうな価格。

この商品は2014年に発売され、限定的に世に出した。意外にと言うか、かなり反響があって売れたので、翌年からコミュニケーションに力を入れようと植木さんが担当したそうです。実は当初からムービーを公開していて、2015年は二階堂ふみと星野源、2016年は再び二階堂ふみと窪田正孝の主演だった。

おっさんたる私が気付いたのが、今年になってからで、去年も一昨年も乙女たちの間では話題になってたんでしょうね。2年前に星野源を起用してたなんて、めざとい!高橋一生も交渉したのは去年で、スノービューティーはこれから来る男子をいち早く起用するブランドかも。つまり植木さんの審美眼がクオリティ高いということでしょう。

この商品は「願いをかける」をブランドコンセプトにしているそうです。予約して4カ月ぐらい待たないと手元に届かない商品であり、待つ時間も楽しみになる。願を掛けるように特別に買う商品、ということです。

そしてターゲットを「シンデレラ願望女子」と設定。年代を問わず10代でも20代でも、50代でも当てはまる人はいるはずだと考えているそうです。積極的に情報を取りに行って、新しいものを次々に使うタイプではなく、どちらかと言うと受け身。派手なものを面白がるよりじっくりと楽しむ。そして、いつか王子さまが来てくれるといいなと思っている。だからシンデレラ願望、というわけです。

ブランドコンセプトが明確である。ターゲット像が、年齢ではなく志向や感じ方でとらえられている。そんなことを知ってからもう一度ムービーを見ると、商品性やターゲット感覚が張り巡らされていることに気づくはずです。単純に商品特徴をメッセージするのではなく、ストーリーを見るうちに、もやもやと感じるようにできているのです。

では、このムービーをどう世の中に送り出したのでしょう。それを、チャートで示してくれました。

ストーリー動画をネットに置いてあとはバズ次第、ではなく、商品動画もちゃんとつくって購入までのコミュニケーションの全体像を設計していたわけです。これを、コピーライターの植木さんと、コミュニケーションプランナーの同僚と2人がチームをリードして詰めていったそうです。それも新鮮に感じました。

これを具体化したらこうなった、というのがこの図です。

この図にある一つひとつの施策を、「シンデレラ願望女子」にこうアプローチしたらこう広がっていくはず、と考えて設計していったのだそうです。

漠然と世に出せば面白さで、なんとなく不特定多数がバズるんじゃないか、といういい加減なことではない。ターゲット像を明確にしたうえで、その人びとに対してはこうアプローチしたら反応してくれるんじゃないか、それをコツコツと積み重ねていく。

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