コラム

「シェアしたがる心理」のこれからを考える

TikTokはなぜ流行った? 3つの理由とテレビカルチャーとの連携の可能性

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「使ってもらえる広告」の次のかたち

このようなTikTokトレンドは広告業界にも広く浸透していますが、ある日、電通でCMプランナー/コピーライターを務める明円卓さんと話していてそれについての面白いことを教えてもらいました。

明円さん曰く、最近ではTikTokの中でテレビ由来のネタを模倣して遊ぶというシーンが増えているのだそう。そこにはテレビドラマやテレビ広告のシーンも含まれていて、特徴的な仕草ややりとりをユーザーが再現してTikTokにシェアするのだとか。

その話を聞いていて、これはまさに「使ってもらえる広告」のアップデート版だと思いました! ユーザーが楽しくコミュニケーションする、その空間の中にブランドやパブリッシャーが同居しているというかたちの最新形。今後は、「TikTokで見たことあるやつの元ネタCMだ!」「元ネタ番組だ!」という認知動線も増えていくのかもしれません。

これはネット動画がバイラルする仕組みとも近い――すなわち、SNSでシェアされる動画の多くは、その尺の一部が切り取られてシェアされて広がり、そして母体(元の完尺コンテンツ)に還流してくる――そんな構図との相似性が見て取れます。

広告と思わずに広告っぽく広げてくれるコミュニケーションのかたち。TikTokにその進化系が見られるとしたならば、例えば通信業界のようにCM認知やそれを通じたブランド資産があるプレイヤーは、このような「使ってもらえる広告」を有効に活用できるでしょう。その意味でも、今後ますます統合的なコミュニケーションが重要になっていくという兆しを感じます。

新しいシミュラークルへ

TikTokの最大のメディア論的な面白さは、「短尺」でも「音が付く」ところでもなく、ユーザーがガイダンスに沿って動いてしまう点にある――そのように仮説立てています。これは、アーキテクチャによって生み出される新しい映像体験の質をもたらしているのだと考えています。

例えば、哲学者のドゥルーズは1980年代に『シネマ 1*運動イメージ』『シネマ2*時間イメージ』という大著を発表しましたが、それはシネマという映像の表現形態への驚きに駆動されてのものでした。単に映像を撮って記録することと、シネマとの間の意味論的な差異に彼は注目していたのです。

僕にとって、いまTikTokで展開されている動画群は、(大げさに言えば)そこで論じられているシネマ的なインパクトを持つものではないかとさえ感じています。音楽に合わせて、そこに乗った指示に沿うことで、ユーザーのアクションが動画としてアウトプットされる。そして、それがハッシュタグなどのかたちで、皆がサンプリングする人気曲というかたちで、模倣的な動画を広げていくのです。

そのような情報環境を生み出すアーキテクチャ全体が、TikTokの興味深い点であり、ここに僕が『シェア心』で一章を丸ごと割いて論じたキーワード「シミュラークル」の性質を重ねてしまうところに他なりません。

ロジェ・カイヨワが述べたように、「模倣」は人々の遊びを構成する要素の主要なひとつです。

言わずもがなですが、私たちはTikTokで「遊んでいる」わけです。これはいわゆる「大人のロジック」――ビジネス的な目的手段思考とは異なる原理であり、TikTokという場(および若者が好むメディア一般)を理解するために無視してはならない重要な面だと私自身は強く感じているのです(もちろん、このような場でブランドやパブリッシャーと生活者がよりよい絆を結ぶためのコミュニケーションは両立しますし、それを企図することの重要性は論を俟ちません)。

もう2018年も残すところあとわずか。SNS、あるいはソーシャルメディアを通じたコミュニケーションの領域は、一年のあいだにあっという間に移り変わるものです。しかし、そこには変わらない原理や構造もあります。

目の前の現象に引っ張られるのではなく、そのようなものを見透かすように思考すること。そしてSNS上のユーザーのシェア行動から、そこに映し出された私たちの生きる社会のありようまでスコープを広げて考えること。『シェア心』は、そのようなものをつくりたいという想いを込めて、データやアイデアを詰め込んだ一冊なのでした。

未読の方は、ぜひこの機会にご一読いただければ、筆者として嬉しく思います(きっとここまで読んでいただいた時点で、同じ関心を共有しているでしょうから)。

これまでお付き合いありがとうございました。またどこかで会いましょう!

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