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コラム

マーケティングを“別名保存”する

絵に描いたモチで終わらないフレームワーク、「マーケティングの4D」

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【前回】「マーケティングの「4P」って、本当に実務で使ったことありますか?」はこちら

画像提供:123RF

前回の本コラムでは、今日のマーケティング組織の実務により即した、新しいフレームワークである「マーケティングの4D」というプロセス分解ツールを紹介しました。今回は、この「4D」についてさらに詳しく説明をしていきたいと思います。

4Dは「Define」「Draw」「Deliver」「Distill」から構成されます。ひとつずつ、その考え方を説明していきます。

マーケティング企画を進めていく際、まずはじめにこの「4D」すべてについて大方針を策定し担当部署を割り当てることで、検討事項の抜け漏れと部署をまたいだ重複を防ぐことができる。

1. Define: 価値の定義では、商品のSTP(Segmentaion , Targeting , Positioning)を定義して、USP(Unique Selling Proposition:競合他社の商品に対して自社商品のユニークな点)を明確にします。研究開発部門とマーケティング部門の協働で行われたり、企業によっては商品企画部門が独立して存在しこれを担います。マーケティングの「4P」におけるProductから、よりマーケティングの関与が深い「商品コンセプト」を切り出したイメージです。

2. Draw:価値の実現・周知では、1.で定義した価値を実際につくり出し、周知します(=「描き出す」)。機能的な価値はR&Dや生産部門の技術力により実現されますが、情緒的な価値は主にマーケティング活動により実現され、マーケティングコミュニケーション部門が主な担い手となります。広告宣伝は価値を伝える場面であると同時に、情緒的な価値を作り出す役割も担っており、価値の周知と価値の実現はマーケティングプロセスにおいて不可分です。一言で言うと「ブランディング」になりますが、その意味と境界がより明確に定義されています。

3. Deliver :価値の受け渡しでは、2.で実現した価値を消費者に受け渡すべく、最終的に商品を購入してもらうためのプッシュを行い、販売のクロージングを行います。店頭における販売促進やトレードマーケティングがここに該当し、組織によっては営業部門の中のマーケティング機能がここを担っている場合もあるでしょう。

4.Distill :価値の蒸溜では、消費者に受け渡された価値が、消費者の中で蒸留され、ロリヤリティへと姿を変えます。それは最終的に、ポジティブな口コミや他者への推奨、リピート購入につながってビジネスにインパクトをもたらします。CRMの専任チームがあればそこが責任部署になることが多いでしょうが、データ分析チームやカスタマーサポートチーム、そもそもの商品コンセプトなども密接に関係してくるため、クロスファンクショナルな調整が必須となります。

「新商品のローンチキャンペーン」など実際のマーケティング企画を進めていく際は、「4D」の全てについて方針と具体的な検討領域を策定し、どこの部署とどこの部署で何を担当するのかを明確にします。例えば、以下のような整理をすれば、それだけで1ページ程度の簡単な企画書が完成します。

例:新しいビジネスモデル「使い捨て腕時計」のマーケティング計画を「4D」で整理

Design:価値の定義
【担当:リサーチ部門、商品開発部門、研究開発部門】
使い捨てコンタクトレンズのような、使い捨ての腕時計を開発。月額制で月1回まで交換可能。新しいものに交換したくなったら、あるいは小容量の電池が切れたら郵送で回収してリサイクル。豊富なデザインで毎月新しい時計を楽しみたいファッショニスタがターゲット。

Draw:価値の周知・実現
【担当:マーケティングコミュニケーション部門】
ビジネスモデル自体をブランド化し、その認知と便益の理解促進を図る。あわせて、このサービスの利用者はファッションの最先端、というイメージの定着を図る。使い捨て=大量消費・大量廃棄というネガティブなイメージがつかないよう、リサイクルの仕組みもしっかりアピール。

Deliver:価値の伝達
【担当:マーケティングコミュニケーション部門、トレードマーケティング部門】
立ち上げ時のトライアル促進を図るため、初月無料などの割引キャンペーンを検討。家電量販店には商品販売による粗利のほか、顧客獲得のリベートとしてのLTVから逆算した顧客獲得報酬がレベニューになる仕組みを検討。

Distill:価値の蒸留
【担当:商品開発部門、カスタマーサポート部門】
継続利用に応じて選べる時計が増える、交換できる回数が増える、などのサービスを検討。SNSやファンミーティングなどで愛用者のコミュニティーを育てる。カスタマーサポートに寄せられた利用者の声は商品開発部門に伝え、早い商品開発サイクルを活かして顧客のフィードバックをクイックに商品に取り込む姿勢を示す。

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