オタクたちの「狭い」技術と「広い」標準化
伊藤穣一氏によれば、インターネットの歴史を振り返ってみると、国際的な技術標準を作り出そうとする研究開発の一部としてパブリック(公共的)な意義で推進している時期と、その提示された標準をベースとして製品を作り出しビジネス的な拡張をしてきた時期がサンドイッチのように層をなしながら、相互に発展してきていることがわかります。
前者の世界市民主義(コスモポリタニズム)と後者のテクノロジーの普及を推進した市場競争主義は、ジョブズとゲイツの対比がそうだったとおり、一方では「夢のような未来」を描き出し、もう一方では様々な製品が現れては消えるような絶え間ない進化の歴史を生み出しました。
インターネットは、オタクたちが技術的に可能な面白いことからスタートしつつ、彼らの純粋な理想から公共の福祉としての標準化を経て、さらにその標準をもとに、さまざまな営利企業が競争を繰り返すことで、すべての技術的発明が対面する「キャズム」を乗り越えてきたといえます。
それはある意味でインターネットのような進んだテクノロジーは、あたかも相反する欲動を持っているといえるでしょう。それはすなわち一つは理想的につながる公共的な広い世界と、もうひとつは好きな人たちだけで固まりたいという友達だけの狭い世界です。
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