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電通・博報堂社長が初対談「広告業界、広告会社はもっとポジティブに変わっていくべき」

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—これから広告会社はどう変化していくべきだと思いますか?

山本:広告という仕事を通じて獲得して磨いてきたはずの、私たち能力を拡張し、活用して、応用する。その場面を広げていくのが、これからの広告会社に必要な変化だと思います。ここには広告に携わっている人が多くいるのであえて申し上げますが、そのためには広告・広告業界というものの社会的な存在価値をもう一度問い直す必要があると思います。それは必要なのか、役に立っているのか。「広告は役にたっている」という自覚にたどりついたなら、その自覚を持って変わっていく。ものすごく大きく変わっていくことで、広告・広告業界・広告会社がこれまで以上に世の中の役に立つように変貌していくことを考えていかなくてはいけない。私たちの本質的な価値、本質的な存在意義に立ち返って、世の中の役に立てるように変わっていきたいと思います。

水島:今お話を伺って、広告会社がどういう意味あいをもっとつくっていくか重要だと思います。僕が入社した頃は、お得意先の会社の入り口に「広告お断り」という紙が貼ってあった時代。それがだんだんいろいろな面でお役に立てるようになってきた。そうはいっても、まだまだ宣伝部の方への貢献となる仕事が多いのですが。でも、だんだんとお得意先のどこに貢献するかが変わってきていると思うんです。ブランドを預かっている事業部の仕事も増えています。

最近で言えば、CMO(チーフ・マーケティングオフィサー)を置く会社も増えているので、そういう方との向き合う仕事や経営に関する相談も増えています。そういう意味では、我々がやっていること、我々に求められていることの意味あいが少しずつ変わり、未来に向けて少しずつ進化していると思います。

その中で我々が培ってきたものは、やはりクリエイティビティに尽きます。それはクリエイターのクリエイティブというよりは、会社の機能としてクリエイティビティを持って世の中の価値をつくっていく、それがそもそもの広告会社のDNA。それがどのように求められていくのか、もしくは我々が作っている中でどのように意味合いを持たせることができるのかが重要だと思っています。もちろん今まで通りの旧来的な仕事やコミュニケーションも続けなくてはいけません。

日本や海外の企業が色々な意味でデジタルトランスフォーメションによって事業構造を変えています。そのタイミングで、我々がもしかしたらイノベーションの領域でご一緒することで新たな価値を作ることができるかもしれない。広告会社がこれまでとは違う形でお役に立てることが、ひとつの夢でもありますし、これからやっていかなくてはいけないことだと思っています。根源的に忘れてはいけないことは、ワクワクドキドキすること。広告会社がイノベーションや事業開発に加わることで、「こんなことを考えるんだ!」というお得意先も驚くようなサプライズをもたらすことが大事で、さらにはそれが世の中にサプライズをもたらすことにもつながります。それこそが広告会社がもたらす機能で、もっと世の中の役に立ち、もっともっと面白いことをやっていけるとよいと思っています。

—社長という立場ではなく、ひとりの広告人として意識していること、広告人が持つべきプロ意識を教えてください。

水島:広告業界、広告会社はもっとポジティブに変わっていかなくてはいけない。自分たちができる仕事も増やしていかなくてはいけない、という意味で言うと、良い意味で無限の可能性があると思うんです。自分自身、広告の仕事は面白いと思って入社したし、そこをいかに面白がることができるかが重要だと思います。どの産業もそうかもしれませんが、どう変わっていくのか、どちらにいくと面白がれるのかという好奇心が一番重要かなと思います。よその業界に行ってしまう若手もいますが、自分の中に好奇心があれば、自分の会社の中で面白いことがいろいろとできると思うんです。何かが起きている中に行くよりは、無限の可能性があり、その中で比較的何をやってもいいということが広告会社の良さだと思うので。その中で自分の好奇心を発揮しながら、熱狂的にチャレンジしていくことが一番大事ではないかと思います。

山本:同感です。そうであり続けるために、これから特に重要になる、広告人が持つべきことは3つあると思います。

一つは人に向かっていく、社会に向かっていくことです。人の心を動かす、社会に影響を与えることはこれまでもやってきたことで、今後も変わらないと思いますが、人に向かっていく部分については技術的にできることがどんどん増えています。人に向かっていく、社会に向かっていくことを仕事にするからには覚悟、洞察、倫理観、謙虚さ、企て、野心が必要です。人に向かっていくことについては人の人生、社会に関わる度合いが高くなってくるので、今後ますます自覚と覚悟が求められます。

もう一つの側面は、広告は事業活動のプロセスの一つであり、その一つの役割を担っているということ。事業会社からすれば、勘定科目のひとつに過ぎない。広告と広報の境目がなくなり、かつて広告でやっていたことを広報でやるようになったりと変化している。その中で、事業やビジネス全体から広告をとらえる視座や視野を持つことが大事になります。そうしないと、広告だけが事業全体から乖離してしまうことになるでしょう。

3つ目は、そんな時代ですから成功体験や過去のメソッドを捨てる、という思い切りが必要です。それらは強い情熱と意欲をもって、毎日、常に捨てていかなければいけない。その3つを持つことが、水島社長がおっしゃるように、楽しくやろうよ、面白くいこうよ、人がやらないことやろうよということに向かっていくのだと思います。

次ページ 「ご自身に課しているルールはありますか?」へ続く