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「販促とブランドづくり」 — イトーヨーカドー富永氏、元レクサス高田氏対談

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「第11回販促会議企画コンペティション(販促コンペ)」(主催=宣伝会議)は2018年11月30日、「販売促進とブランドづくり」をテーマとしたセミナーを開催した。登壇したのは、ドミノピザ、ソラーレホテルズ&リゾーツ、西友でチーフマーケターを歴任し、現在はイトーヨーカドーの富永朋信氏と、トヨタ自動車の高級車「レクサス」のブランディングを主導した高田敦史氏。それぞれ講演を行ったが、ここでは第3部から両氏のやりとりを抜粋、再構成して紹介する。

左)高田 敦史 氏、右)富永 朋信 氏

小売とメーカー、広告会社の不健康な関係

富永:小売~メーカー間、メーカー~広告代理店間のコミュニケーションに齟齬が発生するのは、問題の構造としては同じです。提案側の忖度と独善的な思考、そして提案を受ける側に、企画提案・実施プロセス全体にかかる複眼的な視点がないことが原因。

たとえば小売業としての立場でメーカーから提案を受けると、「当社の調査による、カスタマーセグメンテーション(顧客分類)では……」というのをしばしば聞きます。「……ですから、このセグメントに向いた商品はこちらとなります。ぜひ棚をおつくりいただきたい」と来る。そうしたセグメントは、各メーカーが個別に定めたものであって、多様な商品を置く小売業にとってはあまり役に立ちません。

一方の小売側も、多くのメーカーから話を聞いて総合できればよいが、仮に4社から提案を受けたなら、それぞれの提案を足して4で割るようなことを平気でします。万事そういった感じですから、小売とメーカーの協業というのは非常に困難なわけです。

高田:メーカーと広告代理店の間でも同じだと。

富永:構造としては同じなわけですよね。提案を受ける広告主企業からすれば、代理店というのは無責任に見える。他方、代理店サイドは本心では広告主のことを下に見ています。彼らとしては、「ろくなオリエンテーションもしないし、つっこんだ質問にも答えてもらえないから、忖度して適当に案を出そう」と考えている。

そうした提案を見て、依頼側は「なんだ、この面白くない企画は。一体何なんだこれは」と心では思っている。こうしたことを互いに腹の内に抱える関係というのは、まったくもって不健康です。

本来は、依頼側の事業についての専門性と、企画提案側のマーケティングの専門性がかけ合わさるのが理想ですが、まるでテニスで両プレイヤーがあさっての方向に球を打ち返していて、ラリーが続いていない。結果、縮小均衡に陥ることがよくあります。

高田:消費者のセグメントはマーケティングにおける基本ですが、どのようにするのがいいですか。

富永:商品開発時など、つまり、社内で用いる分にはいいと思います。それを売る側に押し付けるから話がおかしくなる。自社の商品を基軸にして消費者を分類しても、それはその企業の中でしか通じないですよね。

高田:それはそうですね。では、小売とのやり取りではどうするのが理想ですか。

富永:「貴社ではどのようにカスタマーを見ておられますか。貴社のセグメントがあれば、そちらを教えてください。それに合わせて、改めて調査をするか、既存の調査を元に分類し直してもってきます」ということになります。

ただ、実のところ小売にいると、人を分類するのはさほど意味がないように思います。スーパーマーケットは基本的には誰でも来る、何でも買うという場所です。そこでターゲットを決めると、どうしても平均的な人物像になる傾向にあり、どの企業がやっても紋切り型になりがちだと感じます。

高田:なるほど。富永さんはどのように顧客を見ていますか。

富永:人をターゲットにするのではなく、「意図」をターゲットにするのが正着だと考えています。スーパーマーケットの来店意図は20種類あると言われています。「Grab and Go」などが一例です。こうした「意図」をベースにした分類はマーチャンダイジングに生かせますし、よほど顧客フォーカスというか、現場に向いたことができると考えています。

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