コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

世界の新しい常識「シンギュラリティー」とは?【電通デザイントーク・後編】

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日本はシンギュラリティーで世界をリードできるか

日塔:シンギュラリティー大学では、未来をどのように描いていますか。

ジョバン・レボレド
東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員、シンギュラリティー大学ティーチングフェロー、Exponential Japan代表

メキシコ出身・米国籍。2002年にJICA研修員として日本に留学、その後04年文科省奨学生として再来日し、09年に金沢大学でPh.Dを取得。ロボティクスや人工知能に関する数々の起業経験があり、日本やシリコンバレー、メキシコの数多くのベンチャー企業のアドバイザーを務める。 シンギュラリティー大学のメインプログラムであるGSP(グローバル・ソリューション・プログラム)1期生で、その歴史と全貌を知る数少ない一人。

ジョバン:人工知能やロボットによって人間の職業が奪われてしまうため、シンギュラリティーは怖いというイメージが先行しています。しかし、国や政府が有効に活用していくという側面もあります。

例えば、病気を予防する「AIセンター」が生まれるかもしれません。怖いことばかりではない、と伝えたいですね。

斎藤:シリコンバレーにあるシンギュラリティー大学は、人工知能だけでなく、エクスポネンシャル・テクノロジーズといわれる約20個のテクノロジーによる相乗効果によって社会変革が起きると主張しています。

残念に思うのは、今後、垂直成長することが分かっているバーチャルリアリティーやドローン、3Dプリンター業界で、日本企業の名前をあまり聞かないことです。この状況を打開するためには、何が必要なのでしょうか。

井上 智洋
駒澤大学経済学部准教授。経済学博士

マクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論、人工知能と経済学の関係を研究するパイオニア。2016年に書籍『人工知能と経済の未来 ~2030年雇用大崩壊』(文春新書)が大きな話題になり、17年7月には新著『人工超知能 ~生命と機械の間にあるもの』(秀和システム)を発表。14年から「AI社会論研究会」を開催しており、シンギュラリティーを含む社会系の人工知能コミュニティーの中心人物。『日経ビジネス』誌の2016年版の「次代を創る100人」に選出された。

井上:世界の主要国の中で、大人の知的好奇心のレベルを調査したら、日本は韓国と並んでビリの方でした。国語の読解力や計算能力は世界トップクラスなのに、ITスキルはかなり低い。20~30年間ごとに産業革命が起こるような時代にあって、大人の知的好奇心のレベルが低いことは、かなり不利だと思います。

特に、文系の人たちの科学技術に対する知的好奇心は、ほとんどありません。これは本当に困ったことです。理系の人たちだけがテクノロジーを使うだけでは、ビジネスは成り立ちません。文系の人にも、科学技術に対して興味を持ってもらう必要があります。

さらに、もう1点。デフレによる失われた20年間のせいか、日本人にはベンチャースピリットがほとんどありません。こうしたいくつかの要因によって、新しいビジネスが立ち上がりづらい状況が生まれていると思います。

松田:従来の人生モデルは、20年間勉強をした後に40年間仕事でした。しかし、ものすごいスピードでイノベーションが起きている今、大学で学んだことは10年先、20年先には全く通用しなくなります。では、どうすればいいのか。

ハラリ氏は「勉強につぐ勉強。一生勉強だ」と言っています。つまり、常にマインドセットを変えなければいけません。

僕は現在74歳ですが、70歳から人工知能や機械学習の研究を始めました。僕の昔の専門は宇宙物理学でしたが、今はそれを一切やめて新しい研究に取り組んでいます。

学生からは、こう言われるんです。「先生は宇宙物理の分野で、そこそこいい成果を出しているのに、なぜ今さら他のことに取り組むのですか」と。

その理由は、「新しいことは面白いから」です。そこで逆に「なぜ君は新しいことに挑戦しないのだ」と聞くのです。「そんなマインドセットでは、日本は滅びるよ」と。

ジョバン:すばらしい!私は外国人という立場で見ていて、日本のイノベーションは本当に進んでいると思います。

しかし、残念でならないのは、それが日本国内だけのもので、グローバルではないということです。もっと外に出れば、日本はもっとすごいビジネスを展開できます。

日塔:そういう刺激的な場をつくりたいと思ったことが、このパネルディスカッションの発端です。人間の能力も指数関数的に上がっていける人たちと、そうでない人たちに二極化していくと考えると、すごく怖いです。

次ページ 「知能が二極化していく可能性」へ続く

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