【前回コラム】「兵庫県・小野市の伝統産業と世界をつなげるデザインスタジオ」はこちら
関西でかたちラボという屋号でコピーライターをしている田中です。僕もその端くれですが、クリエイターの働き方は本当にさまざま。
特にフリーランスともなると、自分のやり方やライフスタイルに合わせて時間をマネジメントする必要があります。言わば、やるもやらないも自分次第。それは会社員も同じかもしれませんが、やらなければお金が1円も入ってきません。
今回は、会社員でもフリーランスでもなく、自分のやりたいことを突き詰めて、新たな地平を切り開いているコピーライターの先輩からお話を聞きました。
スナワチ・前田将多さんの場合
「関西で戦う。クリエイターの流儀」第9回目に登場していただくのは、「スナワチ」の前田将多さん。レザーストア「スナワチ」を営み、同時にカウボーイという顔も持っています。自分のやりたいことをとことん追求する日々を送っているのですが、もともと会社員でコピーライターをしていた頃の働き方に疑問を抱いていました。代理店のコピーライターと言えば、今でも花形の職業だと思います。なぜ、彼は新たな働き方を実践する方を選んだのでしょうか?
前田将多(スナワチ)
2001年株式会社電通に入社。関西支社で勤務し、2015年退社後はカナダでカウボーイとして働く。その後、日本に戻り大阪・本町にてレザーストア「スナワチ(http://sunawachi.com/)」を展開。著書として、『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』(毎日新聞出版)、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』(旅と思索社)を上梓。
電通の前田から、個人の前田へ。人生の本番が始まったきっかけとは。
もともと東京出身の前田さんは電通に就職し、関西支社へ配属。数年後クリエーティブ局へと移り、入社当時なりたかったコピーライターに。それから10年以上、広告の第一線で活躍することになるのですが、退社する数年前からある想いを抱くようになりました。
それは、「今の仕事は、自分にとって本番なのか?」ということ。広告やそのアイデアは“人様”の商品やビジネスを多くの方々へ魅力的に届けるためにあるのですが、最終的に“人様”のものなので売れても売れなくても関係ない、つまり勝っても負けてもいいみたいな練習試合をしているような感覚だったと前田さんは当時を振り返ります。
そして、意を決して2015年の夏に退社し、カウボーイ修行、「スナワチ」の立ち上げへ。自分の人生の本番をスタートさせるのですが、会社員から今のような働き方に変えて実際どうなのでしょうか?
—広告の第一線で活躍されて、現在広告クリエイティブとは全く違う仕事をしているのですが、いかがでしょうか?
前田:辞めた時は年収10分の1になりましたがストレスは100分の1以下。会社を辞めてだいたい3年くらい経ちますが、怒らなくなりましたね。全然腹が立たない。あとよく眠れるようになりました。
—ストレスやプレッシャーの日々だったんですかね。とはいえ、やりがいある案件も多かったと思うのですが、会社を辞めようと思ったきっかけというのはありますか?
前田:一番は、自分が一生のうちにやりたいことを1つひとつ実行していく方が大事だと思ったからですね。気づいたら僕は37歳(当時)になっていて、人生半分終わっているぞ、って。昔からカントリーミュージックが好きで、カウボーイの歌がたくさんある。
でも、カウボーイって何をしているのかよく分からないという疑問が長年あったこともあり、実際にカウボーイとして働いて本にしたら面白いよねって周りに言っていました。それは会社を辞めてでもやりたいことでしたね。
—実際、何のあてもないところから行動してカウボーイになって、本も出版されたんですよね!
前田:牧場も出版社も、知らない人に連絡を取って会いに行くことから始まるんです。カウボーイと同時に、今展開している「スナワチ」の構想もありました。イベントで関西に来ている革製品の職人と会ったり、いいと思ったカバンの作者に会いに行ったり。会社を辞める1年くらい前から動いていたのですが、こちらは会社にいながらでもできるかもなって思っていました。
でも、カウボーイは無理。2015年の夏に会社を辞めようと決意したのは、カウボーイをやりたかったから。当時はカウボーイの仕事内容なんて分かっていなかったのですが、夏のイメージがあったので。夏に辞めなかったら、チャンスが1年後になってしまうと思って決断しました。その時、39歳でした。
—確かにカウボーイって冬のイメージは全くないですね。会社を辞めてから、さまざまなことにチャレンジされたと思うのですが変わったことってありましたか?
前田:仲間が増えましたね。会社員時代は「電通の前田さん」。今は個人の「前田」として見てくれて、面白がってくれる人が自ずと近づいて来てくれました。あとは働き方。自分のために、愛する者とモノのために働く。これが大きいですね。
「関西で戦う。クリエイターの流儀」バックナンバー
- 関西で戦う写真家のB面は敏腕プロデューサー!?熱量あるメディアができるまで。(2018/9/05)
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