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電通・博報堂社長が初対談「広告業界、広告会社はもっとポジティブに変わっていくべき」

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5月14日から東京六本木・東京ミッドタウンで始まった「Advertising Week Asia2018」。初日の基調講演に登壇したのは、博報堂代表取締役社長 水島正幸氏と電通代表取締役社長執行役員 山本敏博氏だ。広告業界初となる社長対談が実現した。テレビ局出身の山本社長、営業局出身の水島社長、二人は現在、広告をどのようにとらえ、広告の未来についてどのように考えているのか、レポートする。

—お二人にとって広告とは?社長というよりも一広告人としての考えを聞かせてください。

山本:僕にとって広告は仕事で、最大の関心事。僕が考える広告の機能は、昔も今も、そしてこれからも変わりません。広告の対象物は商品やサービスや企業、非営利団体、時には考え方や意見など、いろいろとあります。個人や社会の、その広告の対象物における価値や評価が前よりもよりよく変わること、それこそが広告の機能であると考えています。

知らなかったものを知ってもらうことが広告の第一歩ではありますが、知っているけれど自分とは関係ない、知っているけれど自分にとっての価値がそんなにイメージできないなと思っている。あるいは自分には関係ないと思っているものであっても、自分にとって価値があるのではないかと、新しい価値を発見してもらうこと。そして、その価値を高めることが広告にとっての大事な機能。

水島:市場をつくったり、価値をつくることは、広告にとって重要な役割。山本社長の話を受けると、自分にとってそれがどう関係するのか、自分ごと化する回路が広告だと思います。平たく言うと、人の心を動かし、商品を動かすことが広告の重要な役割だと思っています。商品が売れることで世の中が動いていくわけですから。

もう一つに、広告の重要な機能としてつなげていくということがあると思います。長年、営業という職種についていたこともありますが、企業と商品と生活者をコミュニケーションでつなげていくことが広告の役割。さまざまな企業による研究など、サイエンスとアートをつなげることもある。時には広告主と媒体社をつなげることも。ブランドをつくることも生活者の気持ちにつなげていくこともそうです。気持ちや商品を動かすこと、さまざまなものをつなげること、これが自分がこれまでやってきた広告と言えます。

—これから広告はどうなっていくと思いますか。

水島:僕が入社した1980年代は「ザ・広告」の時代。グラフィックの1枚絵に素晴らしいコピーがついていたり、テレビCMも丹念につくられていました。そんな「ザ・広告」の時代を経て、キャンペーンの時代に。商品の新発売やリニューアル時にさまざまなメディアを活用しながら、どうやってピークをつくるかということが重視されるようになりました。さらに90年後半にはブランドという概念が生まれ、ブランディングは広告において重要な役割を担うようになりました。またデジタル化が進む中で、昨今は統合コミュニケーションが求められています。このように広告は時代とともに変わってきたわけで、これからもますます広告は変わっていくと思います。変化していくことは広告業界の良さだと思います。

今後について言うならば、データ。生活者のデータが瞬時に、しかも膨大につぶさに取れるようになり、広告主も広告会社もこれまでよりいろいろなことがわかるようになったことで、これまで以上にレベルの高いサービスを提供しなくてはいけなくなっています。また、受け手のコミュニケーションを求めるレベルも上がってきています。普通のキャンペーンや統合コミュニケーションだけではなく、アプリサービスや商品の開発も含めて、広告というものが定義し直されるように感じています。

併せてメディアもどんどん変わってきています。デジタル化や個別のコミュニケーションはもちろん、最近ではIoTの広がりにより、町も家もすべてがメディアになり、あらゆるところでコミュニケーションができるようになっています。メディアがあれば、そこには必ずコンテンツもできるし、サービスもできる。こうした事も含めて「これも広告なんだ」と大きくとらえて、それを自分たちの仕事にしていかなくてはいけないし、そういう状況をもっと面白がった方がいいんじゃないかなと思います。

山本:いまから始まる「Advertising Week」も、広告がどう変わるかということがすべてのイシューとして語られていくと思います。社会がどう変わるか、それに対応して広告もどう変わるか、ということに考え抜いて具体的に対処していくことが必要です。水島社長がおっしゃったように、考え抜いて具体的に対処することが大事だと、僕も思います。

しかしもう一方で大事なのは広告をどう変えていくのかという意志の問題。世の中が変わっていくことに対処していくだけでは、後手に回ってしまうかもしれない。下手をすると広告の本質的な機能を見失うかもしれない。広告の機能は変わらない。それでも変わっていく社会の中で、どういうふうに広告をしようとしているのか、という我々広告を仕事としている人間の意志が大事になると思います。

私たちが広告という仕事を通じて、獲得して磨いてきた能力が変わって行く時代の中で一番活かせるやり方、それは何であるのかを考えながら、広告をいまよりもっと質の高いもの、もっと効果の高いもの、もっと効率のいいもの、もっと精緻なもの、あるいはもっと拡張できるもの、あるいはもっと楽しいもの、もっと美しいもの、もっと力強いものに変えていくんだという意志がないと、ただ後手に回って劣化していくことになる。あるいはもともと自分たちの機能を磨くためにつくったはずの中間指標を目的化してしまい、そのことで本質的な機能を失い、迷走する恐れがある。未来がどうなるかはわからないけれど、時代がどう変わっても自分たちがどういう意志を持つかということが大事だと思います。

次ページ 「これから広告会社はどう変化していくべきだと思いますか?」へ続く