広告が嫌われる要因は、「認知」のみを重視するKPI
従来のマスマーケティングでは、一番のKPIが「認知」獲得であることが多かったと思います。そうすると、当然ながらマスメディアを通じた広告露出が一番効率の良い選択肢になります。
逆に言うと、デジタルマーケティングの役割は、認知よりも先のステップに顧客を進めることと、定義すると良いのではないかと思います。
マーケティング4.0では、BAR(ブランド推奨率)という新しい測定指標を導入し、認知から推奨までの全ての段階で、コンバージョン率の測定を提案しています。
そして、それぞれのステップにおけるボトルネックを克服するための手段が「コンテンツマーケティング」や「ロイヤルティプログラム」であると論じているのです。
翻ってみると、ネット広告がユーザーから嫌われるようになった、ひとつの要因が「認知」のみを重視するKPI設定にあったように感じます。
「認知」を最大化するために、ネット広告の配信量を最大化するからこそ、ユーザーが邪魔だと思うような形で、動画広告を記事の上から強制的に表示させたり、ポップアップで表示されたりする広告を表示してしまっているはずです。
これをコトラー教授が定義したように、ネット広告の「究極の目標は顧客を推奨者にすること」と考えてみたらどうでしょうか。
ユーザーに嫌がられるようなポップアップ型広告や、どこまでも追いかけてくるリターゲティング広告のバナーなどのノイズ型のネット広告で、認知ばかりを追いかけて顧客が推奨者から批判者に変わってしまうよりも、コンテンツとしての動画やネイティブアド、スポンサードコンテンツに取り組み、顧客が感心してくれる方が良いと考えられるのではないでしょうか。
筆者が先日参加したイベントの中で、登壇者の一人が「思い切ってリターゲティングの広告を止めてみたら、短期的に売上は下がったものの、結局、元に戻った」という話をしていました。短期的には効果があるように見えたけれども、実は中長期的にはあまり意味は無かったという趣旨の話でした。
同様の話は以前「『誕生日おめでとう、これ買って!』メールはアリなのか、ナシなのか」というコラムでもご紹介しましたが、実は、嫌われる「宣伝行為」ばかりのネット広告では、そのネット広告で増えた売上と同じぐらい、皆さんの会社のことを嫌いになった見込顧客がいる可能性もあるかもしれないわけです。
くどいようですが、改めて申し上げます。
広告主の皆さん、今年はぜひネットでも「宣伝行為」が効くという考えをあえて、あきらめてみて、ネット広告やデジタルマーケティングを「顧客を推奨者にする」というマーケティング4.0の究極の目標を達成するための手段として考えてみてはどうでしょうか。
これからの企業発展には顧客との関係を深めることが必要です。『顧客視点の企業戦略 -アンバサダープログラム的思考-』は、企業とファンが一緒になって課題を解決したり、マーケティング活動を行ったりする方法論や事例について解説した書籍です。今までのマス・マーケティングに加えて無理なく実行できる点にも特徴があります。この機会に是非ともお買い求めください。
はじめに:「新たなる現実」を受け入れて、次へ向かう指標としての顧客視点/第1章:顧客視点がないと「マーケティング」ではない/第2章:マーケティングを顧客視点で組み替える/第3章:企業の目的は「顧客を創造する顧客」の創造である/第4章:顧客と一緒にマーケティングする/実践レポート:アンバサダーの体験設計(上田怜史)/第5章:アンバサダーが企業にもたらす変化/第6章:顧客視点経営がビジネスを変える
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