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急いでマーケティングリサーチを開始してはならない?!

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蛭川速

データ分析をストーリーで学ぶ書籍『社内外に眠るデータをどう生かすか ~データに意味を見出す着眼点~』が発売になりました。今回は、発売を記念して、本書のストーリーを少しだけアドタイで公開していきたいと思います。日々、データに向き合い、企画やプレゼンを行っている方は、主人公の遼平に共感しながらお楽しみください。

前回のストーリーはこちら

アンケート調査は聞いたことしか分からない

議論を重ね、新商品のターゲットは30~50代前半の子どもがいる共稼ぎ世帯、とした。ターゲット層のニーズとして、自分がいない時間でも子どもにはバランス良く栄養を補給させたい、そのまま食べても少し手を加えてもおいしくいただける菓子を子どもに与えたい、摂取することによる効能や効果的な摂取方法を分かった上で必要な栄養素を摂取させたい、という仮説を立てた。

仮説検証にあたってマーケティング課の3人は会議室に集まった。

「来週を目途に仮説検証のためのマーケティングリサーチを実施していきたいと考えている」

「いよいよこれまで構築してきた仮説を検証する段階ですね。ワクワクするわ」

「面白いですね。自分達の考えがターゲットにどの程度届くかですからね。テストみたいです」

「リサーチにもいろいろな手法がありますが、今回はどのような手法をとりますか?」

「コンセプトテストは可能な限り定量的に結果を導きたい。このようなリサーチは社内の関心を引くことが多いから、データが独り歩きしてしまうことがある」

「グループインタビューで10名に聞くよりも、アンケートで100人に聞いた方が説得力も増しますよね」

「そうだ。インタビューは仮説がなかなか立てられない時や、顧客の状況が見えづらい時に有効だ。今回は葵さんの姉さんや敦の義姉さんにも協力してもらっているので、定性調査は割愛することができた」

「現時点でしなくてはならないのは、仮説がどの程度ターゲットの状況に合致しているか、ということですね」

「勉強になります。ありがとうございます。で、アンケートはどのように?」敦は遼平に尋ねた。

「待て待て!いいかこの段階でアンケート項目を考えると、間違えなく失敗する。得るものの少ない調査となってしまうぞ」

「そんなぁ~失敗なんて・・・」

「リサーチは逆ルートで展開するべきなんだ。肝に銘じておいて欲しいんだが、【アンケートは聞いたことしか分からない】これが非常に重要だ」

「馬鹿にしないでくださいよ~。それくらい分かっていますって。AIじゃないんですから・・・」

「皆そう言うんだが、調査項目を考える、いわゆる調査設計から考え始めると、必ずと言っていいほど後から『あれも聞けば良かった、こう聞けば良かった』という声が聴かれる」

「良くありますね。どうしてあーなっちゃうんでしょうね?」
過去に経験のある葵が頷いた。

「人はそれほど論理的に行動できないということだと思う。これまでの仮説設定やアイデア発想の苦労を忘れて目の前の仕事(作業)に没頭してしまう。せっかく考えた仮説をどう検証したら良いのか設問を考える段階では忘れてしまうんだ」

「なるほど~。このチャートですね。思考の順か。まずはどのように考察したら良いか、結論を導いていけば良いかを先回りするってことですね」

「そうだ!ここが一番大事だ。予定調和のように思えるかもしれないが、まずは最終結論をどのように導くかを考えておくってことだ。そしてその結論をどのような分析で導くかを検討するんだ」

遼平は力強く言った。

「そうですね。やりたい分析が後から出てきて、設問や回答方法が適切でないということは良くありますものね」

「そう。だから 考察 → 分析 → 設計 という順で考えていくんだ」


【解説】アンケート調査で最も大事なのは設計といっても過言ではありません。いくら高度な分析方法を行っても対象者に漏れがあったり、聞き方が適切でなければ有効な結果を得ることはできないからです。
料理と同じで食材を揃えた後で、あれも必要だったと考えても後の祭りです。調理のテクニックと食材、両方が大事ということです。
アンケート調査によって、何を検証したいのか、検証する為にはどのような分析方法が適しているのかを調査をするまえに、しっかりと考えておくことが必要です。

次ページ 「調査を設計する」へ続く