コラム

関西で戦う。クリエイターの流儀

京都で起こす肩書き革命。ソーシャルデザインの第一人者は、今何を考える?

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【前回コラム】「大阪にいるカウボーイは、働き方で新たな地平を目指す」はこちら

関西でかたちラボという屋号でコピーライターをしている田中です。フリーランスとなって早6年。独立して最初に行ったのは屋号を決めたことでした。肩書きはコピーライター。こちらは12,3年変わらずのままで。自分を何と名乗るのか。

フリーランスの活躍がさらに加速する時代において、そのことはもっと重要になるでしょう。仕事だけではなく、SNSのアカウント1つとっても「肩書き」の付け方は大切かもしれません。今回は、肩書きを自由につけることで今の時代を楽しむことを提唱した「肩書きの革命児」のお話です。

兼松佳宏さんの場合

「関西で戦う。クリエイターの流儀」第10回目に登場していただくのは、兼松佳宏さん。greenz.jp編集長を経て、現在は自身の肩書きを「勉強家」としています。兼松さんは、「BEの肩書き」という考え方を提唱し、ワークショップを展開しています。

これは自分にジャストフィットする肩書きを自分以外の人と一緒に見つけるというもの。今の時代、自分に合う肩書きをつけるのはとても有意義だと思います。今回は、兼松さんのこれまでと現在について、そして兼松さんの活動の1つである「BEの肩書き」についてお聞きしました。

兼松佳宏

1979年秋田生まれの勉強家。ソーシャルデザインのためのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わり、2010年から2015年まで編集長。その後京都へ移住し、京都精華大学人文学部 特任講師に。自分のあり方を楽しく考える「BEの肩書き」をはじめ、マイスタディに没頭し仲間と共有していく「スタディホール」などさまざまなワークショップ開発や概念を提唱。現在、「web春秋 はるとあき」にて「空海とソーシャルデザイン」を連載。

 

greenz.jp編集長を経て、勉強家の兼松佳宏として今、何をしている?

勉強家の兼松佳宏さん

「greenz.jpの兼松さん」から「勉強家の兼松さん」へ。昔から兼松さんを知る方にとっては、その肩書きを聞いてもしかすると翻訳が必要なのかもしれないし、逆に「ま、そりゃそうだよね」と合点がいくのかもしれません。

少なくとも「greenz.jpの人」という認識をしていた田中は取材するまで正直よく分かっていませんでした。なのでまずは、現在の兼松さんの活動についてお聞きしました。

—京都はいつ来られたのですか?

兼松:2016年から京都精華大学に赴任することが決まったので、その一年前の2015年に引っ越してきました。今は京都精華大学で特任講師としていくつか授業を担当しつつ、個人ワークとして「BEの肩書き」や「スタディホール」のような、ソーシャルデザインのための新たな手法をデザインしています。

それの元ネタになっているのが実は僕が大好きな弘法大師・空海で、いまは『空海とソーシャルデザイン』というタイトルで書籍化に向けてウェブ上で連載をしています。今は、ワークショップを考えたり、そのことを言葉にするのが一番楽しいですね!

—取材前に兼松さんの第一印象として「“きれいな”みうらじゅん」ってお伝えしたのですが、それは自分で概念を構築して提唱しているからで。greenz.jpの編集長時代と今では何か違いはありますか?

兼松:やっといま自分らしい仕事ができているなあと実感していますね。これまで、大学出てすぐは「デザイナー」、greenz.jp時代は「編集長」、今は「大学教員」という「DOの肩書き」を名乗ってきましたが、それが自分らしかったかというと微妙なんです。今思うと、「無理しているかも?」って思うことの方が多くて、でも、新しいことに挑戦して、それなりに何とかしてきた、というのは勉強家ならではなのかもしれません。

—ちなみに greenz.jp時代って、どんな感じで仕事をしていたのですか?

兼松:最初はコアメンバーではなく、ウェブデザイナーとして関わっていました。その後、編集にも口を出すようになり、編集未経験で編集長になったんです。そんなこともあって、僕はスター編集長というよりも、グリーンズで記事を書いてくれているライターさんひとりひとりが既にユニークなのだから、ユニークなメディアを目指すなら、とにかくライターさんとたくさんコミュニケーションを取ろう、という方針にしました。

例えば、半年に1回は約100人いたライターさん1人ひとりと、30分と短くはあるのですが、深い話をする時間を設けました。「今、悩んでいることは何ですか?」「今、やりたいことは何ですか?」「グリーンズとしてどんな貢献ができますか」などを聞くのですが、それだけで2、3ヶ月は時間を使っていましたね。

—・・・すごいパワーですね。自分の時間ってあったんですか?

兼松:当時は話を聞くことが自分の時間だったんだと思います。気づきもたくさんあったし、新しいグリーンズをつくるためのヒントをたくさんいただいたので。
例えば、今では5,000字前後の長いウェブ記事は珍しくなくなりましたが、グリーンズはその先駆けでもあって、でも、それもあるライターさんが「思いをすべて伝えるには5,000字が必要なんです」って提案してくれて、「やりましょう!」となったのがきっかけなんですよね。とにかく時間や愛をライターさんに注いでいたんですが、その後、子どもが生まれたことで生活スタイルが変わり、編集長を卒業することになりました。

—「BEの肩書き」をやろうと思ったきっかけというのはあるのですか?

兼松:greenz.jp編集長を卒業してフリーランスとなったときに、初めて「勉強家」という肩書きを前面に押し出してみたんです。そうしたら周りの方が面白がってくれて、何が興味をそそるんだろう?と考えてみたときに、DOとBEの違いがあるんだなと気付いて。

そこでいろんな人たちにその話をしていたら、「TOKYO WORK DESIGN WEEK」の横石さんが「偉大な言葉の発明」といってくれたり、「numabooks」の内沼さんが「肩書き界の革命!」と表現してくれたり、思いのほか引きがよかったんですよね。そこで言葉を言いっぱなしにするのではなく、誰でも見つけられるようなワークショップを考えてみようと、この1年で50回以上実験を重ねてきました。

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