ヒットの理由2:口コミ(ネタバレできないから勧める)
二番目に挙げる理由は、誰もが感じている口コミのパワー。この映画ほどSNSによって広まったものもないでしょう。その「感染経路」を角川アスキー総研の吉川栄治さんにデータをもらって調べました。これは8月にYahoo!で記事としてまとめている(『カメラを止めるな!』の感染経路をTwitter分析で追ってみた)ので、そっちを読んでもらえばいいです。
よくわかったのは、要所要所でインフルエンサー的な人がツイートしていることです。どうやら発信源は水道橋博士で、彼のメルマガで公開前から強烈にプッシュしていました。その影響もあってか、けっこうタレントさんや役者さんが早い段階で見に行ってツイッターでつぶやいてました。それぞれフォロワーが多いのでぐんぐん広まったわけです。AKB48の指原莉乃さんが典型で、フォロワー数222万の彼女が「見に行って欲しい!」とツイートしてるんですから、何万人かが動いたかもしれない。
そのうえ「何も説明しないけど絶対見るべきなんです!」的なことしかみなさん言いません。こんなに中身を教えない口コミもなかったでしょう。普通は、「これこれこんな人物が出てきてこんな物語で感動する!」くらいなことは言うものです。ジャンルも言えません。「じゃあホラーなの?」「んー、ホラー…ではないかな」「じゃあなに、サスペンス」「ハラハラもするけどサスペンスじゃない」「じゃあ何なの?」「いや、とにかく見に行ってよ」そんな会話が見た人とまだ見てない人との間で交わされたわけです。それでどうして見に行きたくなるんでしょう。つまり内容じゃなくて、非常に強く力を込めて「いやとにかく見て欲しいの!」という、そこまで言うならじゃあ見てみるか。そんな曖昧な感じで見に行ってしまう。口コミって面白いですね。
なぜ「見て欲しい!」と思うのか。話したいからですね。早く見てもらって、あそこがこう面白かったとか、あそこは実は後でこうだったねとか、そんな話をしたいわけです。見終わった後、話したい、というのもこの映画の大きな魅力だと思います。
中には、「みんなが見ろ見ろと言うから絶対に見ないぞ!」とムキになる人もいました。でもそういう人ほど本当は見たいんでしょうね。結局見に行ってしまい、そうしたら豹変して「何も言わないからとにかく見て!」と逆に強く勧める。ミイラ取りがミイラ、というやつです。そういう、感染力がこの映画のヒットの原動力でした。
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