コラム

デザイン思考の事業創造 〜関係性をデザインする、これからのブランド戦略〜

アマゾン、Uberとの協業で実現するトヨタの新構想 事業構造はカタチを変える-③

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1回目2回目のコラムでは、今起きている産業構造の変化の輪郭を、トヨタ自動車CES2018における発表内容「e-Palette」を題材に触れて来ました。3回目は、トヨタ自動車が目指す「e-Palette」による新しい社会の実現を、どの様なスキームで実現しようとしているのかについて触れていきたいと思います。

1回目コラム:事業構造はカタチを変える-① トヨタが示した新ビジョン、モノづくりからサービスブランドへ
2回目コラム:物流と都市の概念を拡張する、トヨタの新ビジョン 事業構造はカタチを変える-②

e-Paletteの発表内容は以下映像をご覧ください。

全体概念

 

個別機能

 

トヨタ自動車はこの構想を参加型のオープンプラットフォームで実現しようとしています。トヨタ自動車がこの構想の実現に向けて協業する企業は、2018年1月CESでの発表時点では、「モビリティ・サービス・パートナー」としてAmazon.com, Inc.、Didi Chuxing(中国版Uber)、Pizza Hut, LLC、Uber Technologies, Inc.、「技術パートナー」としてDidi Chuxing、マツダ株式会社、Uber Technologies, Inc.、と発表しています。

自動運転社会を実現するためには、3つの不可欠なデジタルテクノロジーがあります。1つめが「IoT」です。自動運転車はネットに接続され、搭載されたセンサーが、道路状況や周辺の状況を吸い上げ、データセンターに情報を蓄積していきます。

2つめが「ビッグデータ」です。ビッグデータには、各車両からデータセンターに集められたリアルタイムな車両状況データや、地図データ、交通データ、ドライバーの状況データなど様々なデータが蓄積されます。これらのデータ量は多種多量なほど正確性が向上し、蓄積されたデータのパターンを解析することで、少し先の未来にも共通するパターンが予測できるようになります。

3つめが「AI」です。自動車をどの様に走らせるかをAIが司ります。プラットフォームビジネスには、多種多量のデータから構成されるビッグデータ、ビッグデータを利用して利用者にリアルタイムで適切なサービスの提供判断をするAI、ビッグデータに多種多量のデータを蓄積するためのセンサー(IoT端末)の3つのテクノロジーが不可欠となります。

トヨタ自動車は、この3つのデジタルテクノロジーを確保していくために、各分野のリーディングカンパニーと協業していくことを発表しています。トヨタ自動車はさらに、サービスプラットフォーム上の技術を公開し、第三者が自動運転開発に参加できる仕組みや、「e-Palette」をビジネス目的で利用する利用者が独自のサービスカスタマイズを行える様にリソースを公開するとしています。

未来のビジネス開発において「参加・協業」は重要になっており、このサービスプラットフォームにあらかじめその思想が組み込まれていることも、発表内容が市場から評価された要因です。

最後に、車の売り方に関してふれてみたいと思います。トヨタ自動車は自動車メーカーとして車を顧客に販売することで成長してきました。しかし、正確にいうとトヨタ自動車の販売先は一般顧客ではなくディーラーです。今後トヨタ自動車はこの「e-Palette」を製造してディーラーに販売し、顧客はディーラーから「e-Palette」を購入するという事業が継続するのでしょうか。

トヨタ自動車は今回の発表の中で、「e-Palette」は販売ではなくプラットフォームからの利用サービスで展開していくとしています。プラットフォーム上では、保険や決済サービスも搭載するとあるので、顧客は事実上ワンクリックで「e-Palette」の利用を開始することができます。では、これまで発展を共にしてきたディーラーはどうなるかと言うと、高度かつ高頻度なメンテナスを実施してくパートナーとして構想の構造体に入っています。

 

このコラムの冒頭でトヨタ自動車の発表内容を取り上げたのは、現在進行しているデジタルによる産業構造の変革において、従来型の企業が対応を求められる様々な要素が、極論ではあるにせよこの発表の中に網羅されているからです。

例えば、新しい顧客「ミレニアル世代」がリードするシェアリング・エコノミーへのシフトに対応するために、メーカーはモノつくりからサービスへシフトしなければならないということ。例えば、AI、IoT、ビッグデータの時代の到来に向けて、全てのサービスはネットに繋がり、リアルタイムに顧客の一人ひとりの嗜好に合わせたサービスを提供しなければならないということ。

例えば、それらの実行に向けて、協業、参加型の企業体を構成して行かなくてはならないということ。例えば、オムニチャネル化が進行する中で、顧客に対してシームレスな購買体験を提供していかなくてはならないことなどです。これらに対応することは、新しい時代に合ったサービス開発をしていく上で、前提条件となります。

ここまで、トヨタ自動車の次世代事業ビジョンを参考にしながら、既存企業が自社の事業自体をどの様なベクトルに調整していかなくてはならないのかを確認してきました。これから中長期的に企業の事業のあり方が変わっていくということを前提としたときに、マーケティングやブランド戦略の役割も変更が求められるかもしれません。

次回コラムから3回に渡り、IoT・ビッグデータ・AIによる産業構造の変化について考えてみたいと思います。

室井淳司
Archicept city 代表/クリエイティブ・ディレクター/一級建築士

新規事業・サービス開発、ブランド戦略、空間開発などにおいて、企業のトップや事業責任者とクリエイティブ・ディレクターとして並走する。表参道布団店共同創業経営者。広告・マーケティング界に「体験デザイン」を提唱。著書『体験デザインブランディング〜コトの時代の、モノの価値の作り方〜』を宣伝会議より上梓。2013年Archicept city設立。博報堂史上初めて広告制作職域外からクリエイティブ・ディレクターに当時現職最年少で就任。東京理科大学建築学科卒。これまでの主なクライアントは、トヨタ自動車、アウディ、日産自動車、キリンビール、トリドール、ソニーなど。主な受賞はレッドドット・デザイン賞ベスト・オブ・ザ・ベスト、アドフェストグランプリ、グッドデザイン賞、カンヌライオンズ他国内外多数。

 

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