<参加者>
暦本純一 氏
東京大学 教授/ソニーコンピュータサイエンス研究所 副所長(写真中)
鈴木堅之 氏
TESS 代表取締役(写真左)
近山知史 氏
TBWA\HAKUHODO シニアクリティブディレクター(写真右)
昨年、ACC賞に創設されたクリエイティブイノベーション部門。応募対象は、「未来を創り出す、世の中を動かす可能性のあるアイデア×テクノロジーで生み出されたプロダクト・サービス・プロトタイプ」。世の中に気づかれていなかった革新的な技術を見出し、人と技術がつながり合える場としてのACC賞について、暦本審査委員長と昨年グランプリ受賞のCOGYチーム(鈴木堅之氏、近山知史氏)が対談しました。
希望のある道筋をサポートする、それが技術の役割
暦本:
昨年初めてACC賞に審査委員長として参加しましたが、私としては広告の賞という意識が全然なくて、この部門は基本的に“イノベーションの賞”だと捉えているんです。審査では、とにかくテクノロジーがそこにあり、社会に根づくプロセスをきちんと踏んでいるかを重視しました。テクノロジーと言っても、既に商品として市場に出ているものもあれば、まだまだ原型のようなものもある。まだ原型でも、この先に大きな可能性があるなというものを見出したいと思っていたんですね。だから大学で研究している方々に是非応募してくださいという声がけをしてきました。実際に大学からも非常におもしろい作品を出していただけたので、今後もこういったところを後押しできたらと期待しています。
昨年グランプリを獲ったCOGYについては、まず形がとても気に入った。車いすの既成概念を打ち破るデザイン性であり、足で動かすというところで革新性がある。歩行が困難な人でもほんの少しでも動けば、その反射を使ってもう一度自分の足で動けるようになる、という“道筋”があるところに非常に社会的意味が大きい。私の父も車いすを使っているのですが、COGYに乗れば単に運ばれる人というより、自分の力で動こうとするのをサポートできる。それが技術の社会的な役割だと思ったんです。今後日本は高齢化社会が進み、これまで以上に非常に多くの方が車椅子を使うことになる。そういう時代に、自分で動けるようになるなら挑戦したいという希望があれば、それをサポートすることはとても重要です。


